ガン

ミネラル面での特長

 ミネラル面で見ますと、ガンの人は体液中のカルシウム、カリウム、セレニウムが少ないという傾向がみられるそうです。
 アメリカには細胞内の過剰なナトリウムと、全体的に少ないカリウムに着目をしてナトリウムの多い食品、塩、動物性食品、化学調味料等の摂取を禁じ、カリウムの多い果実、野菜、イモ等を多目に摂らせてガンの自然治癒をめざす療法もあります。
 ガンは生体では異物ですが、しかしもともとは私たちの身の内であったわけです。
 その遺伝子さえ、もとにもどってくれたら、自然治癒につながります。またエネルギー多量消費型ですから栄養がこないと崩壊しやすいともいわれます。
 ナトリウムとカリウムは互に拮抗しているミネラルですから、カリウムを補うというのは当然として、この療法を徹底して行おうと思ったら、カルシウムとセレニウムを同時に補給すべきですし、もう一つマグネシウムを多目に摂ると良いでしょう。
 細胞内のナトリウムを細胞外に出すにはナトリウムポンプが動くことが必要です。
 このナトリウムポンプが動くエネルギー源はマグネシウムATPです。ガン細胞の中にはATP(アデノシン三リン酸)は沢山あるのですが、マグネシウムがないとナトリウムポンプは働けず、従ってナトリウムとカリウムの入れ替えはうまくいかないわけです。
 ガンの初期は、まだ勢いづいてないので、何でもマグネシウム、カルシウム、カリウム、セレニウムが不足しないように手当てをしておくことが、ガンから自ずと身を守ることになるわけです。
 特にカルシウムとマグネシウムは日本人の場合、一日600ミリグラム対300ミリグラムの割合で摂るべきところ、500ミリグラム対100ミリグラム程度になっている人が多いということですから注意したいものです。
 また、セレニウムは活性酸素が正常な細胞膜や核膜等を過酸化脂質にしたりして発ガンの引き金をひくのを防いでくれるミネラルですから一日250マイクログラムから500マイクログラムは欠かさずとっておきたいものです。
 こういう知識を知らず、対策もたてず、ただガンが恐いとかいってノイローゼになったり、ガンは恐くないといってタバコをプカプカ吸うというのはどうかと思われるというわけです。

活性酸素と フリーラジカル

 そこで、次に活性酸素と過酸化脂質の話をまとめておきましょう。
 私たちは息を数分間とめられると死んでしまうように、酸素を摂り入れる呼吸というのはとても大事です。空気中では酸素は二つの原子で一つの分子をつくりOという型で存在しています。しかし、この分子の構造は時と所でかなり自在に変化しています。
 肺から赤血球に酸素がうけわたされる段階でも一部はOから、いくつかのタイプの活性酸素に変化していますし、白血球は異物攻撃のため、また細胞内のミトコンドリアではエネルギーを生み出す時の電子伝達のため活性型の酸素になっています。
 Oというのは比較的安定したスタイルなので、他の原子と化合して酸化させる力はさほど強くないのですが、それでは逆に困る場面もあるわけです。強力な酸化が必要な時と所では酸素は変身して、活性型の構造になっており、出会い頭に相手と結びついて酸化させるようになっているのです。
 酸素の原子だけでなく、他の原子と結びついていても、電子の数が不足して、他の何かとパッと結びついて酸化型の結合に飢えているようなフリーラジカル(遊離基)と呼ばれるものもあります。
 生化学反応が活発に行なわれるところには、こういう活性型の酸素(スーパーオキサイド)やフリーラジカルは、実はおびただしい数で発生するわけです。
 しかし、存在する時間は割と短いのです。
 パッと生まれて、パッと他のものと結合するというケースがほとんどです。
 しかし生体側から見ますと、この活性酸素やフリーラジカルが細胞膜を構成する不飽和型の脂肪酸と結合されると、とても困るわけです。
 まず第一に細胞膜が破壊されるだけでなく、いったん不飽和脂肪酸が、これらと結合して過酸化脂質という物質に変身しますと、これ自体が一種のフリーラジカルなので、まるでネズミ算のように、またたく間にフリーラジカルの数が増えてしまいます。
 細胞内には、いくつかの大事な器官があるのですが、その一つにリソゾームという強力な蛋白分解酵素がしまわれている小袋があります。
 この小袋の膜も生体膜ですから、さっきまで細胞膜であったフリーラジカルに接触されると、たちまち壊れてしまい、それもまたフリーラジカルになってしまいます。
 そしてこぼれ出た蛋白分解酵素は、その細胞内の蛋白質をどんどん分解してしまいます。
 遺伝子を包んでいる核膜もまったく同じようにして破られ、中の遺伝子が傷つけられます。
 その結果全部が死んでしまえば、かえって問題ないのです。
 しかし、この破壊が中途はんぱに行なわれると、遺伝子は傷つけられガン細胞の遺伝子となり、あとは修復されたということになると、話は厄介になってきます。
 こういうことにならないよう、生体側には活性酸素から身を守るため、いろいろな工夫がされています。
 例えば、細胞膜の近くに抗酸化ビタミンであるE、C、A、B群があれば、これらは身を挺して、活性酸素やフリーラジカルが細胞膜に近づけないように働きます。
 また三種の強力な酵素をつくり、これらのビタミンよりもはるかに強力に細胞膜をまもるほか、やられた細胞膜をすみやかに修復してもくれます。

