物忘れ・認知症39

 認知症になる人の脳細胞は全般的に破壊されていますが、特に被害が大きいのが海馬と前頭葉といわれます。アルツハイマーではリポフスチンと呼ばれるアミロイド蛋白系のシミが目立ちます。細胞の破壊は、脳細胞に限らず、真っ先に、周辺との界面に当たる細胞膜が酸化して壊れていく、内側ではミトコンドリアの電子伝達系で制御能力を超えた活性酸素による酸化障害で壊れていくケースが目立つといわれています。脳は込み入った神経組織の電気の流れを絶縁するため脂肪が多いのですが、深刻な酸化障害を一番受けやすいのも脂肪です。
 細胞の膜もリン脂質を中核としていますから、酸化障害を受けやすいのです。
 日本では欧米先進国と比べあまりやかましくいわれていないマーガリンやショートニングの水素添加硬化油(トランス型脂肪酸)は、この脂肪分子が活性酸素の被害を受けて、それ自体がフリーラジカルになりやすく、そうなると被害者が簡単に加害者に転じるので、脳を守るにはなるべく摂取しないのが良いのです。
 パンやケーキの類を作る時、特に街で見かける普通の菓子パン・食パンなどは、マーガリンやショートニングなどが平気で使われています。一回一回は大した量でなくとも、習慣的に食べていると、体内に入ってくる年間総量は認知症を警戒しなければいけない程の量になっている人が結構多いといわれます。また、外食が多い人は必然的に揚げもの、その他で油が多い食事になるので、これも容易に酸化するので、将来の認知症のことを考えると要注意です。
 認知症の進行は、10年20年30年とゆっくり時間をかけて進行することも多いので、年をとってからボケたくない人は、かなり早くから脂肪分の摂り方には注意を重ねる日々を過ごしていかなくてはならないということです。これが早くきてしまう人が、いわゆる若年性認知症ということになりますが、そのスタートは離乳食からで、30年かけて、間違った食生活習慣の果てが30歳代での認知症発症ということになっているのだと思われます。「植物性」とか「軽ーい」とか「安ーい」という言葉にだまされてトランス脂肪酸が多いマーガリン、ショートニ
ングに手を出さないよう、生涯通じる長期間ご用心を重ねていただきたいものです。ポテトフライ・クッキー・スナック菓子・安チョコレートにも含まれることが多く、「加工油脂」「ファットスプレッド」と表示されるものも要警戒です。
 人間の体は新陳代謝の流れはかなりのスピードなので、分子レベルで観察すれば、細胞膜の脂肪分子の入れかわりなどは「どんどん」という形容詞が使えるほどです。まずは油脂全体の摂取量を減らしましょう。

酸化の点火は、 白血球が出す活性酸素。 つけ木は、 体内に入り込む雑菌 (腸内や口腔内由来)と 交感神経の慢性興奮

 均衡を破って細胞膜の酸化障害がドミノのように広がるきっかけをつくるのは何といっても活性酸素です。
 体内で活性酸素が常時生まれているのはミトコンドリア内の電子伝達系ですが、細胞膜の酸化障害は、そこにたどりついた腸・口由来の雑菌退治のため、或いは白血球(顆粒球)が寿命が尽きて崩壊する時、周辺にバラまく多量の活性酸素での酸化障害といわれます。そこで腸内・口中の冷え・有毒ガス発生と交感神経の慢性興奮を避ける生活上の注意が必要になるのです。
 きついストレス下での生活を続けていると、慢性的に交感神経が過剰に興奮するようになり、血流は悪くなり体温も下がるようになることが知られています。交感神経と副交感神経のことを自律神経といいますが、これは白血球をコントロールしていて、交感神経が興奮するとバイキン対策の顆粒球という白血球が増加し、2〜3日後にこの寿命が尽きて崩壊する時、活性酸素を多量にバラまくので、そのとばっちりで細胞膜が酸化して壊れたり、過酸化脂質化してフリーラジカルになると細胞膜の崩れはどんどん広がります。細胞内部へも飛び火すれば
ミトコンドリアもやられ、
核もやられれば中に格納されている遺伝子も傷つき、発がんへの道も開いていきます。脳細胞でこういう事態になればボケ・認知症の入り口です。

抗酸化酵素の出番と 水素の援軍

 細胞の酸化障害は燃え広がれば炎症ということになります。これを鎮めるのは各種抗酸化栄養素の分子やそれらを補酵素とする抗酸化酵素の働きです。古典的に知られているのがビタミンA・C・E・βカロテンなどのビタミン類ですが、セレニウム・亜鉛・銅・鉄などのミネラル類も微量ならばその働きをします。コエンザイムQ10などもこの仲間です。これらは分子からの電子の供与で活性酸素を大人しくさせるのですが、相手を還元して電子を失ったあとは、それ自身が周辺から電子を奪い取る酸化物になる心配もあります。また、分子自身の大き
さが大きすぎて細胞内には容易に入れない、入りにくいということも考えると消火隊としては万全とはいえない面もあるわけです。
 そこで最近注目を浴びているのが水素。水素ガスも水素イオンも奪電子を狙うフリーラジカルや活性酸素に電子を供与して、炎症を鎮める能力があるだけでなく、脳の奥まで出入り自由なほど小さいので酸化でできたアミロイド蛋白のシミも還元して消去させる能力もあると評価されています。紫外線でできてしまった顔のシミなども次第に薄れて消えていくと喜んでいる人もいます。また、脳梗塞で認知症というケースでも、還元能力のある栄養分子は、血流が止まれば流れていかなくとも水素はスイスイと透過して酸化障害をほどいていく能力を持つ
といわれます。ここでは小さいことは、法外に素晴らしいことなのですね。
 この水素の良いところで自分を利そうと思ったらいろいろ方法はあります。昔からある還元水にも含まれます。但し、冷たいまま飲んだら腸を冷やすので問題です。宇宙で一番温まりにくく冷めにくいのが水ということを忘れず、お湯で割ったりして40℃で飲むことをお忘れなく。水素を吸臓して体内で長時間放出できる健康食品というのもありますし、特殊な還元能力を持つボトルにお茶を入れたり、乳酸分子と水を入れたりして数時間待つとORPメーターで計ると還元電位がマイナス五百とか千二百とか、素晴らしい還元力を持つドリンクがつくれ
るものもあります。
 これらを生活に取り入れると、抗酸化酵素が繰り返しその能力を発揮するようになるので、抗酸化ビタミンやミネラルが高効率でその能力を発揮できるので一石二鳥どころか一石億兆という結果になり、認知症も予防のみならず回復に歩み出すことも決して不可能ではない展望が開けると思われます。