物忘れ・認知症49

 この本(『ボケない生き方』)が説く「瞑想」は、主に刺激を遮断し腹式呼吸を行うことで、脳をリセットする作業です。周囲に振り回されて脳がそれに反応しているだけの状態から、脳の中の司令塔である自我からスタートして、周囲の刺激に対して適切な部位の脳が使えるようになる状態をいいます。
 瞑想を習慣化して、自我の脳が大きくなってくると、自分の脳を使うことが喜びになり、動物脳を自然とコントロールできるようになった、穏やかで充実した人生が開けてきたそうです。
 瞑想習慣を持って数年経った今、篠浦先生は、以前に比べ判断力がついたと思えるようになり、脳を使うことが喜びになってこられたそうです。
 瞑想を勧めた相手の脳の病気も良くなってきたケースが多いそうです。例えばうつ病、自律神経失調症、不眠症、不安神経症、更年期症状、依存症(アルコール・買い物・甘いもの・占い)、パニック症候群、対人恐怖、認知症などがあるそうです。
 人間脳が動物脳をうまくコントロールできるようになるのに瞑想が良いということですが、以下のことはこの本には書いてありませんが、左右二本の指先で目の玉を軽く押さえたら、次にその位置を5センチほど上にずらしたポイント(眉毛上方)を二本の指先で軽く押さえていると、数分後その位置で拍動を感じられるようになります。これも瞑想習慣同様の効果を感じる方が多いと思われますので、興味をもたれたら試してみてください。

適度の負荷のある運動

 やや負荷を感じる程度の運動を続けていると認知症の予防に効果があることは世界的に知られてきました。日本の長寿研究所が勧めている計算しながら運動するとか、しりとりをしながら運動するなどのダブルタスク歩行なども認知症を防ぐのに役に立ちます。篠浦先生はご自分の経験からも、これにはまずストレッチで体をしなやかにすることを基本とすることを勧めておられます。
 これに関連して体幹チューニングと足裏マッサージが自律神経のバランスを良くし、ストレスに強い脳をつくるのに役立つようだと篠浦先生は説いておられます。詳しくは是非冒頭に紹介した本を手に入れてご愛読ください。

低線量ホルミシス効果

 放射線はどんな量でも浴びると体に悪いと思っている人が多いと思いますが、低線量の放射線を浴びると、体内では活性酸素を掃除してくれる抗酸化酵素が増加することが次第にわかってきました。
 低線量の放射線を浴びると、待機している遺伝子に「これは大変だ」という刺激を与え、細胞が目覚め、ストレスのもとになる活性酸素の消去に一生懸命働き出します。このような働きをホルミシス効果といいますが、低線量の放射線を脳が浴びるとこのメカニズムが作用して認知症にも良い結果がもたらせることが期待できるのです。
 脳に低線量放射線を浴びるというストレスが加わると、人間はそれを乗り越えようと必死になり、ストレスがないときに比べて、より、脳がレベルアップしていくのです。
 これは低線量放射線によるストレスだけに限ることはなく、認知症などで脳の機能を落とす人は、脳のもつホルミシス効果を若い頃から開拓してこなかったことが影響していると見られます。動物脳はホルミシス効果を阻害する脳です。
 ストレスは決して人間にとってマイナスではなく、それに人間脳の力でどのように対処していくかのみが問題なのです。

心を磨く

 「志」が認知症を予防します。志を持つことが、死ぬまで脳機能を向上させるのに役立つことは、過去の偉大な日本人を見るとよくわかります。志をもつことは、自我を強くしてストレスに打ち勝ち、認知症を予防するのにきわめて有効な方法。外来で認知症の患者さんを診ていて感じるのは、認知症の根っこの原因の一つは、志を持って生きてこなかったことではないかと感じるとのこと。
 物事に興味がわきにくい、気力がない、感じ方が鈍麻した老人は、アルツハイマーになりやすいと思えます。脳機能が改善する動機づけをするには、志が有るかないかが大きく左右します。志は脳全体を動かすエンジンです。

「感謝」

 認知症の大きな原因はストレスなので、ちょっとしたことにでも感謝できる人は自分のストレスを軽減し、認知症になりにくくなるといえます。また、こういう人は長生きもしやすくなるでしょう。
 人間関係を主体に判断や行動をとる右脳タイプの人は感謝の気持ちをもちやすく、論理や真理をもとにして判断や行動をする左脳型タイプの人は、かなりのことがないと感謝の気持ちがわきにくいという傾向があるようです。
 感謝は、ストレスを軽減するという意味で自分のためになり、感謝を受ける喜びを相手にもたらし、社会を良い方向に導く三方良しのプラスの感情であると篠浦先生は感じておられます。

自立心

 認知症になりにくい性格の中心としては、社会の中で役割を果たし、自立していくことがあげられます。そのためには、他人や物事に誠実であること、すぐに感情をあらわにすることなく温厚篤実であること、困難から逃げないこと、人と接することを楽しみにする外交性などの性格が大きな助けとなります。これらの性格は、社会の中で多少のストレスがあっても、それに耐えて自立するためのものです。そして動物脳をコントロールするので、ストレスに強くなり、認知症を予防するのに役立ちます。
 篠浦先生のご本は、認知症にならない生き方をするためのヒントがまだまだ詳しく書かれている名著です。この紹介記事をガイドに、まだ深刻にボケていない方はどうぞこの本を本屋さんで求めてご愛読ください。