物忘れ・認知症33

 先月号では、認知症とは認知力の低下で起こるもので、1.その場がわかる。2.その場と「自分との関係」がわかる。3.どうすればいいのかがわかる。この三つの要素が適切なら、それは単なる「もの忘れ」で認知症ではない。
 「もの忘れ」の性質が変わり「認知症」とされるのは、明らかにその場の状況にマッチしない行動まで起こってくるときです。「ここはどこだ?」から「あ、そうだ」と意識が戻ってきたら「正常なボケ・もの忘れ」。「なんだ、ここは!?」とわけがわからなくなって、混乱して粗暴にふるまうようなことになると「異常なボケ・認知症」。なぜ異常かというと、行動がその状況にマッチしていないから──という竹内孝仁先生のご高説を詳しく紹介させていただきました。
 そして竹内先生のご経験だと「水」「運動」「栄養のある食事」「便秘解消」で認知症の三分の二は治る、ということもご紹介しました。
 この認知症の知見に関心のある方は、是非ポプラ社刊の『田原総一朗が真実に迫る 認知症は水で治る!』(著者は田原総一朗/竹内孝仁)をお読みください。

認知症は 医療機関では 治せない!

 介護で手を焼いたりして、この人、認知症じゃないかしらんと思えると、多くの人が医療機関に連れ込んで、その判定を求めたり、治療の道を探ったりしたくなります。
 しかし、普通の医療機関では、まだ認知症が治る薬というのはないのですから、認知機能テストをして、引っかかればその進行を遅らせる効果がある人もあるという薬の処方をしてくれる位なので、その人の認知症はその投薬治療ではまず治りません。スピードの差はあるとしてもだんだん程度がひどくなり、周りの人は困惑の度を増していくことになるのが殆どではないでしょうか?
 しかし、ご本人の混乱は、まず水分の不足から来る意識障害と見て、程よく温めた水、つまり42度のぬるま湯をその場で少なくとも500ccから、一日量でその三倍は飲んでもらうようにすれば、意識レベルはかなり回復し、困っていた周辺症状はかなり落ち着く見込みがあるというのですから、こんなことは医者の手を煩わせることなく誰でもできるはずです。
 そして、お通じがあって、便秘も解消すると認知症の解決になっていく希望が持てるというのですから、これも基本的には医師の手を煩わす問題ではなく、適切な水分摂取と食生活と運動の改善で解決できる問題です。

思い出せ! 自然食ニュースの 提言と 横田貴史先生の ご見解

 ここで思い出して戴きたいのが、私どもの根本的主張(3頁「食事指針」)と、『自然食ニュース』2012年4月号で取り上げた横田貴史先生のインタビュー記事です。
 横田先生のお説によれば、便秘をしていれば、直腸から酸性腐敗物が侵入してきて風邪から脳卒中まで、認知症を含む殆どの病的トラブルの原因となります。そして、私どもの主張によればヒトはもともと植物食性の動物の一員であり、腸の形態も決して肉食動物のそれではないので、消化酵素も卵焼き・焼き肉など動物性食品の消化は苦手で、美味しくて栄養たっぷりの動物性食品も、人間は雑食の経験を積んできたので全く消化できないわけではないが、食べ過ぎて消化能力を超えてしまった部分は肛門手前の直腸で酸化腐敗し、悪玉菌も飛躍的に増
やしてしまうリスクが高く、この腐敗に伴う悪臭ガス(臭いおなら)は腸粘膜を糜爛させるほど強烈なこともあり、この肉の食べ過ぎによるアンモニアガスやら、卵の食べ過ぎによる硫化水素ガスやら、腐敗分子・悪玉菌が直腸の壁を通り抜けて体内に入り込めば、血液やリンパ液の流れに乗って体内の至る所に流れていき、脳神経もおかしくさせて意識も錯乱することもあり、大事な脳組織・器官もいためつけることになっていくわけです。
 直腸は肛門直前でS字結腸となり、大便がここで水分を抜かれて硬くなってしまえば、トイレに腰掛けてウンウンうなっても物理的に出ていってくれないのです。程よい水分が保持されて軟らかさが残っていなければ、踏ん張っても出ていってくれません。ここでもたっぷりの水をタイミングよく補うことの重要性があります。赤ちゃんは体重の八割以上が水分なので便秘にはなりにくいのですが、年をとって枯れ木に近づいてきた老体では体重の半分も水分はありません。水分不足で便秘になりやすいのに、自然の食性に逆らって秘結しやすい鶏肉・牛
肉・豚肉などに手を出せば、これらは草食動物並みの腸なのでロクに消化されず、大腸で水分を抜かれて、S字結腸の中でSの字に固まったら、さあ大変。こんな時は、朝、起きがけに、ぬるま湯をたっぷりと飲んで、散歩に出ましょう。「水」「運動」の実践による「便秘解消」は医者の仕事ではなく、あなたのつとめです。
 植物食性の体質なのに動物性食品を摂り過ぎるから、ありとあらゆる生活習慣病を引き起こすもとになると、いつの日になったら気がつくのでしょうか?

