物忘れ・認知症17

認知症とAGE

認知症とAGE

 AGEとは、最近NHKの人気番組・『ためしてガッテン』でも放映され、健康問題や糖尿病を語るときに、特に注目を浴びている悪玉物質で、Advanced Glycation End-productsの頭文字をとった略語で、「終末糖化産物」と翻訳されています。体内、中でも血液中を流れる糖分は様々に姿を変えますが、過剰な糖分が、最後に落ち着く形をAGEと総称するのです。
 AGEが多量に産生されるようになると、一番困ることは、全身に分布され各組織のつながりをつけている結合組織のコラーゲンに付着して、その老化を促進してしまうので、コラーゲンが本来持っている柔軟性や弾力性が失われ、体が次第に硬くなってくることです。
 全身に6万キロもあるといわれる血管の主成分はこのコラーゲンです。血中に糖が過剰にあると、血中でAGEが形成され血管のコラーゲンに付着し、この硬化を招きます。いわゆる動脈硬化も毛細血管の詰まりもその一つの現れです。
 また、膠原病の膠原という言葉はコラーゲンという言葉の翻訳語といわれますから、膠原病とはコラーゲン病ということになりますが、その多くはナゾの多い自己免疫疾患といわれ、医師もステロイドホルモン剤を投薬して強引に炎症を止めさせ運良く好転するのを待つケースが殆どといわれますが、これもどういうメカニズムで起きているかわからないので、投薬も闇雲が実情で、症状次第で投薬量をさじ加減で調節しているだけといわれるので薬害が心配な病気です。三本一組のコラーゲンに架橋をかけて捻らせて形を変え、自己を非自己と誤認させ
て自分の白血球に攻撃させるのが膠原病の共通点とするならば、このクロスリンクといわれる架橋こそAGEのなせる技といわれます。AGE対策こそ様々な膠原病対策の原点といわれる日も近いような気がします。その基礎は高血糖予防ですから、様々なタイプがあるとしても、膠原病には、薬よりも何よりも食生活の根本的改善が必須との共通認識が広がる時代はすぐそこに来ている気がします。糖尿病対策と共通項が多いというかAGEのつくられる量を抑えるという意味で、重なる対策が必要ということになるでしょう。
 この糖尿病は、まさに血中糖度の高い時間が長引いてしまう病気ですから必然的にAGEの量が沢山できるわけで、その被害がとても出やすいわけです。
 糖尿病というと、三大合併症がすぐ頭に浮かぶと思いますが、網膜症・腎症・手足の神経症も、ここの毛細血管に血中でできた血糖のなれの果てのAGEが溜まりやすいからといわれるようになってきて、今では、世界的内科学の教科書にも、糖尿病合併症の第一原因としてAGEがあげられる時代になっているのです。糖尿病腎症の血中AGEは、健康な人のそれより8倍も多いというデータも発表されています。
 コラーゲンに付着したり、架橋をつくったりして体内に蓄積されてしまったAGEは、その寿命が10年程度と見積もられていますので、高血糖状況を継続させてしまった人は、かなり長期にわたるリスクを負ってしまったということになります。
 よく、病気が治る原理として新陳代謝があげられます。毎日毎日1兆個の細胞が寿命を迎えたり、ボロになった細胞が自分の白血球でゴミ処理されたりして姿を消し、その分、細胞分裂で新規の細胞がつくられ、入れ替わるというのです。AGEが老化させたり傷めたりしたコラーゲンも、もし、若返るとしたらこの過程をたどる筈です。白血球の一種・マクロファージはAGEも捕食する能力があるとされますから、何とかこの捕食メカニズムが起きやすい状況をつくりたい、一生レベルの長期でずっとその状況を維持したいものです。

