熱海の食育養生所での 高濃度炭酸ガス足浴

 NPO根食改(根本的食生活改善をすすめる会)が、熱海・多賀に開設したお元氣食育養生所は、食事もさることながら、いかに健康を取り戻して元気な今後の人生をすごしていただくかというあの手この手の知恵の学習を目標としており、お医者さまが得意とする対症療法とは別の角度から考える、根本的な治癒を目指しています。
 それには自然治癒力が最大限に発揮されるような環境づくりが大事になりますが、その一つとして、37℃から40℃程度の高濃度炭酸ガス足浴を一日三回ほどしていただくメニューとなっています。
 この一番の狙いは全身の血液の流れが自然と良くなることです。実際に二割増し、人によっては二倍ほども血液の流れる量が増えるということです。これは1、000ppmを越える高濃度の炭酸ガスのぬるま湯に足をくるぶしの上まで15分ほどつけることによって、炭酸ガスが皮膚から吸収され、毛細血管も広がり、細動脈血管壁の筋肉層の緊張がほぐれ、血管が広がることで全身の血液流量が大幅に増えるというのです。
 炭酸ガスのぬるま湯に足をつけると、とても良い気持ちがするのですが、やがて足の皮膚に超小粒の真珠のような気泡が沢山付き出します。ぬるま湯の中で飽和状態になっている炭酸ガスが、皮膚から浸透してくる第一歩なのでしょう。炭酸ガスは水にも溶け、脂にも溶け、皮膚も筋肉層も上手に透過するといわれています。そして細胞膜も上手に透過して、血管を広げる作用をしてくれるのです。ほどなく足は赤くなりはじめ、ぽかぽかしてくる実感が得られるようになります。

全身の血流改善

 血液の循環が悪いと、治る筈の病気も治らないということになりかねないのですが、見た目にもこれだけ血液の循環が良くなると、うれしいものです。
 足浴が終わると、つけてあったところはくっきりと赤くなり、何となく足がすっきりしています。足にむくみが来ていた人も、むくみが解消することが多いのです。
 足の血液やリンパ液は、運動が十分でない人は下から上に環流する力が弱く、好ましくない汚れの成分が重力の作用で下に下にと下がってしまいがちで、足の血管底部にオリのように溜まりがちになることはよくあることです。たとえば尿酸の結晶が足の親指付け根付近に、その重さもあって血管の中を落ちてきて戻れず、神経に刺さるような刺激をしてしまうので風が吹いても飛び上がるほどの痛みをもたらすという痛風もその一つです。
 また、寝ている間に足裏に貼り付けて、朝になったらべっとりとするほど毒素を抜くといわれる民間療法が良く効果をあげて評判をとるのも、足底に良くないものが溜まりやすいからです。
 それが足底の血液やリンパの流れが驚異的に良くなって腎臓などで濾し取られれば、むくみが自然と解消されるのは不思議でも何でもありません。長いことスリッパもはけないほどむくんでいた人が、数回この足浴をしている間に自然と足がスリムになってスリッパがはけるようになれたという体験談は、このことを良く示しているのです。
 よく、糖尿病の人は合併症が怖い、壊疽や透析につながる腎不全が怖いといいますが、壊疽は極端に血液の流れが悪くなった足先などが、水虫や怪我で皮膚が破れ、そこから黴菌が入ってきたときに起こるのでしょうし、腎不全は、草食動物の腎臓持ちだということをど忘れして、食べてしまった動物性の蛋白質・脂肪成分の処理がうまくいかず、それが詰まったり蛋白尿になったりするのですから、食べ物を全て植物食にし、高濃度炭酸ガス足浴を頻繁にして、血液の循環を良くしてやると腎不全にも壊疽にもなりようがなくなるのでしょう。
 また、長いこと寝たきりになった人は、床ずれを起こしやすいので定期的な体位交換がすすめられますが、これも体重で局部の血液の流れが圧迫され、悪くなって起こるわけですから、炭酸ガスを高濃度に含んだぬるま湯でタオルを軽く絞り、局部にあてていると、そこの血液の流れが良くなって床ずれが防げるというのも頷けます。

酸素流通量が 増える妙手

 面白いのは、皮膚から吸収された炭酸ガスの作用によって、体内の酸素流通量が増えるといわれることです。 われわれ酸素を使って生きる生命体は、体内酸素が不足してくると上手に生きていけません。何かとトラブルが増えます。細胞内のエネルギー発生器官、ミトコンドリアも酸素不足では活動できません。
 深呼吸を繰り返して、肺で酸素を十分取り入れても、末梢の血液循環が悪いと、末梢には酸素がうまく運ばれません。しかし末梢の血液循環を良くしてやると、肺から取り入れられた酸素が効率良く全身に配給されることもプラスして、全身の酸素濃度が上がるのです。
 養生所では、ご自分でできる体力測定を毎日していただきますが、その一つに指先に酸素飽和計をつけて、ヘモグロビンの何パーセントが酸素を運んでいるのかの測定もあります。酸素の少ない人は貧血同様ですから、なかなか根本治癒ということにはなりません。高濃度炭酸ガス足浴は全身の酸素配給が、あるべき姿に戻るきっかけを与える良い方法の一つなのです。
 酸素がスムーズに全身を巡るようになれば、自ずと全身の代謝が活発になり、肩をはじめとするコリ、筋肉や関節の痛みの原因となる乳酸減少も期待できます。 毛細血管の活動も活発になり、新陳代謝も順調になるので、腰痛なども自ずとやわらぎます。
 このように末梢血管の流れが活発になるので、動脈硬化のために血圧が高い人も、心臓や動脈への負担を心配することなく全身の血流が活発になってくれます。末梢から中枢にいたるまで、血管は自然と緊張がほぐれるので、血流量は一倍半から二倍、場所によってはそれ以上増えるそうです。血圧も正常化に近づく人が多いので、高すぎた人は程良く下がる傾向となることが期待できます。

尿検査では

 体内の血液はアルカリ性になりやすくなるので、毎朝の尿検査で、0RPを記録しますが、これがより還元の方に行くことが期待できます。尿検査といえば、目で観察しても、白い濁りがある人が、次第に薄くなっていくのがわかるはずです。これは養生所の食事が、半断食ともいわれる少食と植物食オンリーを徹底しているからです。ヒトはご先祖は草食動物のゴリラであり、遺伝子は、いまだに97%は共通というのですから、長いこと雑食をしてきたヒトもまた、体には一目瞭然の爪や歯だけでなく、内臓にも草食動物の名残りが沢山残っているので
す。雑食の程度が肉食動物並にというか、それを凌ぐほどになって肝臓・腎臓・膵臓に重い負担をかけすぎて、たとえば腎臓が破綻を来して蛋白が漏れ出すほどになっている人が多いのですから、養生所で出す草食動物の遺伝子にマッチした食事を摂りつづけている間に、自然と尿も良く澄んだきれいな尿になってくることが期待できるのです。
 この食事に高濃度炭酸ガス足浴の組み合わせというのは、生活習慣病対策としては鬼に金棒ですね。
 さて、約15分の高濃度炭酸ガス足浴が終わって、気がつくのは、かなり長いこと足がポカポカしていることです。毛細血管も良く開くので、肌はきれいな赤みを帯びます。血液の流れが良くなっているので、約3倍の保温力もあり、湯冷めもしにくいのです。
 15分間で吸収された炭酸ガスは、全身を循環して様々なところに好ましい刺激を与えつつ、約1〜2時間で体から抜けていきます。養生所では毎日三回、この足浴をしていただきますので、かなり長時間の効果が望めることになります。