子ども・若者の問題行動

──暴力・いじめ・ 殺傷事件等の発生原因とその解決法──

神戸親和女子大学名誉教授 山口治先生

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 時には相手を自殺に追い込むとか、ナイフをふるって殺してしまうまでの子どもの時代から若者になるまでのいじめ問題が、ニュースで毎日のように報じられていますが、それに関連して学校教育に関しても、様々な角度から問題が指摘されています。  子どもの教育を学校に任せきりにしてきた多くの親の側にも責任があるはずですが、なぜ、かくも学校教育が頼りないのか、どう考え、どうしていったら良いのか、長年教育現場に携わってこられた長老の立場から、本来の学校教育や家庭教育はどうあるべきなのか、食生活や栄養の取り方の話も交・br> ヲて原因と解決法でお考えになっていることをお話しいただければ幸いです。

問題行動の原因

山口 一口ではお答えできない大きな根源的な問題ですね。しかし、今日的にも大事な問題なので小・中・児童福祉施設兼学校・高校・大学を通じて教員として積み重ねてきた五十一年間の教育実践と研究を踏まえて、要点だけになりますがお話しさせていただきたいと思います。
 まず、子どもたちの「問題行動」の原因ですが、次の四つの問題要因が複合的に作用して発生していると考えられます。
 一、社会の問題
 二、家庭の問題
 三、学校の問題
 四、楽天的人間観や自由即善の立場に立つ子育ての教育の問題

一 社会の問題

1 物の豊かな
社会のもたらすもの
 第一の問題点は、現代社会における物質偏重の社会環境が、いろいろな意味で子どもたちの体と心に大きな影響を与えているということです。
 今の日本社会は、衣・食・住のすべてについて物が豊富になり、思うままに物質的欲求を満たし、快楽をむさぼることができる世の中になっています。そのため、苦しみや辛さに耐え、我慢して勉強したり、仕事をしたりしなくても、お金さえあれば便利で快適な生活が容易に手に入ります。
 子どもたちはその影響をまともに受けてきているため、社会生活を営むにあたって必要な自己抑制力や自己規制力を養うことができにくくなっているのです。しかも、彼らの前には彼らの心をとらえるような各種の遊具やインターネットオンラインゲームなどがあふれており、それらを販売するために企業はあの手この手の宣伝活動を行い、無制限に消費欲と享楽欲をあおりたてています。
 多くの子どもはそれらの依存症になり、学校の勉強に打ち込めず、授業中も私語ばかりして勉強が分からなくなり、教師からは出来の悪い困った子どもと見られ、級友からはいじめられ無視されたりして、欲求不満と情緒不安でストレスがたまり、それがいつ爆発するか分からない、むかつく子ども群になっています。
2 マスコミ・商業主義の
もたらすもの
 第二の問題点は、子どもたちの心にひそかに自分も友達のように問題行動をやってみたいという願望をわき起こらせるような興味本位の報道を行うマスコミの姿勢にあると思います。
 ことに男女のセックスや暴力・いじめ・殺傷事件に関するテレビ・映画・漫画雑誌などの出版物による情報の氾濫が、子どもの言動に大きな影響を与え、それらをすぐにまねすることから、彼らの問題行動を誘発するケースが多く発生しているということです。
 現代社会では、マスコミやインターネットと関係なしに生きることはできません。だから、これらとのつきあい方をどのように子どもに教えるかという大人たちの問題ともいえるのです。
3 地域共同体の
もたらしたもの
 第三の問題点は、今日では地方においても都市化の波におおわれて、新・旧住民が入り交じって生活するようになったので、地域住民としての郷土意識や連帯感が希薄となっているということです。
 そのため、新米の親も、自分の子本位の子育てのみに走り、また子ども自身も孤立化している場合が多いのです。
 かつては冠婚葬祭をはじめ多くの行事が地域共同体の行事として行われていたので、他人の子どもであっても他人事とは考えずに、悪い行為はしかり、それをお互いの親が認め合って生活してきました。だから、子どもたちが問題行動を起こしても、それを矯正する力が地域共同体の中にあったのですが、今日では残念ながらそうした力がとても薄れてきたのです。
4 問題行動に対する
社会的意識の弱さ
 第四の問題点は、暴力、いじめ、殺傷事件などを追放しようという社会的意識が弱いということです。
 「自分さえ良ければよい」という一般風潮のために、子どもの問題行動が取りざたされても、他人事としてすませてしまっています。そうした社会のあり方が、子どもの問題行動を育てる温床となっているのです。

