物忘れ・認知症44

 NHKはさすがNHK!という素晴らしい番組をたまに放映してくれます。今年の出色は「病の起源」です。九月に放映されたその第四回の「心臓病」の回では、肉食が増えると何故心臓病になるかがとてもわかりやすく解明されていました。血管にコレステロールが溜まって動脈硬化になるのは、牛肉や豚肉に多いGc(N─グリコリルノイラミン酸=タンパク質が付いた糖鎖の一種)が血管に入り込んで血管壁で免疫反応を誘発し、血管内膜が炎症を起こすと血管壁が壊れて、そこからコレステロールが血管内に溜まるからだというのです。これは、
よく考えてみると心臓病だけでなく、高血圧・脳卒中や認知症、ガンの原因でもあるのです。
 この番組を見た人は肉食の怖さを知り、一歩も二歩も引くのが普通人の心理でしょう。しかし金がカタキのこの世では、肉で商売している人から見たらとんでもない番組に見えたかも知れません。NHKは肉食関連業者モンスターなどから大変な、いちゃもんをつけられねじ込まれたのではないでしょうか? 日本に食肉動物の餌を大量に輸出している某国大使館からもやんわりと、しかし、強烈な圧力があったのかも知れません。
 それからのNHKはまるでご主人様に恭順の意を表するように「クローズアップ現代」はじめ様々な番組を動員して「肉食礼賛」をやるようになってしまいました。その姿は、スノーデンが暴露したような日本国の情報操作に血道をあげている某国の虎の尾を踏んだ番組だったなと感じさせます。これではこれからも心臓病も脳卒中も認知症もガンも日本はとどまることなく増え続けてしまうのではと、本当に心配です。
 そこで、『頑張れニッポン』の心で、今回は「病の起源・心臓病編」の誌上再現にチャレンジしてみます。

NHK特集の論旨

 古代エジプトのミイラ。ミイラには心臓が残されています。五千年ほど前の王女のミイラの心臓をCTスキャンで見たら致命的な動脈硬化が見つかりました。このころには人間はもう心臓病に苦しんでいたのでした。しかし、人間と共通祖先を持つゴリラは、血中コレステロールはヒトの1・5倍あるのに動脈硬化も心臓病もない動物です。人間はいつから心臓病になるようになったのか? ゴリラと人間の違いの一つは四足歩行か二足歩行かですが、二足歩行で立ち上がると血液の三分の二は臍から下にいき、心臓に戻る血は少ない。戻そうとすれば心
臓の負担も増える。ましてや、心臓より高い位置にある脳部に血液を潤沢に流そうとすれば心臓の負担は並々ならぬものがある。
 人間も哺乳動物の一員ですが、人間以外の哺乳動物の体にはGc(N─グリコリルノイラミン酸)だらけ。人間も約270万年以前の骨から見つかる遺伝子にはGcを作る遺伝子が含まれていたのでGcまみれであったが、それ以降は、何故かGcを作る部分の遺伝子が欠落するようになったのでGcはかけらさえ見つからない体になったのです。
 ところが、人間の脳はこのころから急激に大きくなり始め、頭蓋骨も三倍にもなって現代人並みの風貌にもなってきた。脳は細胞の数よりも、その働きの善し悪しは、脳細胞同士をつなぐシナプスの数で決まります。Gcが出来なくなったら、脳のシナプスが増え、頭が良くなり、脳細胞自身も三倍増になったのです。つまり頭が飛躍的に良くなったのです。
 不安定でひもじい生活を余儀なくされていたヒトは、良くなった頭で食糧大増産にチャレンジしたのです。結果、悲願の食糧確保につながる耕作、牧畜が出来るようになってきました。石器も高性能になり、食糧生産の効率も次第に良くなってきました。年柄年中ひもじい思いをしていた採集経済の時代には皆で協力し合い食べものも平等公平に分け合っていたのが、農耕牧畜経済になると余剰食糧が出て倉庫に積まれるようになり、欲深で強いものが力に応じて分け前を分捕るようになり、次第に富めるもの・貧しいものが固定化されて階級社会が生ま
れるとともに、食べものに不自由しない人々が増え、肉を沢山食べる人が増えてきたのです。牛・豚のような哺乳動物はGcまみれなので、それを食べた人の血液中もかなりのGcが流れますが、今や人間は遺伝子が変異して自分ではGcを作れなくなったので、体内に入り込んだGcは人間の免疫反応の対象となる異物であり、血管内で白血球の活性酸素による攻撃を受けるとき、その流れ弾が血管内皮に炎症を起こさせ、そうなるとコレステロールが傷口から容赦なく血管壁に入り始め、動脈硬化になり、心臓病の引き金を引くとのこと。
 考えてみれば、これは同時に脳卒中や認知症をはじめほとんどの生活習慣病の引き金も引いているわけです。
 これをNHKが特集番組「病の起源」心臓病編でやってくれたのです。これを見た、肉食肯定論者としからざる者の反応は正反対に分かれるはずです。
 NHKは肉食肯定論者からは仮説に過ぎないお話なのに科学的に検証された事実のように報道したとかなんとか、相当な批判や圧力を浴びたはずです。そこで他の番組でバランスをとるために、肉食の決定的マイナス面の印象の広がりムードに、懸命の火消し報道にかかり、肉を食べて元気に長生きしている有名人をあれこれ紹介したり、肉を食べないのは栄養バランスが悪くなって、一種の栄養失調を起こすので元気で長生きが出来ないとかの情報を流しています。しかも、肉食肯定論の紹介にあたっては、病の起源・心臓病編でNHKが報じた肉食に
よる心臓病のリスクには口をぬぐっています。
 そして、肉を食べない人は血中アルブミンが少ないとか、カルニチンがとれないとか、ビタミンB12が不足するとかあれこれ言わせます。しかし、体温が正常であれば、人間は糖質・タンパク質・脂質は栄養として不足しているものは構成分子を相互に入れ替えて化学構造を変えて融通をつけていますから深刻に心配する必要はそもそもないのです。血中アルブミンなどは酒粕をそこそこ食べる工夫をすれば肉は食べなくても血中に十分出てきます。カルニチンやビタミン、またミネラルなどはそのような微量栄養素がまんべんなく入っている総合サプリ
メントを継続してとっている限り、心配する必要がないのです。あれこれ考えることも大事ですが、自然の摂理に従って本来の植食動物としての食性を基本的に守るというのが遺伝子に逆らわないお任せの世界で、自動的にうまくいくようになっているのです。

麦飯・納豆・    ライフライン

 肉食しても元気な人、長生きする人がいたとしても、それは遺伝子のタイプが違う人の話であって、その人も肉をやめて麦飯・納豆・ライフラインにすれば、もっと長生きするのにと思って、オンデマンドか再放送か何かでこのNHKの番組を是非ご覧になって、参考として活用され、心臓病にも認知症にもならない一生をお過ごしください。