物忘れ・認知症54

腸内フローラとは、腸内細菌の生態系のことです。

 最近、腸内細菌が美容と健康を左右しているし、生活習慣病や感染症など、人がかかるほとんどの病気の予防に有効、上手に応用すれば薬も効かない難病の治療にも有効ということがわかりはじめ、現代医学でも熱い注目を浴びています。
 がん、糖尿病、肥満、アレルギー、認知症をはじめ、三十以上の病気が腸内フローラと関わっているとされる他、太りすぎや顔のシワなどの美容面でも、また性格や感情、鬱病など精神医学の分野の病気でも、腸内細菌の生態系が深く関与していると、医学の最先端の研究で明らかになりつつあります。
 腸内フローラが好ましくなると、排便の様子が、@黄色みを帯びている。黒くなってない。A好ましい香りがする、悪臭がない。B水洗トイレで浮くということが観察されます。今月は皆様の腸内細菌の生態系を好ましいタイプにする方法を特集してみました。

我々の食べ物は 腸内細菌のエサ

 一昔前は百種類百兆個といわれていた腸内細菌は、最近では千種類千兆個も生きて腸内に棲み着いているといわれるようになりました。
 体の細胞総数が60兆個ないし百兆個といわれるので、その10倍もの腸内細菌が棲み着いていることになりますが、これらも生き物ですからエサが必要で、私たちが食べたものが口から胃袋を経由して腸内にたどり着くと、腸内細菌群はそれに取り付いて分解にかかります。消化です。そして分解産物を腸内細菌が生きていくための栄養源としています。
 我々の食事は食べた人の食糧になるだけでなく、食べた人の腸内に棲み着いている腸内フローラとシェアしているのです。食べたものの消化は、胃腸から我々が分泌する消化酵素が働いて分解消化作業をするだけでなく、腸内細菌群は食べ物に取り付いて分解にかかっています。その数がすごいのです。
 そして腸内フローラは、エサを食べながら、様々な物質やガスを盛んに分泌し、それが腸をはじめとして人間の全身に大きく影響するのです。
 腸に分布する神経は、脳に次いで発達しており、腸内フローラが出す神経刺激物質で大きく影響されており、これが脳神経にも敏感に伝達される仕組みになっているのです。脳の働きは腸の働きに大きく影響されています。
 もの覚えが悪いと嘆いていた人が、便秘を解決したら冴えた脳の持ち主になって記憶力が強くなったという程度の話は昔からありました。
 何かを思いついてやる気になったら、たちまち便意を催したという話もよくあります。大きな書店は、店内にトイレを持つというのも脳が腸にダイレクトに影響を及ぼすということが知られているからです。
 腸と脳とは、双方向で強く影響し合っています。その腸に棲み着く腸内フローラは、老化にともなう認知症予防の決め手の一つでもあります。

ダイエットにも貢献

 例えばバクテロイデスという腸内細菌は短鎖脂肪酸を盛んに分泌し、それが宿主の肥満を防いでくれるので、ダイエットをしたい人にはとても役に立ってくれます。
 この短鎖脂肪酸は血中の脂質が脂肪細胞に取り込まれるのを邪魔立てし、太るのを防ぐだけでなく、短鎖脂肪酸が筋肉細胞などに取り込まれると、その細胞内の脂肪を燃焼させ、蓄積してある脂肪を減らしてくれ、やせさせてくれるのです。
 このように働いてくれるのを数え上げていくと、ダイエットになるので肥満予防、薄毛予防、老化予防、糖尿病予防、アレルギー予防、貧血予防、血栓予防と、並べてみるとすごいということになるのです。

糖尿病の予防

 逆に短鎖脂肪酸の量が減ると、インスリンの量も減るので糖尿病になりやすいといわれます。だから短鎖脂肪酸を分泌する腸内細菌を増やせば、インスリンが増え、食後の血糖値がスムーズに減ることは医学的研究で実験されていますので、腸内細菌を増やす働きをする食物繊維の摂取量を増やせば糖尿病予防の有効な対策になるわけです。

ガンの予防

 人のガンを引き起こす腸内細菌も日本のがん研究所で見つかりました。人の細胞に作用してガンを作るDCAという物質を分泌する腸内細菌が見つかり、がん研究所のある地名をとってアリアケ菌と命名されました。DCAが腸内で分泌されると、全身の細胞の老化を促進させ、老化した細胞が、ガン化を促進するのです。
 このアリアケ菌は肥満になると腸内で増えるので、肥満はガンのリスクを増やします。以前から肥満の人にガンが多いということは経験的に知られていましたが、腸内細菌の困った働きを考えると、肥満とガンの関係が理論的に説明できるわけです。
 腸内細菌のコントロールに成功すると、肥満もガンも予防することが可能になるわけです。肥満は何故ガンを誘発するのか? ということが腸内フローラで学問的根拠をもって説明できるのです。

原因不明の難病も 腸内フローラで謎が 解ける可能性がある

 女性ホルモンに形が似ているエクオールという成分を分泌する腸内細菌が、肌のシワを減らすコラーゲンを増やすことも最近わかりました。エクオールは更年期障害を防ぐ成分でもあるので、顔のほてりや骨粗鬆症を防ぐ効果も認められています。

腸内フローラは美容 と健康に欠かせない

 ここまでわかってくると、現代医学でも、腸内フローラは私たちの体の一部、臓器の一つと言って良いほどの重要な存在ということになってきました。
 様々な働きを期待すると、腸内細菌の数と種類は多いほど有利ということになります。特定の菌が圧倒的に数を増やすより、様々な菌がバラエティーに富んで数を増やすことが美容と健康に大事ということになります。
 そして有用菌を増やすには、食物繊維を十分に摂ることが役に立ちます。食物繊維こそが有用菌のエサになるからです。食物繊維は日本人は摂り方が少ない栄養素といわれますので気をつけたいものです。

美魔女の秘密

 食物繊維の摂り方が少ないと、腸内細菌のパワーが落ちてきます。ゴボウ、タマネギ、アスパラガスなどの野菜や、大豆や納豆などの豆類は食物繊維が多いことで知られています。
 女性ホルモンに構造・働きが似ているエクオールも、大豆・納豆が元になりエクオールを産生するタイプの腸内細菌が取り付いて分解されると腸内で増えるのです。
 美魔女も偶然そうなれるのではなく、大豆・納豆などを毎日十分に摂り、腸内フローラが理想的でエクオールを沢山作れる人が、快食快便にもなり必然的に美魔女になっていくということだそうです。
 もって生まれた遺伝子のお陰というよりは、やはり食生活改善の努力の賜が美魔女をつくるのですね。