 虎より怖い愚政

 暮れの総選挙で政権が代わり、厚労省の大臣も替わりましたが、国民のヒトの食性に関する意識が根本的に変わらない限り、医療費・介護費の国家財政圧迫は変わりようがありません。
 政党の数はやたらに増えましたが、ここに気がついて有効な施策を提案する政党も政治指導者も残念ながら見あたりません。
 愚かな国民がそれに見合う愚かな政治しかできない政党政治家を出現させているという説は当たっているのでしょうか?
 そうだとしたなら、国民を覚醒させ、みんなが基本的に健康になりつつ医療費を激減させ、国を財政難から救い出す賢人と賢策プランナー、今こそ出でよ!
 この賢策探しの答えは、認知症対策の「水」「運動」「栄養のある食事」「便秘解消」が決定的ヒントなのです。
 私たちは自然の食性にかなった範囲内で適切なサプリメントを活用することが「栄養のある食事」に該当すると一貫して主張してきました。
 肉や卵や牛乳製品の摂取量を排便の臭いが悪臭にならない程度まで大幅に減らし、動物性食品は適量の魚程度にして、体温より冷たい食品・極端に熱い食物はとるなということです。蛋白質は植物中心に必要にして十分な量を大豆などの豆と発芽玄米などでとり、糖質は決してとり過ぎないようセーブするということです。
 これは、簡単なようで、案外実行できる人は少ないのです。
 しかし、案外、近未来、金利が上がって国債の利息支払いが税収を上回り、国家経済がにっちもさっちもいかなくなってのハイパーインフレとなり、失業者だらけで収入の道が閉ざされた国民に配られる年金が雀の涙となって、国民の大多数の生活が追いつめられて、認知症になりやすいご老人も頼りにしていた年金がとことん絞られて窮乏生活を余儀なくされ、毎日の食らう物が欠乏してきたときに、半ばパニックになりつつ動物性食品と縁が切れ、もっぱら水と植物性食品しか口にするしかなくなってきたときに、認知症も生活習慣病も劇的に減るの
かも知れませんね。体温より5度高い42度のぬるま湯がお勧めです。

