物忘れ・認知症24

認知症とレシチン

サプリでの 認知症対策

 認知症になりたくない、家族のひとりが認知症になってしまった、何か良いサプリメントはないか? 認知症を防ぐサプリメントはないかと質問されることが多いので、今月号は昔から頭を良くし、ボケに良いのではといわれてきたレシチン・コリンとビタミンB12について考察したいと思います。
 この質問については、昔から、まず微量栄養素の総合サプリメント摂取を含む根本的食生活改善をして、その上でレシチンとか、その他の健康食品を試してみたら? とお答えすることが多く、それで良い成果を上げてきた積み重ねがあるのです。定番的にお勧めしている総合サプリメントにはレシチンもコリンもB12も入っているのだから、実績があるのは当然ともいえます。その上での今回の考察ということをまずご承知いただきたいのです。
 まず「レシチン」とは、リン脂質の1種類である「ホスファチジルコリン」と呼ばれる生命の基礎物質の一種ということを押さえておきましょう。
 私たちの体は、水に溶ける性質のものと油に溶ける性質のものとから成り立っていますが、レシチンは水と親しみにくい脂肪であるコレステロール、中性脂肪、脂肪酸等を、水に溶けやすくする役目をしています。また、細胞が生命活動に必要な分子を取り入れたり、老廃物を排泄したりできるのも細胞膜の二重構造の内側がレシチンでできているからです。
 一つ一つの細胞にはレシチンが豊富に含まれているのでその量は、体重60kgの人で600g程度になります。またタンパク質と脂肪を結合させるのもレシチンの働きです。レシチンの親油性の働きが、血管の内壁にこびりついたコレステロールを溶けやすくしたり、細胞の中の老廃物を親油性と親水性の両方の働きにより、血液の中に溶かし込んで血行を良くしたりします。
 このレシチンが不足して、新しい細胞がうまくできないことになったり、また栄養分や酸素が十分入ってこなかったり、不必要な物質が出て行かないで細胞の中にたまったりすると、脳を含む体全体の調子が狂ってきます。
 レシチンが不足することは、いわば細胞の故障ですから、私たちの体は、体質悪化、疲れやすい、カゼをひきやすい、脳の疲労、頭痛、不眠、老化現象、冠状動脈疾患、動脈硬化、糖尿病、腸の異常、悪玉コレステロールの沈着など多くの病気の引き金になります。

レシチンと コレステロール

 動脈血管に悪玉コレステロールが異常に多く蓄積された場合、動脈硬化が起こり、高血圧を引き起こします。
 コレステロールには動脈硬化症を積極的に防止する高比重の「善玉コレステロール」(HDL)と、有害な低比重の「悪玉コレステロール」(LDL)の2種類がありますが、レシチンは善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
 普段我々がよく食べるものでは、大豆がレシチンに富んでいることはよく知られています。

コリンと アセチルコリン

 コリンは、記憶や学習に強く関係している神経伝達物質「アセチルコリン」の基になり、認知症や老化などの防止に役立ってくれる分子です。脳内での神経伝達に関する研究が進むにつれて注目度が高まっています。
 記憶に深い関わりを持ち、「アルツハイマー病」の脳内で著しく不足していることが分かってきた神経伝達物質の「アセチルコリン」は、このコリンをもとにして脳内で自分で作られているのです。しかも、このコリンは体内ではほとんど合成できないため、高レシチン食を摂るのが賢い対策になるわけです。

「高レシチン食の効果」
細胞膜の働きを助ける効果

 私たちの体は、約60兆個もの細胞でできていますが、その細胞の一つ一つで「リン脂質」が大事な役割を担っています。中でも脳神経系や血液、肝臓などの細胞には、特に「リン脂質」が多く含まれています。
 細胞の中身は、さまざまなタンパク質が中心になり、これに核酸や脂質、さらに多様な分子が溶けて混ざった「コロイド状」(0・1〜0・001ミクロン程度の極微細な粒子が、気体や液体の中に分散した状態)の物質でできています。
 一つ一つの細胞は、みな細胞膜によって包まれ、中の細胞質や小器官が保護されています。細胞の中には、遺伝子が入っている核や、ミトコンドリアなど、いくつかの小器官があり、それぞれもまた「細胞質膜」によって包まれています。
 一人の人間の細胞膜、細胞質膜を広げると、その総面積はなんと「80
000平方メートル」にもなるといわれます。
 これらの「膜」は、単に仕切りとして存在するだけではありません。@浸透圧の調節、A細胞に必要な酸素や栄養分の吸収、B不必要な老廃物の排泄、Cさまざまな情報の伝達──といった生命活動に欠かせない機能を持っているのです。
 つまり、細胞膜がその働きを十分に発揮していれば、細胞は本来のあるべき活動をトラブルなく続け、私たちは健康を維持することができるわけです。
 この細胞膜の働きを可能にしているのが「リン脂質」です。リン脂質は、膜組織が担っている電子伝達機構やエネルギー生成の仕組み、さらには細胞内呼吸作用などに欠かせない働きをしていることが分かってきています。
 この膜機能の働きを可能にしているレシチンなどのリン脂質が不足すると、細胞膜脂質の組成バランスが悪くなり、細胞膜の透過性や弾力性がどんどん落ちます。そうなると、細胞内に酸素や栄養分を取り入れたり、細胞内から老廃物を排泄したりといった基本的な働きをはじめ、その他、生命活動全般がうまくいかなくなります。
 また、レシチンなどのリン脂質が不足すると全身に酸素を運ぶ赤血球などの細胞膜も弱くなり、赤血球の溶血破壊が起きたりし、血管壁の細胞も炎症を起こしたりすると、脳出血・認知症などを引き起こすことにもなるのです。