「がん」にはこうして対処(2)

白血球がボケるのは さて、がんを「非自己」と見抜けなかったというのは、何故そういうことがおこるのでしょうか? 白血球は骨の中、骨髄で生まれます。骨髄では、赤血球とか白血球とか血小板になる元の細胞「幹細胞」がどんどん生まれています。そして、この幹細胞から白血球が生まれてくるのです。
 白血球にもいろんな種類があって、中でも一番数が多く臓器移植のとき拒絶反応をおこす免疫細胞が「T細胞」ですが、このT細胞は骨髄で生まれると、胸骨の後ろの胸腺にやってきます。
 胸腺では、骨髄の中で生まれたばかりの白血球が約百日間かけて分化成熟し、一人前のT細胞になって行きます。つまり、胸腺はT細胞を教育する学校に当たるわけで、ここで出会うものが自分なのか自分ではないのかと見分ける能力、つまり、できてしまったがんの腫瘍を「非自己」と認めて拒絶反応を起こせるようなトレーニングをされているわけです。そこで、無事教育を終えて卒業できたT細胞だけが、血液の流れに乗って全身をパトロールしていきます。
 胸腺を無事卒業出来た白血球は、人間の社会でいうと警察官にあたるのかもしれません。そうすると、胸腺は警察学校ということになります。なかなか、厳しいスパルタ教育をされていまして、百個の生まれたての白血球がやってきても無事百日後に卒業できるのは約5%です。95%位はうまく育たなかった、役立たずとされ自殺(アポトーシス)を強要されてしまいます。
 胸腺は人間が10歳か15歳位で成長のピークに達し、60歳位になるとショボくれかかる人がほとんどです。
 日本人の発がん年齢の平均は58・8歳ですが、胸腺がダメになったからまともなT細胞を生み出せず、その結果がんに負けていくということがあるのかも知れないとも言えます。

胸腺の老化を防ぐ

 しかし、人間の体のパーツは100%働かなくてもよいのです。脳細胞も実は5%位しか働いていない。95%は何をしているか分からない。しかし、皆一丁前に生きています。60歳位の人の胸腺は平均して10グラム、15歳位の時の成長のピークの胸腺は30グラムで、まだ、3分の1はあるんですから、これがフルに働いてくれさえすれば、人はがんにならなくて済む可能性はあるのではないでしょうか。
 胸腺の老化は、亜鉛の不足とセレニウムの不足が一番こたえると言われています。この2つのミネラルが人間の体の中から足りなくなっていった時、特にこの胸腺が早老化のダメージを受けると言われています。
 同じ60歳でも、まだまだ元気な胸腺を持ってる人と、80歳並みにショボくれた胸腺になってしまった人とでは差が出ます。百歳のお年寄りだってがんになっていない人は胸腺はそれなりに働いている。トラブルがなければ百歳までおつきあいしてくれるものが、何故58・8歳位でダウンするかと言うと、毎日の食べ物の中で亜鉛とかセレニウムなどのミネラルの不足が続いているからとも考えられます。
 がんに対しては、予防の段階からずっと、胸腺の若さを維持するための亜鉛とか、セレニウムを充分にとっておくこと。ですから、亜鉛もセレニウムも充分含む栄養補助食品を食事の度に摂ることがとても大事なのです。50歳の人は50歳なりの、60歳の人は60歳なりの胸腺に戻って、働いて欲しいわけです。
 ところが、亜鉛やセレニウムを充分摂ってない人は、60歳なのに80歳並に老化が進行した胸腺になってしまう危険性があるわけです。そうすると、しっかりした白血球を充分につくることができなくなるので、風邪も引きやすくなるし、がん細胞に対しても戦うことが出来なくなります。
 栄養補助食品というものは抗がん剤が入っているわけではないし、薬として作られたわけではありません。抗酸化パワーをもつ微量栄養素の集大成とも言うべきものですが、それを毎回食事の一部としてとることによって、従来働いていなかった白血球が本来の異物排除、拒否反応をすることが出来るようになれば元気に過ごせるようになります。
 がんは遺伝子の異変であり、それは活性酸素が手を下して破壊するので、抗酸化の力で活性酸素の過剰発生を抑えることができれば、がんの予防には相当の実力があると期待できるわけです。たとえがん細胞ができたとしても、そのがんを排除するようになることは今述べたようなメカニズムであり得る話なのです。たとえ末期といわれるような状況でさえも、逆転大ホームランも可能になるかもしれませんから、決してあきらめることはありません。

がん医療の怖さ(上)

 お医者さんに「おまかせします」というとがんでは手術をするか、抗がん剤を投与するか、放射線を照射するか、普通、この3つで治療してくれるわけです。しかし、そのどれひとつをとっても決め手になるものがないので治療方法を組み合わせます。しかし、組合わせいかんによっては、我々の肉体も強力に破壊され、かえってがん化を促進する恐れもあります。これらの治療法はがんを叩くには不十分だし、生命力には確実にダメージを与えます。
 我が国では、腫瘍を小さくする効果が認められたものが抗がん剤として薬の認可がおります。けれどもこれを飲めばこのがんは徹底的に排除される、つまり治ってしまうという薬は今の所ないのです。腫瘍が小さくなる、それだけでいい。抗がん剤だけでがんが無くなったというのはよほど運が良かったか、本当は激しく増殖を続けるがんではなく、大人しくしているがん、もしくはがんに似た病気、最近医学界内部での告発で「がんもどき」ともいわれているようなものだったのかも知れません。医者の誤診もあります。
 抗がん剤は、実はがん化した遺伝子をもった腫瘍に対してだけ効くのではなく、盛んに分裂増殖する細胞を叩くというのが、今ある抗がん剤です。別にがんでなくても盛んに増殖する細胞は皆叩いてしまいます。
 抗がん剤を飲むと髪の毛が抜けます。髪の毛は根元の毛根で1ヵ月に1センチも伸びるほどさかんに細胞分裂しています。そういうところを叩くから抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けるし、やはり盛んに分裂増殖している胃の粘膜がやられるから、胃も荒れるし、舌も荒れる。胃の壁は普通でも1日か2日しかもたない、そしてどんどん新しい胃の粘膜細胞を作って消化液に対抗しています。そういうところも抗がん剤は叩きますから、消化はストップし食べたものをゲーゲー吐いてしまいます。
 もっと恐ろしいのは、骨髄という、盛んに分裂をして白血球や赤血球を作り出しているところも、抗がん剤が叩いてしまうことです。
 がんを異物とみなして排除する戦力は白血球T細胞などが担っているわけですが、この骨髄を抗がん剤が叩きますから、抗がん剤の投与で、骨髄で新たな白血球が製造されるのがストップしてしまうのです。ですから、自分の体の中を回っている白血球が消耗されても、それに代わる新たな白血球がつくられないので白血球数は極端に少なくなります。
 自分のがんと戦ってくれるのが白血球だったのに、それをもやっつけてしまうのですから、がんにとっては敵=白血球が居なくなる状況になるわけです。抗がん剤は、がんの拡大を防いでいた自分の白血球にまでダメージを与えてしまって、がんが急激に増えてくる環境をつくってしまうのです。