微量栄養素と健康

自然食ニュースが提唱する 『日本人の食事指針』について
― 味噌、納豆など腸内有用菌を繁殖させる発酵食品を欠かさず摂る。
ヌカミソを 適量水に溶かして飲むのも良い。低分子物質も積極的に摂りましょう。―

バイオミネラル研究所所長 仙石紘二

体内で各種の酵素活動を活性化させる低分子物質とは。

 さて、良い発酵食品を摂ると私達の腸内菌叢がとても良くなるだけでなく、体内で各種の酵素活動を活性化させる低分子物質が豊富に摂れます。
 低分子物質というのは分子量が二百とか三百といったオーダーの物質群ですが、これらは必ずしも発酵過程でのみ得られるだけでなく、食物が消化される過程で胃酸や消化酵素などの作用をうけても作られます。食物中の大きな分子、例えばアミノ酸の重合体の蛋白質は数万から数十万個以上のオーダーの分子群から出来ていますが、これが消化の過程でアミノ酸に分解されるとおよそ千から数千分子程度の分子群になります。この位ではまだここで問題にしている低分子物質群とはいえません。それよりもう一桁下のオーダーの物質群です。
 二、三百程度の位小さな分子量になりますとセロファン紙に空いている目に見えない小さな穴を自由にとおり抜けることができます。
 ところでこの低分子物質の働きを示す極めて示唆に富んだ実験があります。
 ヌカミソの汁の中には夥しい乳酸菌や酵母菌などがあって、キュウリやナスなどに注ぐとそれらをどんどん発酵させるパワーを持っています。このパワフルな汁を、底をセロファン紙で袋状にくくったガラス管に注ぎ、それを水を張った容器に上部を支えて立てて置きます。
 時間の経過とともに、汁の中に含まれていた低分子物質は浸透圧の関係でセロファン紙の穴を通して水の中に溶け出てしまいます。このような現象を透析というのですが、低分子物質が抜けてしまったヌカミソの汁は、酵母菌や乳酸菌が充分残っているにも関わらず、もはやキュウリやナスを発酵させるパワーは持っていません。酵母菌や乳酸菌の中には酵素が沢山含まれているのですが、酵素というのはそもそも一種の蛋白質なので高分子です。これはセロファン紙の穴は通れない。だから全量残留しています。発酵が酵素のパワーでおこるならば、酵素があるのに何故キュウリやナスは発酵しない
のでしょうか?
 そこで低分子物質が溶けた水を低分子物質が抜けたヌカミソの汁に戻してやると、この液は再びキュウリやナスを立派に発酵させることができるのです。
 ところでビタミンとかミネラルはよく補酵素といわれます。酵素とセットになったとき、その酵素は活性化し、本来の働きをすることができるからです。
 私達の生命は蛋白質の代謝がその流れの主流をなしていますが、その代謝の殆どはなんらかの酵素が触媒の働きをして行われています。酵素は、消化器から吸収され各細胞中に取り込まれたありふれた栄養素を材料に、各細胞の遺伝子情報に従って組み立てられますが、その酵素を活性化させるビタミンやミネラルがセットされないと、本来の働きができません。酵素はどんどん作れてもそれだけでは無力。ビタミンやミネラルと一体化したときにのみ酵素は活性化することができるからです。だからビタミンやミネラルは補酵素と位置付けられるわけです。
 「鐘がなるかよ撞木がなるか、鐘と撞木で音がなる」という都々逸がありますが、鐘がいくらデンとしていてもそれだけでは音はでない。それを突く撞木があればこそ徐夜の鐘の音も響こうというもの。勿論撞木だけでは鐘の音は響きません。酵素と補酵素の関係も似たようなものです。そうしてみると、先の実験から低分子物質もまた補酵素の一つだといえます。
 胃腸が丈夫な人は健康で長生きできるということは良く知られている事実ですが、強い胃酸はこの低分子物質を豊富につくってくれます。長寿村のおばあちゃんの胸などは幾つになってもふっくらでシミひとつないのですが、シミは活性酸素が悪さをした証拠という目からみれば、長寿村のおばあちゃんは発酵食品を充分に摂る上、胃が丈夫で年をとっても強い胃酸がたっぷり出て、食べる物から低分子物質を豊富につくり、これが活性酸素毒を防ぐSODなどの酵素の補酵素となっているということは容易に想像できます。体内でSODなどがどんどん作られても、補酵素た
るミネラルの銅とか亜鉛が摂取不十分であればその働きは活性化されません。

低分子物質には活性酵素毒を消す力が!

 自然食ニュースは現代人の健康を阻害している一番の問題点は有害ミネラルによる微量慢性中毒と様々な原因で頻発する活性酸素毒によるダメージであると考えています。毛髪分析をした人にアメリカのウンデンストック博士がサプリメント摂取のアドバイスをしてくれますが、そのなかにAOAの摂取のアドバイスがあります。これは日本で発明された低分子物質がアメリカに輸出されたものです。低分子物質が活性酸素毒を消してくれるパワーを持っているという事実がアメリカでも高く評価されていることを示しています。
 現代人は四十才を過ぎると血中SODの濃度が低下しはじめる人が多いのです。この年代は、また、胃酸のペーハーがゆるくなり、強い胃酸を持てる人が少なくなる年代でもあります。せめて食物はよく噛み、発酵食品を多くとり、少なくなったSODの働きが補酵素不足でさらに落ちるということがないようにしたいものです。
 実際には低分子物質を充分に摂っていくと活性酸素の毒性でダメージをうけていると思われるトラブルが驚くほどスムーズに正常化するケースが多いのです。これは単にSODだけでなく、体内の酵素のうち低分子を補酵素として必要としていながら、その供給不足のためまともに働けなかった酵素群が一斉に本来の活動を始めたためということが考えられます。体内の代謝は連鎖的に進行しますから、どこかでまともな代謝がストップすると後の工程に次々と悪影響の尾を引きます。
 私たちが食事指針の一つに発酵食品は欠かさず摂る、低分子物質も積極的に摂りましょうと言っているのはそういうことなのです。なお、ヌカミソを適量水に溶かして飲むのも良いというのは、実は日本人が明治維新まで広く行っていた健康法の一つなのです。ザンギリ頭を叩いてみたら文明開化の音がするという時代とともに忘れ去られた発酵食品摂取の有力な方法です。お試しください。
(つづく)