糖尿病の人の 運動療法について

糖尿病とは

 糖尿病は脂肪細胞と筋肉細胞の中に血糖(グルコース)が上手に入ることができなくなった病気です。その結果、血糖値が高かったり尿糖が出たりします。
 この二種の細胞は細胞の中にブドウ糖が入ろうとするときにインスリンが必要な細胞です。
 ・型の糖尿病(IDDM)は、このインスリンが膵臓が壊れたために出なくなったため、注射によるインスリンに依存しないといけなくなった病気です。
 先頭のIは注射によるインスリン。最初のDはDEPEND=依存するのD。次のDMはDiabetes Mellitus(糖尿病)の頭文字です。大人になってみつかる糖尿病はほぼ全員が・型ですが、これはN-IDDMと呼ばれています。このIも・型同様注射によるインスリンですから、注射によるインスリンに依存しない糖尿病と病名に書いてあるわけです。これはインスリンが出ているから注射によるインスリンには依存しないということで、特に初期の境界型糖尿病ではインスリンは健常者の2倍くらいの人もいるくらい沢山出ています。

運動療法が偉力を発揮

 それなのに脂肪細胞や筋肉細胞に血糖のグルコースが入っていけない理由は、インスリンレセプターの故障か細胞膜上にグルコースを通すべく開くドア、グルコーストランスポーター4の数が足りないからと考えられています。
 そして、このグルコーストランスポーターを人並みに増やそうという時に偉力を発揮するのが適切な運動です。
 本誌の加藤邦彦先生のインタビューを充分心して何回も読み、その趣旨を理解した上で、糖尿病の運動療法ととり組んで下さい。
 早ければ1週間で、遅くとも1ヶ月もあれば、ほとんどのケースで上首尾にいくことでしょう。
 まず、運動の目的はグルコーストランスポーター4を人並みに増やすことです。
 一般的にいわれているような1日に200kcalを消費するためではありません。
 そのための運動はまず強さが要求されます。運動の強さは脈拍のテンポでわかります。脈拍が1分間に120〜130になる位の強めの運動を毎日1時間して下さい。
 糖尿病の方は体が疲れやすいので、2回か3回に分けてこの運動をして下さい。
 よく1日に1万歩歩きましょうといわれていますが、この脈拍でしないと大した効果は期待できません。

運動は タイミングが必要

 そしてこの効果をあげる運動はタイミングが必要です。食後30分後にスタートで30分大股速足で歩くのがベストです。血糖値が上り、インスリンが出ている時に一番効果があがりやすいのです。そして毎日継続することがとても大事です。犬の散歩ではしょっちゅう止まるので駄目です。
 外を速歩で歩く時は、歩幅は大きくとりましょう。また手を大きく振ったり軽目のダンベルなどを持ったりするのも有効です。
 食後30分にこの強目の運動をするには食事は30〜40分かけてゆっくりよく噛まないとお腹が痛くなってできないでしょう。糖尿病の人は特にゆっくり良く噛むことを心がけて下さい。

色々と工夫して運動を

 雨の日、大風の日にもこの運動をしようと思ったら、何か室内でできる運動具があると良いでしょう。階段のぼり同様の運動ができるステッパー、その上を歩くことができる歩行ベルトなどなど。電動モーター付歩行ベルトでは時速5〜7km位で歩きましょう。
 歩行時の足底からのショックを防ぐには今、流行の靴底に空気クッションのある運動靴がおすすめです。
 すでに合併症が目に出ていて、眼科の先生から運動を禁止されている人は、ストレッチ(静止してする筋肉の伸縮)をして下さい。たとえば両掌を合わせて左右から全力を込めて押すようなストレッチは8秒間持続がコツです。
 NHKですすめているダンベルやゴムひも体操は糖尿病の人にもおすすめです。これらはスポーツ用品店に用具を売っていますし、本屋さんでもそれぞれの解説本が売られています。
 膝や足首などが痛くて速歩ができない人はプールのはしを全力で水中歩行するというのも有効です。プールでの運動は別に泳ぐのでなくとも糖尿病の方に特におすすめです。

運動が適さない人、 できない人は

 網膜症などの合併症が進んでいるなど、運動は控えた方が良い場合もあります。動脈硬化が進んでいる場合も過激な運動は禁物です。こうした合併症が進んだ人や、また、体力がなかったり、心臓疾患などの病気を併発している人は、食事指針を守り、ミネラルやビタミンなどが総合的に入っている微量栄養素のサプリメントを毎食欠かさずとって、さらにDHEAのサプリメントも試す価値があります。
 セレニウムやバナジウムはグルコーストランスポーターの受容体に関係するという研究報告が、また、DHEAはグルコーストランスポーターの数を増やす効果があるという研究報告があります。