目のトラブル・ 現代人に多い眼精疲労・ ドライアイ

 前回は高齢者におこりやすい目の病気についてお話ししましたが、目のトラブルを抱えているのは高齢者だけではありません。
 高度情報化社会に伴うテレビ・パソコン・テレビゲーム等の普及、さらに、長時間の車の運転、夜更かし、精神的ストレスなど、現代型の生活スタイルは目に大きな負担となり、現代人は子供から大人まで多くの人が、慢性的な目の疲れに悩まされています。

疲れ目の原因はいろいろ

 目が疲れる、目が重い、充血、しょぼしょぼする、肩こり・頭痛や吐き気さえ感じる――など、さまざまな目のトラブルを訴える人が増えています。これらの症状は「眼精疲労」という言葉で一括りにされていますが、その原因は次の7種類に大きく分けられます。
・屈折性眼精疲労 近視や遠視、乱視でものが見づらかったり、メガネやコンタクトの度が合っていないと、目の筋肉が疲労します。
・調節性眼精疲労 目は毛様体筋や瞳孔を調節して焦点を合わせますが、目の使い過ぎでこのピント合わせがスムーズにいかなくなると、疲れや痛みがおこります。
・筋性眼精疲労 車の運転やテレビゲームなどで視線を激しく動かしていると、眼球の方向や角度を調節する筋肉が疲れてしまいます。
・症候性眼精疲労 結膜炎や角膜炎などの目の病気も疲れ目の引き金になります。また、失明につながる緑内障も、軽い疲れ目から始まることが多いといわれます。
・全身性眼精疲労 全身の病気や疲労も疲れ目を誘発します。
・神経性眼精疲労 目の機能自体は正常でも、精神的なストレスで目の疲れを訴える場合もあります。
・ドライアイ 目の表面を保護している涙の量が減り、目が乾いてしまう病気で、眼球乾燥症候群とも言います。

コンピュータの普及で ドライアイが急増

 疲れ目の大半はドライアイによるものだといわれます。東京歯科大学市川総合病院の調査では、眼精疲労を訴えて来院した111人中、約6割がドライアイだったことが分かっています。
 アメリカでは以前から問題となっていましたが、日本でもコンピュータの普及に伴って急増し、患者数は全国に800万人以上と推定されています。
 パソコンやワープロなどのVDT(ディスプレイ端末)作業中は、集中して画面をみつめるために、無意識のうちにまばたきの回数が減ってしまいます。
 まばたきには、目の表面に涙の層をつくって水分の蒸発を防いだり、涙腺を刺激したりして、眼球の潤いを保つ作用があり、まばたきが少なくなると目が乾燥しやすくなってしまうのです。
 長時間車を運転する人も、まばたきが少なくなりがちです。
 この他、大気汚染、冬場の空気の乾燥、ストレス、老化、糖尿病、涙腺が破壊されるシェーグレン症候群という自己免疫疾患なども、ドライアイを招く要因となります。

目の健康に役立つ
食事・栄養療法1日20〜30粒の ブルーベリーが効果大

 疲れ目に悩む人が増えている中、目の健康に優れた効果があるとして注目されている食品がブルーベリーです。有効成分は青色色素のアントシアニンで、・網膜にあるロドプシンという視覚物質の再合成を促したり(図)、・優れた抗酸化作用で活性酸素の障害を抑えたり、・目の周囲を取り巻く筋肉の血行を良くする――などの作用によって、視力の向上や疲れ目の改善に効果があるといわれています。
 大阪外語大学の梶本修身助教授らの研究では、眼精疲労のある20人がブルーベリーエキス(1日にアントシアニンとして62mg)を4週間とったところ、85%に症状の改善がみられたことが報告されています。
 鹿児島大学の伊藤三郎名誉教授は、生の果実なら1日に40g以上(20〜30粒)とると良いとアドバイスしています。
 アントシアニンは、ブドウやイチゴ、ナス、赤かぶ、紫蘇などにも含まれていますが、目に対する効果がいわれているのはブルーベリーだけです。他の食品に比べ、ブルーベリーにはアントシアニンの量も種類も圧倒的に多く、また、ブルーベリーのアントシアニンに特有の作用があるかもしれないともいわれます。ブルーベリーの中では、栽培種よりも野生種のビルベリーなどがアントシアニンが豊富です。

