がん

――代替療法――

 現代医学ではがん治療は、手術や抗がん剤、放射線が一般的です。
 しかし、これらは決め手に欠ける一方、その強い副作用で生命力に確実にダメージを与えます。
 そこで、免疫力の向上でがんをやっつけるさまざまな代替療法・民間療法が、選択肢の一つとして注目されています。
 前回までにお話しした食事・栄養療法もその一つですが、今月はその他の主な療法について紹介します。

現代医学のがん治療三つの柱

 現代医学のがん治療では通常、・手術による切除、・抗がん剤による化学療法、・放射線照射――が行われます。
 しかし、がんの種類、部位、進行度などによっては効果が疑問視されているものも多く、また、かえって死亡率を高めるケースもあることが、医療関係者の内部からも告発されてきています。
・手術 転移等がなく、きれいに切除されれば有効といわれます。
 しかし、あっちこっちに転移していたら、切っても切ってもきりなく、むしろ、治る見込みのない手術で苦しみ、いたずらにQOL(クオリティー・オブ・ライフ、生命・生活の質)を低下させる可能性が大きいといわれます。
 また、手術で体が弱ると、結果的に再発しやすくなるという指摘もあります。
・抗がん剤 白血病や悪性リンパ腫など、血液のがんには抗がん剤の有効性が確認されています。
 しかし、胃がんなどの手術後に再発防止の目的で用いられる抗がん剤は、50歳未満の患者では延命効果がなく、かえって二次がんの発生を高めることが、大阪大学医学部の藤本二郎講師の研究で明らかになっています(表1、2)。
 二次がんとは、転移や再発とは異なり、新たに発生するがんのことです。藤本講師は、50歳未満のもともと免疫力が高いはずの患者では、抗がん剤が免疫機能を障害することで、新たながん細胞が発生しやすくなるのではないかと推測しています。
 また、抗がん剤では、脱毛や吐き気などのきつい副作用をともないます。これは、抗がん剤ががん細胞だけでなく、毛根の細胞や胃粘膜の細胞など、分裂増殖の盛んな正常細胞も叩いてしまうからです。盛んに分裂して白血球や赤血球を作り出している骨髄まで叩いてしまう恐れもあります。
 白血球は免疫系の主役としてがんの排除を担っているので、骨髄がやられてしまうと、かえってがんが増殖しやすい環境になってしまうわけです。
・放射線 抗がん剤が全身に作用するのに対し、がん細胞だけをねらって攻撃するのが放射線です。
 『患者よ、がんと闘うな』の著書で知られる慶応大学医学部の近藤誠先生は、手術も放射線治療もがん治療後の生存率に差はなく、乳がんに至ってはむしろ放射線の方が乳房切除の成績を上回っていると指摘し、がんは切れば治るという思いこみを諫めています。
 しかし、放射線も正確な照射というのはなかなか難しく、周辺の正常細胞も少なからず影響を受けてしまうリスクをともないます。
 放射線を浴びると体内で大量に活性酸素ができ、これが遺伝子を傷つけ、新たな発がんを招く危険があるのです。
 いずれにしても治療にあっては、その効果と副作用を十分に説明し、患者が納得した上で治療してくれる医師を選ぶことです(インフォームド・コンセント)。また、納得のいく治療法を選ぶためには、複数の医師の意見を聞くべきでしょう(セカンド・オピニオン)。

代替療法・民間療法も選択肢の一つ

 一方で、主に免疫力、自然治癒能力を高めることでがんをやっつける代替療法(民間療法、自然療法)が今、注目されています。
 代替療法をとる場合も「これ一つ」、というものではなく、自分が納得したものをいくつか選択し、2〜3ヶ月で効果が全くみられなかったら、次善のものを選ぶというやり方がすすめられます。

〈温熱療法〉

 がん細胞は42度の高温に耐えられず、温度が上がると成長が止まったり死滅することが報告されています。
 医療でも温熱療法は試みられていますが、民間療法として試みる場合、深部まで熱が浸透する遠赤外線サウナなどの利用も一考です。
 家庭でも、体の前後左右に赤外線ストーブを置いてゆっくり体温を上昇させ、42度前後を維持することで、サウナと同様の効果が得られると、東京女子医大の横山正義教授は話しています。
 このとき脱水症状や血液の粘度が高まるのを防ぐため、熱いお茶をチビチビ飲むなど、水分を十分とることが大切です。
 また、ビワの葉を温めて患部に当てるビワ葉温灸(イラスト参照)も、がんの痛みをとるための民間療法として古くから知られています。
 なお、ビワ葉に含まれるアミグダリン(ビタミンB17)という成分には、がん細胞を選択的に攻撃する作用があるともいわれます。