抗酸化三酵素

 スーパーオキサイドディスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ。これが抗酸化三酵素といわれる三つの酵素です。
 これらはいずれも自前でつくられますが、しかし私たちの老化にともなって段々とつくられる量が少なくなってくるのは否めません。
 老化とともにガンになりやすくなるには、こういう事情もあると思われます。
 また、この酵素はいずれもミネラル結合型の酵素で、その中核にミネラルを抱いてない限り、有効に働けないので、食生活のかたよりから必要なミネラルが充分とれていないとか、吸収不全とかいう事情があれば、生体側でいくら酵素をつくっても、役に立たないので活性酸素やフリーラジカルが暴れまくるということになりかねません。
 自然食をしているからガンにならないというのは、立派な信念かもしれませんが、現実に自然食をしていてもガンになる人がいるということは、ここらあたりに気をつけなくてはいけないということなのです。
 それなしで、自分だけは大丈夫と思って自然食の良さだけを吹聴していると、人からは「一種の信仰ね、イワシの頭も信心からだもんね」と蔭口をたたかれるもとになるわけです。
 スーパーオキサイドディスムターゼの中核となるミネラルは亜鉛と銅です。一部マンガンタイプもあります。
 カタラーゼの中核となるミネラルは鉄です。
 グルタチオンペルオキシダーゼの中核となるミネラルはセレニウムです。
 不足している人は、それこそガン予防の決め手として、これらのミネラルをサプリメントで摂ってください。
 食生活の改善で、そのミネラルが多い食物を選ぶとともに、サプリメントで一定量確実に摂ることが大事です。
 これらのミネラルやビタミンを総合的に含んだサプリメントをベースに食事のたびに補給することを考えられたら良いでしょう。

ガン体質とは…

 さて、自分の家系にガンで亡くなった人がいた人は特に注意していただきたいのです。
 実は他の酵素も皆そうですが、抗酸化の酵素も皆、自前でつくります。
 これは遺伝子の中に、こういう条件のときは、こういう酵素をつくりなさいという指令プログラムが入っているのです。
 で、この遺伝子には個性があるわけです。
 人間は皆、目が二つ、口が一つときまっていても、その型は一人一人微妙に違うように、つくられる酵素も一人一人微妙な違いがあると考えられるわけです。
 従って、これらの酵素と亜鉛、銅、鉄、セレニウムとの親和力は一人一人違うわけです。
 酵素とミネラルの出会いというのは、確率論できまる性格のものです。
 また、酵素のまわりにミネラルがどのくらい存在しているかでも、結合量が大きく左右されます。酵素側の親和力が小さければ、それだけまわりに沢山のミネラルがなければ出会いと結合は少なくなります。
 何やら適令期の男女みたいな話ですが、体質とはそういうものなのです。やはり補酵素といわれるビタミンと酵素の出会いと結合にも同じことがいえます。
 従って家系中にガンの人がいたら、自分も、これらのミネラルと親和力の弱い酵素しかつくれない体質である確率が高いと覚悟して、サプリメントでミネラルを充分に補っておくのが安全というわけです。
 これは、心臓病や脳梗塞等他の成人病一般についても事情は一緒です。
 俗にいう難病のほとんど、慢性病のほとんどが活性型酸素とフリーラジカルが引き金をひいているからです。
 ビタミンやミネラルは大小便や汗、その他で定期的に体外に出ていきます。
 仮に体内で不足していても、その排出をストップする自動調節装置までは、私たちの体はそなえていません。
 従って普段何でもない時にこそ、少なくともガンに関係するミネラル、つまりマグネシウム、カルシウム、カリウム、亜鉛、銅、鉄、セレニウムが不足しないように、食事のたびに総合的なサプリメントで補給する手だてをこうじておくことこそモアベターだということになります。
 今の医学では早期発見、早期治療ということをいいます。
 ひと昔前までは、早期治療もいいけど、へたすれば早期死亡だなんて悪口をいっていましたが、今はだいぶよくなってきたようです。
 まだガンができていないと思っている人でも、今の人は、ほとんどの人がガンの芽はもっているといわれますから、普段から活性酸素やフリーラジカルが暴れまくる危険、ガンが本格化する危険を抑える手だてをこうじるべきではないでしょうか? まだガンになっていないうちからガンの危険を「早期発見」し、薬ではなく栄養補助食品の適切な摂取を含む食生活改善で、有効な対策をたてられたら良いと思います。

放射能と酒

 ついでの話になりますが、チェルノブイリの原子力発電所の事故がまきちらした放射能で、今後十年ないし二十年間で相当沢山の方が白血病(血液のガン)やガンでこの世と別れを告げなくてはならないといわれています。
 広島で、長崎で、その後の核実験の被害で多くの方が亡くなっています。
 これも放射能が通過する時に、活性酸素を多量に体内に発生させ、同時に遺伝子を傷つけるからであり、これは紫外線にも同じことがいえるのです。
 また、農薬のパラコートの自殺は助からないというのも、活性酸素を多量に産み出すからに他なりません。
 また余談ですが、小量のお酒は、体内では活性酸素やフリーラジカルを処理してくれるのに役立ちます。
 薬の副作用の一つとして体内で活性酸素やフリーラジカルをうみ出すことがあげられるのに比べると、酒は百薬の長とはよくいったものです。