目の働きに重要な ビタミン・ミネラル等を確保

 ドライアイの予防・改善には、目の粘膜を保護する作用のあるビタミンAやビタミンCが役立ちます。特に、"目のビタミン"といわれるビタミンAには、多糖類や糖蛋白質などのネバネバ成分をつくり出して目の表面に涙をくっつけておく作用があり、目の潤いを保つのに欠かせません。小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなど、ベータ・カロチン(体内で必要に応じてビタミンAに変換される)やビタミンCの多い野菜類をしっかりとりましょう。
 未精白の穀類に多く含まれるビタミンBやビタミンBには、視神経の機能を活発にして目の疲れをとる働きがあり、不足すると、目の調節力が低下してしまいます。
 また、網膜の神経細胞の40〜50%を構成するといわれるアミノ酸のタウリンや、同じく網膜に多いといわれるミネラルの亜鉛の不足も、目の疲れを招きやすくなります。タウリンや亜鉛は、牡蛎やイカ、タコなどの魚介類に多く含まれています。
 魚介類ということでは、マグロやブリなどに多い魚油のDHA(ドコサヘキサエン酸)に視力改善効果が報告されており、視力の低下が引き金となっている眼精疲労の改善にも効果が期待できます。

和食を基本に、よく噛んで

 目の健康に役立つこれらの微量栄養素を十分に補うと共に、目の細胞をつくるのに必要な良質の蛋白質は、穀類と豆類の組み合わせでしっかり確保するようにします。
 麦入り発芽玄米(または二分搗米)ご飯に、納豆、野菜・海藻など具沢山の味噌汁――といった組み合わせを、よくよく噛んで食べることが大切です。
 噛むためにあごを動かすと、目のまわりの神経に刺激が伝わるため、まばたき不足でおこるドライアイの改善に効果があるといわれます。コンピューターを使う時には、ガムを噛むのもいいでしょう。

目を守る日常生活の工夫

 疲れ目の解消には、目を酷使しがちな生活習慣の見直しも欠かせません。
 まずは視力のチェックからです。自分では不自由を感じていなくても、目が無理をしていることは往々にしてあるものです。メガネが必要な人は正しいメガネを作り、メガネを持っている人は、きちんと度が合っているか確認して下さい。
 なお、ドライアイの人がコンタクトをすると、涙の量が減っているために目を傷つけたり、角膜に細菌がつきやすくなります。なるべくコンタクトは避けるべきです。特にソフトコンタクトは良くありません。
 仕事や作業をする際の環境を整えることも大切です。照明の光が直接目に入らないようにしたり、机や椅子の高さを調節して姿勢が悪くならないように気を配ったり、VDT作業時には、ディスプレイに背景が映り込まないようにするなどの配慮も必要です。ディスプレイは目線よりやや低い位置にある方が目が乾きにくく、ドライアイの予防になります。
 さらに、遠くの景色(できれば木々の緑)をぼんやりと眺めるなど、目と心の休養を心がけるようにしましょう。VDT作業を3時間する場合も、1時間ごとに10分ずつ休憩すると目にかかる負担を大きく減らすことができます。
 睡眠は最大の目の休養になるので、寝不足は禁物です。心身のリラックス効果を高めるには、アイピローと呼ばれる小型の目枕を使うのも良いでしょう。
 目を休める一方で、意識的にまばたきをするなどの目の体操も疲れ目の解消に役立ちます。肩や腰の疲れにストレッチが有効なのと同じです。
 目のツボのマッサージもおすすめです。気持ちよく感じる程度の強さで数秒間押してみて下さい(イラスト参照)。
 また、ドライアイからくる目の疲れには、蒸しタオルで目元を温めるのが効果的です。涙に含まれる油分を分泌する腺のつまりが取れ、血行が良くなります。反対に、目の充血には冷たいタオルを当てると効果があります。
 目薬を使う場合は、防腐剤や、血管収縮剤(塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリンなど)の入っていないものを選びましょう。血管収縮剤は充血をとるには有効ですが、長く使い続けると反動で、薬を使わないと目が赤くなってしまうことがあります。