緊急予告! 次号インタビュー

福島原発事故で住民退避は科学的根拠なき愚策!
枝野官房長官、聴く耳を持って下さい!!

 『自然食ニュース』2007年6月号(bS03)のインタビューにご登場いただいた、電力中央研究所の初代原子力発電部長の服部禎男先生が、3月31日、本誌の緊急インタビューに応じて下さり、前もってその要旨を書いて下さいました。
 詳しくは次号をお読み下さい。

放射線パラダイムの大変革

〔要旨〕
 1997年秋、WHO/IAEA共催で1週間に及ぶ放射線の身体影響に関する専門家会議(国際放射線防護委員長以下650名参加)がスペイ
ンのセビリアで行われました。
 この会議は、DNAの修復やアポトーシスなど生体防衛機構の専門家と放射線ホルミシス研究の専門家達から国際放射線防護委員会(ICRP)に対しての激しい問題提起となりました。
 最終日のまとめのセッションで、「原爆は線量率でいえば自然放射線(0・2マイクロシーベルト/時)の10億倍という恐るべき線量率の被爆である。
 一方、低レベル放射線の身体影響の議論は、DNAの損傷とDNAの修復活動との競争関係の問題である。
 低レベル放射線の身体影響について、今後充分な調査と実験研究を要する。」ということになりました。
 これを受けて、フランス医科学アカデミーのモーリス・チュビアーナ博士は、1998年からEUの科学者達にも呼びかけ、ヒトの細胞などにいろいろな線量率でガンマ線照射実験を行いました。
 これらのデータを集約して、2001年6月にアイルランドのダブリンで、チュビアーナ博士は歴史的な発表をしました。
 いろいろな線量率によるガンマ線の身体影響について、がん細胞など異常細胞の発生の有無を追及しました。
 結論として、「10ミリシーベルト/時以下の放射線照射で人体細胞のがん化はあり得ない。
 さらにがん抑制遺伝子p53の活性化によるアポトーシス(異常細胞の除去)もあり、10ミリシーベルト/時以下の照射を長期間受けても、ヒトのからだはパーフェクトで、発がんなど考える必要はない。
 このことは100ミリシーベルト/時以下でもいえるかもしれない。」と極めて重要な総まとめの報告がありました。
 2007年、その積極的な実験指導活動を高く評価して、この分野で世界的に名誉あるマリー・キューリー賞が贈られ、その受賞講演で、チュビアーナ博士は2006年米国科学アカデミー報告書のヴィレンチック論文を紹介しました。
 ここでヴィレンチック論文の要点を報告致します。
 背景として、1994年秋の日本からの放射線ホルミシス研究成果概要報告(於ワシントンシェラトン)の内容に応じて、DNA研究核医学会大御所カリフォルニア大学名誉教授のマイロン・ポリコーブ博士と放射線分子生物学の創始者ルードヴィッヒ・ファイネンデーゲン博士(ドイツユーリッヒ研究所長)のお二人が1995年からワシントンD.C.に移住され、論文の共同作成と米国エネルギー省への働きかけを始められました。
 その結果、1996年に「ヒトの細胞は活性酸素とのたたかいで、1個の細胞あたり毎日100万件のDNA修復活動がなされており、活性酸素とのたたかいは自然放射線の1000万倍のレベルでなされている。」という論文を発表しました。
 これはDNAの修復活動を無視している低レベル放射線に対する世界的な認識を改めるべきことを示したものでした。
 これを受けて、急きょ開催されたのが、199
7年秋のセビリア会議でした。
 さて、2006年の米国科学アカデミーに発表されたヴィレンチック論文(PNAS Nov.21,2006 Vilenchik and Knudson)は、極めて広範囲に線量率の効果を追求したもので、生体活動を支配しているDNAの働きについて放射線による細胞実験の結果を明示したものです。
 まず、放射線に弱い精源細胞を用いてDNA損傷修復活動の最高値を求め、その最高値が自然放射線の10万倍すなわち20ミリシーベルト/時程度であること、さらにDNA修復活動の限界は自然放射線の3000万倍すなわち6シーベルト/時以上、おそらく10シーベルト/時あたりにあることを確かめました。
 次に、白血病誘発遺伝子や前立腺がん細胞の複製活動遺伝子に5シーベルト程度のガンマ線をいろいろな線量率で照射してみて、どのような線量率ならこのようなよくない遺伝子活動を抑えられるかを調べました。
 結果は、自然放射線の300万倍すなわち600ミリシーベルト/時から1000万倍すなわち2000ミリシーベルト/時(2シーベルト/時)あたりの線量率で3時間程度までの照射が最も効果的にがん細胞の活動を抑えられることを発見しました。
 要するに、ポリコーブ博士とファイネンデーゲン博士が1996年に指摘したように、われわれは、自然放射線1000万倍あたりのアタックの中で毎日特訓されて生きているために、このあたりのリズムに適応応答の最高能力が発揮できるのではないかということが判ってきたと考えられます。
 何よりも、DNAについてもDNA修復についても全く無知であった80年前に、テキサスのマラー氏がDNA修復機能のないショウジョウバエ精子の細胞が介在した実験で「放射線は少しでも危険である」というデータを発表しました。
 それを重視している国際放射線防護委員会(ICRP)勧告は、科学的に全く誤ったものであるとしてDNAの研究者から激しく責められています。
 日本は直ちに科学的に適正な判断をして基準値≠改めなければ、農業・漁業活動におよぼす被害と長期退避や風評の拡大が国自体の滅亡をもたらすとさえいわれています。
〔付〕
 なお、内部被ばくについては、われわれは天然のカリウムに含まれるカリウム40のベータ線を主役として、一般に6000ベクレルくらいの放射能を体内に持っています。
 これによる内部被ばくは0・1マイクロシーベルト/時までです。
 それならば、先に記した10ミリシーベルト/時まで大丈夫とするチュビアーナ博士の宣言から計算しますと、許容値はどの程度になるか、10ミリ/0・1マイクロとは10-2/10-7で105です。
 しかし、どこかの臓器に100倍偏在するとして、103とすると、体に600万ベクレルまで入っても大丈夫だということになります。牛乳や水で600万ベクレルを体内に入れてとどめるのは不可能に近いことです。
 ヴィレンチック
 論文の要点
 数千万年、活性酸素とのたたかいで訓練されてきた内容は、自然放射線の1000万倍のアタックで、これに対して、われわれのからだはDNA修復、がん抑制遺伝子、免疫系統を構築してきました。
 毎日訓練された内容を最高に発揮できるのは、10マイクロシーベルト/時や100ミリシーベルト/時ではなく、1000ミリシーベルト/時なのです。
 当面、5000ミリシーベルト/時を3時間とか5時間とか1日おきぐらいで適用してみれば、明解ながん抑制効果が生じるようにも考えられることをデータは暗示しています。
 これを出発点として、がん細胞を焼き殺す手法ばかりでなく、低レベル放射線によるがん抑制治療を開始していただきたいと切望いたします。
2011年3月31日
 服部禎男 記