認知症もAGEが…

 日本人に驚異的に増えているアルツハイマー病にも、このAGEが大事な悪役を買っています。
 アルツハイマーでは、脳に老人斑という独特のシミが現れることは昔から知られていましたが、この老人斑には多量のAGEがあるということがわかってきました。また、AGEの増加に伴い、絞め殺されるようにして死滅してしまう脳細胞も増えることが明らかになってきたのです。
 脳のAGE対策の基礎もまた、高血糖の時間を長引かせないということになるのは当たり前の話です。
 まず、高血糖になるのは、体内で血糖、つまりグリコーゲンというブドウ糖になる食べ物を食べ過ぎたからです。それが長時間続くのは、消化されてグリコーゲンになるデンプン、つまりご飯・パン・麺類の日常的過剰摂取が原因です。主食を大事にというので、これらデンプン系食品をしっかり摂っていると、思わぬことで若い内から記憶力に自信がなくなり、物忘れの良さを嘆く日が近くなることでしょう。それは、主食のデンプンが脳にもAGEを増やしてしまう危険があることを示しています。あと、体内でAGEを増やしてしまう食品は揚げ物
、焼き物といった高温で加熱した食品です。これは体内で増やすというより、調理時に食品中の蛋白質と糖質が褐色化するメイラード反応を起こしたものがAGE化するのです。特に肉や卵を油で焦がすなど高温で調理すると高濃度のAGEが増えています。牛肉のハンバーグやフランクフルト、ローストビーフ、ハムやソーセージなど焼いたりしたものは危ない危ない! 目玉焼きも焦げ目のあるところは特に危険! アルツハイマーになりたくなければ、主食は半分以下の軽め、動物蛋白は焼いたり揚げたりしたものは特に要注意で過されることをお勧
めします。主食は精白したものは特に血糖値が高いスピードで上がり危険ですから、少量の発芽玄米ご飯をよく噛んでゆっくり召し上がる習慣を身につけていただきたいものです。間食は高血糖を長時間持続させるので、デザートめいたものは食直後に少量食べるだけにして、間食はできるだけ控えるのが認知症にならないことにつながります。アルツハイマー認知症にならないためにも、私たちはヒト(本来的には殆ど植物性食品だけを食べる動物)の食性を考え、動物性食品をできるだけ避けるとともに、デンプン食材をできるだけ減らし、植物性繊維
が沢山とれる食事、植物性蛋白質(アミノ酸)に重点を置いた食事、微量栄養素は食事の度に満遍なく総合サプリメントで補う食事をとり続けましょうと呼びかけています。糖尿病にならないように糖質制限食にしましょうということでお肉や卵は血糖値を上げませんよ、大丈夫ですよといって動物性蛋白を制限しない食事は、もともと植物食性の人間はこれらの消化がうまくいかないので腸の異常から始まる全身病になるリスクが飛躍的に増えるので、とうてい容認できません。それも避けた糖質制限食こそが、高血糖を長時間維持しないで健康長寿を実
現するコツなのです。
 中でも食物繊維の多い野菜などは、食事の最初に食べることが高血糖を防ぐ力が思いのほか強いことを最近の『ためしてガッテン』でやっていまして、私もガッテンしました。最初にデンプン系のものを食べると血糖値は上がりやすいのですが、野菜をそれに先だってしっかり食べると、同じ量のデンプン系食品を食べても血糖値はさほど上がらないのです。食べる順番が消化吸収の順番になるのです。胃腸で食べ物が消化されるのにも自然の秩序があり、消化酵素は酸アルカリの影響を強く受けるので、一度にあれこれの食物を詰め込むと消化不良のも
とになります。お蚕さまが桑の葉だけで一生暮らして動物性繊維の絹を吐き続けるというのもシンプルイズベストで桑の葉の栄養素を余すところなく上手く消化吸収しているからでしょう。人間もあれこれの種類食べるのが食生活の豊かさと思い込み贅沢しているうちにAGEが増え、まだ若いのに血管はぼろぼろになり、認知症にもなって惨めな死に方をするということのないようにしたいものです。