糖尿病はこうすれば 合併症を防げる!

治すことができる!(1)

糖尿病とは…

 糖尿病には基本的に・型と・型があります。・型はIDDMと呼ばれ、・型はその反対を意味するNON・IDDMと呼ばれます。
 全く違う型なのに同じ病気の仲間扱いされています。
 IDDMのIはインスリンの頭文字、Dはディペンド(依存する)の頭文字、DMは糖尿病なので日本語ではIDDMはインスリン依存型糖尿病、NON・IDDMはインスリン非依存型糖尿病と呼ばれます。
 我が国の糖尿病患者は600万人にも及びますが、・型はその約1割で60万人、・型は9割の540万人といわれます。
 特に、30歳を過ぎてから糖尿病と言われた方は、そのほとんどが・型です。
 今は、科学技術の進歩で血液中のインスリン量を調べる検査方法も開発されています。それを使って、糖尿病の人を片っ端から調べていくと、ほとんどの患者でインスリンが必要量検出されることがわかりました。・型のNON・IDDMが圧倒的に多いわけです。
 しかし、実際は・型なのに、・型の人がうけるべきインスリン注射の治療を受けてしまい、そのせいもあって一生治らない人が多いのも現実といわれています。
 従ってもし糖尿病と言われましたら、「先生、私の血液の中にはインスリンはどの位あるのですか、IDDMなのですか、NON・IDDMなのですか」と、ここのところをはっきりと教えてもらわなくてはいけないわけです。
 二つの違いはインスリンの量によるのではありませんから、中間型とか、境界型とかあいまいなことを言われて引下がってはいけません。

・型・型とは…

 さて片やIDDM、他方NON・IDDMと、全く違うのに、同じ糖尿病とされるのは両者の間に共通点があるからです。それは何かといいますと、「糖の代謝異常」です。
 ・型は膵臓が壊れてしまったのでインスリン分泌が極端に少なくなり、その為に糖の代謝が異常になり、注射のインスリンに依存することが必要なタイプ。
 ・型の糖尿病は、インスリンは多少問題点はあっても、基本的に必要量が出ている。出ているにもかかわらず、糖の代謝が異常なタイプです。
 違いは、・型はインスリン分泌が必要量出ないほどの膵臓のトラブル。故障個所は膵臓のランゲルハンス島のベータ細胞。
 ・型は基本的には膵臓のトラブルではない。膵臓のトラブルも、たとえあったにしろ、インスリンは注射に依存しなくても良い程度には出ている。本来的に壊れているのは別の個所。細胞内で糖をミトコンドリアまで輸送してくれるグルコース・トランスポーター4が決定的に不足している。そのために血糖値が高い。これが・型の糖尿病。
 この違いをしっかり把握して、その後の対策を考えなければいけないわけです。
 95年6月30日号の週刊ポストに、糖尿病を例にあげ、やぶ医者の見分け方という記事が大きく出ています。これがチャートつまり図式判定表になってでていますから、やぶ医か名医か簡単に見分けられるようになっています。
 やぶ医にかかりますと「あなた血糖値が高いね、じゃあお薬出そうか」ときて、「これは血糖を下げる薬だよ、副作用があるから飲み過ぎちゃ駄目だよ」なんて言って、小粒の薬をくれたりする。こういう時は、先生に「これは血糖値が下がるお薬とおっしゃいましたけれどもインスリン誘発剤なんですか」ということもちゃんと確認しておかないといけないのです。「おまかせします。よろしくお願いします」式ではことに糖尿病は駄目なのです。
 これからはインフォームドコンセントの時代といって、医者は患者に病気についての十分な情報を与え理解させ、患者はそのとき示されたいくつかの治療法の一つを選択できるようになっていくのです。患者も自分の病気に関して詳しく知らないと、どういう治療法をして欲しいのか自分の選択も言えません。

糖の代謝異常とは…

 さて、糖尿病に共通の、糖の代謝異常とは、どういうことでしょうか?
 我々の体はおびただしい数の細胞で出来ています。その数、何と60兆個。これらの細胞はみんな生命をもっていますから、生きて活動していくために一つ一つが栄養と酸素を必要としています。皆さんの扶養細胞は60兆個もありますよ、というか、皆様の命は60兆個もの細胞に支えられていらっしゃるわけです。これらが、年がら年中餌をくれと叫んでいるのですから、皆さんはきちんとご飯を食べなきゃいけない。60兆個の細胞に栄養が切れないよう定期的に食べなくてはいけないわけです。
 私たちが命のもとは食べ物だ、大自然のルールに従った食生活を!と言っているのは細胞レベルで考えるとこのあたりのことが念頭にあるからです。
 この細胞にとって活動源としての一番の餌はブドウ糖です。
 そんなに自分はブドウ糖なんか食べていないよと、意外に思われるかも知れませんが、ご飯とか、麺類とか、パンだとか、こういうもので、澱粉を摂っていらっしゃるじゃないですか。
 澱粉は消化をしてやりますとブドウ糖に戻るのです。もともとブドウ糖が沢山連なってできた多糖類が澱粉ですから。良く噛むと唾液や腸で供給される消化液に含まれる消化酵素がこれをバラバラにして、ブドウ糖にしてくれます。このブドウ糖が腸から吸収されると血液に入り、門脈という血管で肝臓に送り込まれます。
 そこで、ブドウ糖をもう一回整列しなおして、グリコーゲンという多糖類に変える。そしてそれを徐々に血液の中に放出する時にはグルコースという名前でよばれますが、またブドウ糖になって出てきます。
 グルコースは、血液の中に出てきますから、当然、血管の中を流れてくるわけです。血管もまた、細胞でできていますから、細い毛細血管に至りますと、グルコースが血管を構成している細胞のすき間から細胞外液ににじみ出て参ります。
 コップの水にインクを垂らしたときひろがって行くような、拡散という現象で細胞外液中にグルコースは散っていきます。
 そしてそのグルコースは、細胞に接触し、そのバリアである細胞膜中にできる特定の通路を通過して細胞の中に入り、細胞内器官であるミトコンドリアに運ばれ、ここで機能しているクエン酸サイクルの流れに乗って、最終的にアデノシン三燐酸(ATP)というエネルギー物質を生みだして行く材料となりつつ、最終的に水と炭酸ガスに分解されていきます。
 この流れが順調にいけば糖の代謝異常にはなりません。
 糖尿病の方はこの代謝がスムーズにいっていないわけで、これが「糖の代謝異常」ということです。
(つづく)