免疫力を高める合宿 D

─ノロウイルス問題と 冷たいものの摂取─

ノロウイルスで 多数の死者が

 今冬も、ノロウイルスによるカキなどの二枚貝による食中毒が多く報道されています。この感染がもとで入院中のお年寄りが肺炎を起こして何人も亡くなったということがNHKテレビの夜七時のトップニュースにも報道されました。
 ウイルスは、普通の黴菌よりずっと小さく、電子顕微鏡でなければ観察できないほど小さくて、ノロウイルスは球形の粒子です。ウイルスは、生きた細胞の中でのみ増えることができるという性質があるので、カキなどの体内で増えまくっているわけではありません。
 よく報道されているのは「このウイルスに感染した後は、被害者が加害者にもなるので気をつけましょう」ということです。すでに感染している人がトイレの後で手をよく洗わずに調理をするとウイルスが食品に付着してしまい、汚染された食品が食中毒の原因になることもあるとか、 食べ物だけでなく、人から人、人から器具を経由して人へなどの感染もあるということです。それを防ぐために、石鹸を使って流水で手を洗い流しましょうなどと、国立感染症研究所が大まじめで繰り返しているのは困ったものです。真に危険なのはそんなところには・br> ネいからです。

 感染とは

 そもそも感染とは何でしょう。腸内細菌が百兆個とか、千兆個も腸内に棲み着いているというのは、ノロウイルスの感染と同じような意味での感染なのでしょうか?そうではありませんね。ノロウイルスの感染という概念は腸壁を通して、体内にノロウイルスが入ってきて初めて成り立つのです。腸内というのは、まだ体内ではありません。消化管は食べ物が消化されつつ通過するパイプ、口から肛門に至るまだ体内とはいえないというべき位置です。だから何兆もの細菌が棲み着いていても、治療すべき感染症になったとはいわないわけです。カキにく
っついたノロウイルスも腸内をおとなしく通過しているだけでは、その感染症になったわけではありません。
 本誌で連載をお願いしている西原克成先生の教えによれば、ウイルスも黴菌も腸が冷えた時に限り、腸に沢山並んでいるパイエル板のエム細胞からおびただしい数で侵入してくるということです。これこそが感染です。腸の冷えには、当然程度の差があります。腸のあるべき常温は37度ですが、この温度が1度下がっただけでも、この感染ウイルスや黴菌の侵入は開始されるそうです。
 ましてや、冷たく冷やした水やビールなどをゴクゴク飲んだり、アイスクリームをペロリと食べたりしたら、腸の冷え方も半端では済まないので、長時間にわたってウイルスであれ、黴菌であれ遠慮なく大量に体内侵入という結果を招くのです。
 こうして考えてみると、生ガキが危ないというのは、かなり冷やした重量のある生ガキが腸に達して腸を冷やすからであって、それがノロウイルスにおかされていればノロウイルスに感染することになるし、ノロウイルスにおかされていなくても、腸内細菌は腸の冷えが回復するまでの時間に、かなりの量が腸壁から体内に侵入するので、たとえ不顕性のウイルスや黴菌であっても、白血球はそれを迎撃・消化するために、かなりの活性酸素を使用するので、血液や関節、内臓や脳の中などでその流れ弾が正常細胞の膜にあたれば、そこが炎症を起こすと
いうことは十分ありうる話です。血液の流れに乗って脳に行けば、脳の大事なところが破壊されるきっかけになったりするわけです。