〈バファリン・H2ブロッカー〉

 薬局で鎮痛剤として売られているバファリンに、がんの転移を防ぐ効果が報告されています。実際にがん治療に利用している医師も結構いるそうです。他の薬との飲み合わせや副作用の問題もあるので、服用の場合は主治医に相談します(参考文献・)。
 また、胃潰瘍薬として市販されているシメチジンなどのHブロッカー剤には優れた免疫力増強効果があります。藤田保健衛生大学の松本純夫教授の研究では、Hブロッカー剤のシメチジン(商品名タガメット)と効果の穏やかな抗がん剤との併用で、大腸の進行がんが抑制され、生存率が上がるという臨床成果が得られています。これは、世界的に有名な医学雑誌『ランセット』(95年7月号)にも取り上げられました。
 メカニズムはまだ明らかではありませんが、シメチジンががん細胞表面上で組織適合抗原「クラス1」を修飾することで、白血球ががん細胞を異物(非自己)として認識しやすくなり、がんの排除に役立つのではないかと考えられています。
 服用に際してはやはり主治医に相談されることをおすすめします。

〈精神療法〉

 がんの闘病には精神力も大きく作用します。
 がん細胞を攻撃する白血球には、T細胞の他にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)などがあります。NK細胞はストレスで活性が低下する一方、逆に精神が高揚すると働きがよくなることが報告されています(図)。
 岡山県の柴田病院の伊丹仁朗医師は、前向きに生きることでがんの治癒力を高めようとする生きがい療法を提唱。モンブラン登頂やユーモアスピーチの披露などに取り組み、"笑い"でNK細胞活性が高まることを確認しています。
 一般に治療に用いられる薬ではNK細胞の活性が高まるのに数日かかりますが、喜劇を約3時間みただけで18人中13人でNK細胞が活性化されました。
 旅行でも信仰でもお笑いでもカラオケでも、何でもいいのです。ご自分が気分良く取り組める趣味や生きがいを持つことが大切です。ただし、カラオケ嫌いな人が嫌々歌っても、かえってNK細胞活性は下がってしまうことが、聖マリアンナ医科大学の星恵子先生の研究で確認されていますので、くれぐれも御注意を。
 アメリカでは、イメージの力を生かしてがんと闘うサイモントン療法が人気を集めています。これは、自分の白血球を強力な軍隊や戦闘機などに見立て、がん細胞を破壊する様子を思い描くというもので、本当にNK細胞が活性化されてがんを叩くという効果があるようです(参考文献・)。
代替療法情報 ここにあげたのは、数多くある代替療法の中のほんの一例にすぎません。
 この他にも、漢方薬、本誌にも連載中の気功療法、鍼灸・指圧などの中国医学をはじめ、ヨーガ、尿療法、カイロプラクティック(脊椎矯正)、アロマセラピーなど、代替療法の内容は実に多彩です。
 健康関連図書やインターネットなどでも代替療法に関する情報は手に入れられるので、さまざまな方法の中からご自分に合ったものを選択することをおすすめします。
基本は食生活 どの方法に取り組むにしろ、がんと闘うには食生活の根本的改善がきわめて大事です。本誌では、食生活の改善なくしてがんに勝つことはできないと考えています。
 何度もくり返しますが、高脂肪・高蛋白・低繊維に偏りがちな欧米型食生活は厳禁。"麦・雑穀ご飯(麦2〜5割に、米は発芽玄米)、納豆、青汁、具沢山の味噌汁(野菜、海藻、豆腐、芋など)"といった伝統的な日本型食生活に少食を心がけ、総合サプリメントでビタミン・ミネラルやフラボノイド・ポリフェノールなどの植物性生理活性物質(ファイトケミカル)を十分にとる。
 がんは手強い病気ですが、決して勝てない病気ではありません。希望をもって取り組んで下さい。