糖尿病は こうすれば 合併症を防げる!(2)

細胞膜の重要な働き…

 あらゆる細胞は、その周りを燐脂質で出来ている細胞膜でぐるっと囲まれて、そのバリアの中で生きています。
 グルコースなど必要な物質は細胞の中に取り込まれなければいけないわけですが、いつでもどこからでも勝手に入れるというわけには行きません。いくら生きるために必要な物質でも勝手に入ってこられたのでは、細胞は秩序を保って生きていけないからです。
 細胞が生きる為のバリア(保護膜)が細胞の膜です。さまざまな物質の出入りをコントロールするための保護膜です。生きるために必要なものを必要な時に必要な量だけ出入りさせる膜に保護されて、はじめて細胞は生命を保つことができるのです。

グルコーストランスポーター

 ところで、みなさまも部屋に入る時に、窓から入る人はまずいない。みんなドアから入ります。細胞膜中にも、このドアに当たる所が出来てはじめてグルコースは細胞膜を通り抜けることが出来ます。ドアを開かせる指令を出すのが一つの筋肉細胞に50から60あるインスリン受容体で、ドアにあたるところがグルコーストランスポーター4です。インスリン受容体がインスリンをキャッチすると細胞内に沈んでいたグルコーストランスポーター4を細胞膜中に浮き上がらせ、ドアを開かせます。
 インスリンは膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞が分泌する糖代謝に必要なホルモンです。ホルモンは、分泌されるホルモンと、その刺激を受けるホルモン受容体のワンセットでその働きをまっとうすることができます。
 血糖値の上昇によって分泌されたインスリンが、血液の中を流れてきて細胞外液に拡散し、細胞膜の中にセットされているインスリン受容体に捕捉されると、グルコースが細胞膜を通過するドア(グルコーストランスポーター4)が開設されます。
 このグルコーストランスポーター4(糖輸送体、または糖輸送担体)は、それまで細胞の奥深く沈んでおり、指令がくるとエレベーターが上るように細胞膜中まで浮いてきて、グルコース(ブドウ糖)が細胞内に入るドアになるのです。
 ブドウ糖はこのドアを通過して細胞内に入ると、分解されつつ、ミトコンドリアまでたどりつきます。ミトコンドリアは、1つの細胞に、50から100も、細胞によっては千個以上もあるエネルギー製造器官です。

インスリン受容体

 インスリン受容体の調子が悪くてもドアがうまく開きません。・型糖尿病の約2割位はこの不調が原因といわれています。これは動物実験でも、人間の実験でも確かめられているそうですが、このインスリン受容体の調子が悪い人にミネラルのセレニウム、バナジウムをたっぷり与えると、インスリン受容体の働きがにわかに回復する人が結構沢山いるのです。
 セレニウムは魚のニシン、バナジウムは酒の肴のホヤに多いのですが、毎食ニシンとホヤを食べていると、血糖値が上がってしまうので、やはり、糖尿病の人が毎食事に摂るサプリメントを選ぶなら、第一にこれらを充分含んだサプリメントを選ぶとよいでしょう。