ピンチをチャンスに

 国の借金が国債という形で1000兆円に積み上がれば、金利1%で10兆円。税収が40兆円。医療費の国庫負担が40兆円。海外在住の金融プロは、日本はもはやこの国税収を上げるチャンスは巡りこず、積み上がった国債を返せるはずがなく、国債金利上昇とともに破綻がきて公務員の大量解雇・行政サービスの停止・年金大幅カット・あの手この手の重税化は時間の問題と見ている向きが多いと言われています。
 そのときがくるかどうかは別として、もし、そうなればピンチはチャンス。そのときこそやむを得ず、贅沢病の動物性食品過剰摂取の悪習から脱却し、みんなで貧乏に耐えざるを得なくなって、結果的に現代医学への依存から足を洗うことになり、薬の過剰投与もなくなり、生活習慣病も認知症も劇的に減り、国の医療費負担も一桁減って、また、国が財政的にも立ちゆく展望が開かれてくればめでたし、めでたし。
 いざ国家財政の破綻が始まると、このピンチがチャンスのコースが読めなければ、政治屋はこぞって人気取りのポピュリズムに走り、その政策では何回選挙をやっても右から左、左から右への大揺れでまともな解決策にたどりつくことはできないでしょう。このとき、ソ連の破綻少し前のソ連属国の混乱時みたいに「もっと肉を! もっとパンを!」と衆愚を煽る自称左翼の政治家・政党の現れないことを祈ります。代わりに「もっと温かいぬるま湯と、発芽玄米ご飯と大豆や野菜で飢えないよう命をつなげ!」と叫ぶ政治家などが現れ、聞く耳を持つ国
民に支えられれば幸いです。
 今はそこまで追いつめられていないと言っても、地方の窮乏化は無視できないところまで来ていると言われます。このピンチをチャンスに変えるのは、個々の国民の食生活に対する意識革命です。ご自分のことを遺伝子から見ても、体の構造から見ても、歴史的に見ても、本来はもっぱら植物で栄養を摂ってきた動物の一員で、その大枠の中で暮らそうと方向づけることができるならば、「水」「運動」「栄養のある食事」「便秘解消」で認知症をなくす道が開かれるのです。
 今の時代は、大方の国民が、何か体や心の異常を感じたら、すぐ検査・投薬コースで国家を赤字にしつつ、国民の健康をボロボロにしてきた医療機関にかかりたくなるよう強迫観念を繰り返しの教育で思い込まされており、実際医療機関にかかれば、待ってましたとばかり過剰検査・過剰投薬・過剰医療を受け、拒絶すれば、程度が低い悪質な医師に当たってしまえば誤魔化されたり脅かされて、いやいや効きもしない薬を服用させられる羽目に陥ったりします。
 認知症にいたっても、この事情は同じで、効きもしない薬を処方される患者が殆どです。
 その挙げ句は、糖尿病同様、治らない金食い患者だらけの国になっていくのです。目下のところ糖尿病2200万人、認知症300万人、両者とも増える一方で国家財政は医療費に圧迫されて火の車。
 今こそ、国にも医療機関にも頼り過ぎず、自分の健康は自分で守る、体を作っているのは薬ではなく食物だという自覚で、食べ物のあり方を根本的に見直すべきときがきたのです。そのとき、まず、ご自分が本来的に、植物食性の動物の一員だという自覚を持って戴くと、今まで縷々述べてきた理由で認知症にもならず天寿を全うできる道に立てることに気がついて戴きたいのです。

冷たい物はなぜ 良くないか?

 私どもは自明のことと思っていることも、大方の人々には不思議な話に聞こえることがあるようです。例えば牛乳は飲むなという話。あれは牛の乳で、牛の赤ちゃんの飲み物なんだから、離乳期が過ぎた人間のあなたが牛乳を飲むというのは自然界のあり方から見るとルール違反もいいとこで、掟破りには例えばアレルギー、高脂血症、骨粗鬆症といった制裁があるよ、と言ってもピンと来ない人が多数です。まして学校給食などで冷たい牛乳を飲まされれば、乳糖不耐症の子は授業中の下痢でいじめのきっかけになるよ、と言っても、冷たいとなぜいけ
ないのですかと聞かれることも再三あって、なるほど一つ一つ噛んで含めるように言わないと、こういう話は理解されないんだと改めて思う昨今です。
 学校給食では温かい豆乳をつけるべしと考えますが、牛乳の害は冷たくして飲ませれば輪をかけて健康被害が広がるからです。認知症の方にも水分が良いからと言って冷たい牛乳を飲ませれば、便秘は防げてもマイナスが大きくなります。水もお酒も冷たくして飲ませればボケを含む万病のもとになります。なぜかと言えば膨大な数で暮らしている腸内細菌が、水分や栄養分を吸収するルートで腸の壁を通り抜けて体内に入り込まないように、防衛軍たる白血球はその三分の二を腸壁に棲み着かせてガードの任に就かせています。この白血球が満足に働け
る腸壁の温度は37・2度です。この宇宙で一番熱容量の大きい、つまり温まりにくく冷めにくいH2Oを冷たくして飲めば腸の温度は必然的に下がり、腸内細菌の体内侵入を阻止できなくなり、体の内部に雑菌がばらまかれてありとあらゆる病気の素地をつくるからです。
 熱中症にならないように夏に水分摂取のキャンペーンを張られると、冷たい水分の摂取でボケ老人が増えかねないのです。冷たい水分は意識障害すらもたらすのです。認知症になりたくなければ水分の取り方も賢くというわけですね。