『もう肉も卵も牛乳もいらない!」』を読む

第二回 狂牛病の恐普\の章A

全頭検査は 科学的であり 必要で有効

 1986年まで全く知られていなかった狂牛病。日本では公式には2005年4月20日現在で19頭見つかりました。全頭検査は非効率的とは思いますが、まさに科学的にすぐれた方法で、現に検査をしなければ見すごしていた狂牛病が次々に見つかり、知見も確実に増え研究もすすむようになってきました。

狂牛病急増の背景

 見つかった背景には少なくともその十倍はいたはずともいわれていますが、イギリスでは十万頭以上もの牛が、この致死的な脳病BSEにやられたといわれています。それは狂牛病をもたらすプリオンの存在がわからなかったので、手の打ちようがなかったといえばそれまでなのですが、脳が牛の狂牛病同様スポンジ状になって狂い死ぬ羊、この病気をスクレイピーといいますが、この死体をレンダリング工場(畜産処理加工場)という、高熱で煮て蛋白質濃縮飼料をつくるところで加工し、それを牛に食べさせているうちに、牛の中に脳がスポンジ状に
なって狂い死ぬものが出てきた。それもレンダリング工場で肉骨粉にして、牛に食べさせていたところ、つまり共食いですね、草食動物の牛に動物性濃厚蛋白質を食べさせていたら、ネズミ算式に狂牛病が増えたのです。そして、その牛を食べた人の中に脳がスポンジ状になるヤコブ病がかなり出てきました。この章を読まれると、この間のイギリスでの事情が詳しくわかります。

プリオンの発見

 加熱処理の過程で、あらゆるウイルス、バクテリアそして寄生虫などが安全かつ効率よく取り除かれるので、加熱処理を生き延びられるものなどないと何十年もの間、考えられていたのですね。プリオンは900度の加熱でない限り死滅しないそうです。今では狂牛病のプリオンが感染した一頭の牛が蛋白質濃縮飼料に加工されると、その餌で潜在的には千頭もの牛が感染させられかねないことがわかっています。ウイルスではない病原体が、DNAもRNAもなしに増殖できるわけはないとの先入観が異常蛋白質プリオンの発見を遅らせたのです。狂牛
病も感染から発病まで潜伏期間がかなりかかります。仮に牛で2年から5年、人で5年から20年とすると、人間が食べて発症するまではかなりの時間がかかります。はじめは人間には感染しないという思いが主流でしたから、イザ、感染して死ぬ人が出だしてからは、放って置いた30年の間の無対策が悔やまれたのです。しかし、後悔先に立たずとはこのことで、イギリスだけでも多めの予想では約一千万人の人が今後約50年かけてヤコブ病で死ぬのではないかといわれています。

脳萎縮箇所に 多数のプリオンが

 日本でもごく最近一人の人がヤコブ病でなくなり、イギリスで猖獗をきわめていた時期イギリスに24日間滞在した記録があるのでそこで牛肉を食べて、うつされたのではないかとマスコミで騒がれています。しかし、この人は日本でも牛肉をさんざん食べた人でしょうから日本で狂牛病の牛を食べたのかも知れないと何故考えないのでしょうか? えっ?と驚くような安値で食べ放題の焼肉などは、牧場で死んでしまった牛の不正規流通ルートの怪しい肉かも知れません。日本に狂牛病はそのころはまだ見つかっていなかったとしても、いなかったとはい
えないのです。

アメリカ牛に 早くから プリオンが

 この章で驚かされたのは、アメリカでは毎年数万頭もの牛がほぼ原因不明なまま倒れ、衰弱のあまり再び立ち上がれなくなる牛がいるのだということです。「ダウナー」と呼ばれるそうですが、これはダウンした牛ということでしょう。尻餅ついてダウンしてしまうのは狂牛病の特徴の一つだというのはかなり知られている話ですよね。
 ダウンして死んでしまった牛は当然レンダリング工場送りでミンクの餌にもされるそうで、それを食べたミンクが海綿状脳症となる大流行が過去4回もあったとか。
 それをうけてイギリスでBSEが報告されるほぼ一年前の1985年にウィスコンシン大学のリチャード・マーシュ教授が「これまで見られなかったスクレイピー(羊の海綿状脳症)様の牛の病気が米国に存在している」と警告を発していたということです。
 えっ?アメリカには狂牛病というかプリオンで脳がスポンジ状になる病気はないのだから、日本はそんな心配しないで買えとブッシュ大統領とライス国務長官が小泉首相に圧力をかけている構図は何なの?という思いがいやでもわいてきますね。
 狂牛病のプリオンは食べる食べられるということで「種の壁」なんかあっさり乗り越えるということが恐ろしいですね。 羊から牛へ。牛からヒトへ。牛からミンクへ。実験ではネズミやネコ、サルなんかも簡単に食べてうつり脳がスポンジ状になるそうです。
 この奇形プリオンは一種の蛋白質です。沢山のアミノ酸が繋がって小さく折りたたまれているわけですが、この折りたたみに奇形があると、周辺のまともな折られ方をしている蛋白質に形態の影響を及ぼして、まともな折られ方をしている蛋白質がねじれをおこし、同じ奇形になってくるのが異常プリオンの感染で、奇形だと萎縮してくるので脳細胞に隙間ができてスポンジ状になるということです(図)。ひどい状態になるには種によって違うのでしょうが、かなりの時間がかかるわけですね。しかし、この蛋白質の折りたたみ方のミスという意味では
、脳細胞を全体として縮めてしまうアルツハイマー病も同じ要素があります。今はそんなにいわれていませんが牛の肉を沢山食べるアメリカではアルツハイマーは日本の4倍の発症率です。いずれにしてもそもそも牛を食べなければ、何の危険もないことになります。