クエン酸サイクル

 ミトコンドリアでまわっているクエン酸サイクル、またの名を発見者の名前をとってクレーブスサイクルと言いますが、グルコースが、クエン酸↓オキザロ酢酸をはじめとする8つの酸へと次から次に姿を変えながら、またいったんクエン酸に戻る。この循環型変化を連続的にかなりのスピードでしつつ次から次にエネルギー物質のアデノシン三燐酸(ATP)を生みだす仕組が作動しています(図2)。
 このクエン酸サイクルに、うまくグルコースが乗っかっていけば、糖の代謝は正常です。
 こう見てくると、糖代謝の異常は、・型と・型に応じて基本的に二つの場合があるということになります。
 一つは、細胞の中にグルコースが入っていくのに、必要なインスリンがない場合。膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞が働かなくなって、インスリンが必要量出ない。そのせいで糖が通過する細胞膜のドア(グルコーストランスポーター4)が開設されず、グルコースは細胞の中に入っていけない。これが・型の糖尿病。
 一方、・型の糖尿病ではこの作業に必要な量のインスリンは出ている。従ってインスリン受容体は刺激される筈です。そこで「グルコーストランスポーター4よ! 浮きあがって細胞膜中でグルコースを通過させるドアを開け」という指令を出す。しかし、グルコーストランスポーター4が著しく少なくなっていると、命令を受けとる者が必要な数だけいないために結果的にドアの数が少なくなるので、結局のところグルコースの多くは細胞内に入れず、細胞外でウヨウヨしてしまう。
 また、インスリン受容体の働きがにぶっていても指令がうまく出せず、グルコーストランスポーターが充分な数あっても浮いてこれない。従ってドアの数がとても少ないということにもなります。
 このインスリン受容体がうまく働けない、また、糖が細胞を通過するドアであるグルコーストランスポーター4が著しく少なくなってしまった人、この人が成人型ともいわれる・型の糖尿病の圧倒的多数を占めるといわれます。この・型も・型同様、グルコースは満足に細胞内に入っていけないので血糖値は高いままです。
 ・型の糖尿病はインスリンがわずかしか出ない、・型の糖尿病は脂肪細胞・筋肉細胞にブドウ糖が入っていくドアの数がいちじるしく少ない。ここが違うわけです。
・型なのに
・型のインスリン注射を
されたら…
 だから、インスリンは必要量出ているのにグルコーストランスポ
ーター4またはインスリン受容体に故障があるために血糖値が高い・型の糖尿病の人に、インスリンの誘発剤を投薬しても、見当違いなので糖尿病はよくならない。むしろ初期は増えてきた血糖を何とか処理しようとして約2倍ものインスリンが出されているほど膵臓はハッスルして働いている。それなのに血糖値が高いということでインスリンをもっと出せという薬を投薬すると、この薬の刺激で膵臓はやがてくたびれ果て、薬の副作用もあってタイミングを誤った投薬のせいで膵臓がインスリンを出さなくなってくる。そのようになったとき「あなたはいよいよインスリンが出なくなったからもうインスリンの注射
をしないと駄目ですね」などと宣告されたりします。
 しかし、・型の人はもともとインスリンが基本的に出ていたタイプです。なのに誤った薬物療法をされ、結果的にインスリンの出方が少なくなってしまい、その上さらにインスリンの注射を打たれはじめたらどうなりますか?
 膵臓は次第に自前のインスリンを作らなくなっていきます。長いこと毎日何回も注射をしているうちに、膵臓のランゲルハンス島が萎縮をしていくおそれがあります。
 今までは・型だったのでインスリンは必要量出ていた、初期は約2倍も出ていた、あとはグルコーストランスポーター4が増量すれば糖尿病は治るということであったのに、インスリン誘発剤の投薬がきっかけでインスリン注射を長期にわたってされたせいで、インスリンが必要量出ないほどこじれていく人が多いといわれます。良かれと思って治療するのでしょうが、すればするほど悪化していく。投薬と注射で高くなる血糖値をコントロールして、死ぬまで元気に暮らせれば良いのですが、統計上は注射開始後7年目で目の合併症が出始め、失明への道へまっしぐらに落ち込んでいく人が多いのです。
 "医者選びも寿命のうち"とは、こういうケースでも言えます。
 すでに自分がこのパターンで被害を被っているのではないかと思える人でも、まだ救いはあります。実はこういうケースでも、再び自前でインスリンが製造できるようになり得るという学説も、体験談もありますから、人間は生きている限り、決して諦めてはいけないと思います。
 今までのことは、時代の制約もあったのでしょうから、今更どうしようもないわけです。だからといってあきらめることなく、根本的食生活改善と運動療法に一生懸命取り組み、インスリン注射量を徐々に減らしていく、将来は投薬もインスリン注射もやめることを目標に挑戦してみるのは、試してみる価値は十分にある筈です。
 まだインスリンを打っていない・型の人は、インスリン受容体が正常化し、グルコーストランスポーター4を増やすことさえできれば、インスリンは出ているのですから、これは完璧に治る可能性が強いわけです。