てんかん

てんかんは大脳の疾患

 てんかんは、意識障害やけいれんなどの発作をくり返す大脳の慢性疾患です。
 発作は、脳の特定の部位の細胞で発生した異常放電が神経細胞のネットワーク上をかけまわり、脳全体に神経細胞の異常興奮が広がることによっておこります。しかし、この異常放電がおきる仕組みはまだ明らかにされていません。
 てんかんの患者には、発作の最中はもちろんのこと、平常の状態のときにも特有の脳波がみられます。
 目に見える症状はてんかん発作に似ていても、てんかん特有の脳波異常がみられないものは、てんかんには含まれません。

発症の原因は

 てんかんは、その発症の原因別に症候性てんかんと特発性てんかんの2種類に大別されます。
 症候性てんかんは様々な病気が原因となっておこるてんかん発作で、成人後初めて発作がおこった人の場合は、症候性てんかんの疑いが濃厚です。
 原因となる主な病気としては、脳の腫瘍や炎症、血管障害や頭部外傷など脳の病変によるもの、中毒性疾患(重金属中毒など)や代謝異常(低血糖症や低・高ナトリウム血症、低カルシウム血症)、肝不全、腎不全などの内科的疾患によるものがあります。
 原因となっている病気を治すことが治療の第一歩ですが、疾患そのものが治っても後遺症でてんかんをおこすこともあります。
 特発性てんかん(真性てんかんともいいます)は、原因不明のてんかんです。遺伝的にてんかんになりやすい素質である場合もあります。
 大部分が30歳以下(特に5〜20歳)で発病し、ある年齢に達すると自然に治っていくという傾向があります。

様々なてんかん発作

 てんかんの発作というと、突然意識を失って倒れ、口から泡をふきながら激しくけいれんをする状態を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。はじめ10秒間ほど手足や体をこわばらせたり、つっぱらせたりする「強直性けいれん」、つづいて手足を細かくふるわせ、次第に大きくふるわせる「間代性けいれん」が約1分間続くことが多いようです。
 てんかんの発作にも、症状や脳波の違い、異常をおこす脳の部位などによりいろいろなタイプがあります。突然20〜30秒意識を失う欠神発作(定型的小発作)、意識障害はなく体の片側の局部だけにけいれん発作がおこる単純部分発作(焦点発作)、意識を失い、無意識に歩き回ったり口をもごもごさせたりする複雑部分発作(精神運動発作)、大発作の前兆となる二次性全般発作などに分類されています。

発症と治療に関わる ビタミンB群

 1951年、アメリカで乳児にけいれん発作が多発するという事故が発生しました。原因は、市販されていたビタミンB6欠乏の粉ミルクです。けいれんの症状は、ビタミンB6を補うことによってただちに改善しました。
 この事故の例からも分かるように、ビタミンB6の欠乏はてんかん発作の引き金になる危険性があります。同時に、十分な補給によって、発症を抑制することが期待できるのです。
 ビタミンB6は、生体内でアミノ酸の代謝を助ける酵素として働いています。脳の働きに必須のギャバ(GABA)というガンマアミノ酪酸があるのですが、このギャバにはけいれんの抑制や抗てんかん作用があります。グルタミン酸からギャバを生合成する代謝に関与しているのもビタミンB6です。
 造血因子として貧血の改善に有効なビタミンB12やビタミンB複合体の葉酸にも、てんかん発作を抑制する作用があることが報告されています。
 小麦胚芽や緑色野菜など、ビタミンB群が豊富に含まれている食事やサプリメントでビタミンB群の摂取量を全般的に増やすことは、大変効果があると思われます。

マグネシウム、マンガン、亜鉛

 しかし、てんかんの患者が必ずしもビタミンB欠乏とは限りません。てんかんの子供では、血清中のマグネシウム、マンガン、亜鉛の濃度が著しく低いという報告もあり、それらのミネラル不足が発症と深く関わっていることも考えられます。毎回の食事での十分な補足によって、てんかんの予防や治療が期待できます。食事のたびに総合的サプリメントをとることをおすすめします。
 特にマグネシウムには神経系の興奮を抑える作用があり、その作用がてんかんの発作の予防や鎮静に役立つと考えられます。
 腎炎の患者にてんかん発作が発生する場合があるのですが、これは、腎炎によりマグネシウムが大量に尿に排泄されるためと考えられます。
 また、乳児が下痢でマグネシウムを失い、けいれんを起こすケースもあります。特に乳児の場合、カルシウムの摂取量が多過ぎると、カルシウムと拮抗するマグネシウムの排泄が促進され、マグネシウム不足によるけいれんを起こしやすくなるので注意が必要です。吸収が良いといわれる健康食品でのカルシウムの摂取過剰も、時としてこのマグネシウム不足で思わぬ被害をもたらす危険があります。
 また、動物性蛋白質やアルコールの過剰摂取もマグネシウムの排泄を促進します。お酒を多く飲む時は、マグネシウムとB6が同時にとれるサプリメントを、その分余分にとりましょう。ビタミンB6には、体内でマグネシウムの代謝を促進する働きもあります。
 てんかん発作の誘因としては、ストレスや睡眠不足、過労、不規則な生活、不摂生などがあげられます。寝ている時に体がブルッとふるえる瞬間的発作をおこす人は特に用心して下さい。てんかんをおこしたことのある人はこれらの誘因を避けるよう心掛け、睡眠や食事の時間を規則正しくし、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれた食事をとり、鯨飲馬食をつつしむことが大切です。