認知症のきっかけも

 炎症は消火隊(抗酸化酵素など)が駆けつけなければ、連鎖反応的に拡大する危険がありますから、ひいては脳の一角に障害が残り、認知症のきっかけにもなるという話も決してこじつけではありません。認知症も生活習慣病の一つといわれるようになってきた研究の流れも、このように考えれば無理なく理解できますね。細胞膜が酸化して壊れれば、核に格納されている遺伝子にも傷がつくきっかけになるわけですから、ありとあらゆる病気のもとになるわけです。この頃は生活習慣病も全て、遺伝子の破壊もしくはスイッチオンオフの異常が誘発され
て起こるという理解が広がってきました。
 ノロウイルスが冷えた腸壁から体内に侵入し感染するのは、手を石鹸と流水で洗ったから防げるというのはピントが大いにずれています。感染を起こしてしまうので、腸を冷やさぬようにいたしましょう、というのが国立感染症研究所がもっとも強調すべきことなのです。それには一言も言及しないので、それを知らずして死出の旅に出されてしまった感染症患者は浮かばれません。

近海の環境汚染も

 最近の生ガキなどがかなりのボリュウムのノロウイルスに汚染されているのは、養殖は栄養が豊富な河口で行われることが多いので当然なのです。人が広げた環境汚染がノロウイルスによる多数者死亡を引き起こしていることを忘れてはなりません。ツバを天にはいている人の愚かさが招いた感染症です。
 最近の下水を検査すると年間を通じてこのウイルスが検出されるそうです。二枚貝は大量の水を吸い込んでえさを取り込んでいて、えさと一緒にウイルスを体内に濃縮しているようですから、公害の一つなのです。いくら美味しくとも、冷たい生ガキはもうあきらめたほうがいいですね。「生食用」だから大丈夫ということはありません。「生食用」とは細菌の量が少ないということであってノロウイルスが含まれていないという保証ではありません。
 新鮮なうちに食べても、冷たくして食べていれば食中毒を起こさない方が不思議です。運良く食中毒にならなくても、血管や脳は勿論、全身の細胞で遺伝子に傷がつく恐れがあるのは今述べたとおりです。
 厚生当局がO─157事件で、貝割れ大根を犯人扱いするという見当違いを大まじめにやって、その生産業者をピンチに追い込んだ記憶がまだ生々しいというのに、カキを犯人扱いして、カキ養殖業者が首をつるということがないようにしてもらいたいものです。カキをたまに食べるのが悪いわけではなく、冷たくして食べる風習が悪いので、中心までよく火を通すように加熱して42度以上で食べれば、少なくともノロウイルス感染の心配だけは無いと国民を安心させることが厚生当局がなすべきことではないでしょうか?

ゴリラはカキを 食べていない

 しかしながら、私たちは、少なくとも健康で長生きして、この世でなすべきことは余すことなくやり遂げてからあの世に行きたいものだと考えている人は、それも考え物だよといっております。
 雑食をやってきたヒトの歴史を考えると、カキがそんなに悪い食べ物ではないとはいえますが、誰でも爪や歯や腸の形をみればわかるように、人間の体には草食系動物の名残がかなり色濃く残っています。500万年遡ると、ヒトはゴリラから分かれて進化してきたといわれますが、ヒトの遺伝子の解明が進むにつれ、そのゲノムの97%は、今だに草食動物といえるゴリラと一緒だといわれるようになってきました。ゴリラはカキは食べません。
 重大な病気になってしまったときは、とにかく原始的遺伝子に逆らわないことです。その遺伝子が想定している範囲内の食事に急いで戻ることが重大な病気と縁をきるコツです。これが私たちが長い時間をかけ、良きにつけ悪しきにつけ体得してきた教訓です。
 熱海の食育養生所は、この教訓を実際の生活の場として、ひろく人々に伝えていきたいという社会教育の場です。ですから、ここではいくら42度に温めたからといってカキは食べないのです。発芽玄米食・菜食・微量栄養素総合サプリメントの組み合わせで、ヒトの体の順調な新陳代謝や活性酸素の過剰発生による被害を防げる抗酸化成分は必要にして充分な量とれます。このサプリメントに新年入荷分から糖鎖成分も飛躍的に充実され、核酸の量も増えたというのは、喜ばしい限りです。心より新年あけましておめでとうといえると感慨深く年の瀬を迎
えている今日この頃です。