二 家庭の問題 1 食生活の乱れ

 家庭における問題の第一は、食生活の乱れがあまりにひどいということです。すなわち、食品添加物や白砂糖、農薬含有などの飲食物の多量の摂取、さらに「おふくろの味」の欠如により、子どもたちの体も心も狂わされているということです。
 まず第一に、人間の心と体をつくる飲食物の間違ったとり方に原因があるということを直視しなければなりません。
 今の高度情報産業社会に住む子どもたちは、金儲け第一の商業主義に振り回され、人工着色料等の食品添加物や農薬含有の飲食物、白砂糖を多量に使った冷たい清涼飲料水や菓子類、白米、白パン、菓子パン、獣肉などを多量に摂取しています。それとともに、ビタミン類やミネラル類含有の飲食物、食物繊維を多く含んだ緑黄色野菜や根菜類、生きた酵素などが不足した食生活をしてきました。
 その結果、体と心に奇妙な症状、例えばH─LD病(Hyperkinesis-Learning Disability)や低血糖症、アレルギー、その他の病気に、本人も気づかぬうちにかかってしまって、暴れん坊で勉強嫌いな多動症児となったり、家庭内暴力や校内暴力に走る子どもとなったり、いじめっ子となったり、いきなり人を殺傷する「いきなり型非行少年」となったりするといった問題行動児が激増してきています。H─LD病とは「手に負えない暴れん坊で勉強嫌いの多動症」のことで、LDは一般に「学習障害」と訳されます。「食育」が人間形成にとって最も大
切なことなのですが、我が国ではその重要さがなかなか理解されないのは、まことに残念至極と言わざるを得ません。
2 生活のリズムの乱れ
 家庭における問題の第二は、人間形成の基礎的教育で最も必要な「しつけ」の欠如と生活のリズムの乱れです。核家族化・少子家族化と共働きの進行により、かつての両親の役割が失われ、家庭の教育的機能が著しく低下することによって、子どもの生活のリズムに乱れが生じています。
3 遊びの欠如
 家庭における問題の第三は、今日の子どもたちに子どもの本性である「遊び」が欠如して、「遊ばない子」「遊べない子」が増加していることです。「遊び」とは何かを知らない、遊びの本来的意味が分かっていない大人が多いということも大きな問題点の一つです。
4 孤独で好き勝手な
生活部屋化した子ども部屋
 家庭における問題の第四は、多くの子どもに個室化(孤独化)した子ども部屋を与えることです。
 問題行動を起こす子どもたちの多くは、親が子ども部屋を与えると勉強するものだと考え、自由放任のまま、子どもの言いなりに与えて安心し、子どもの好き勝手に任せているというところに問題があります。
 今日、数多くの子どもたちの事件に接する時、私はこのこともその中の一つの要因と見ています。もし、私が子ども部屋を与えるとするならば、その部屋をいかに有効に活かすかが家庭教育の大きな課題の一つだから、次のような方法をとろうと思います。
 @部屋には鍵をかけない。
 A親が必要と思った時は、自由に入っても文句は言わない。
 B勉強に疲れたら家族の居間に来てくつろぎ、テレビを視聴したり、みんなと談笑したりする。
 要するに、家族から完全に隔離した部屋を与えないようにすべきだということです。

三 学校の問題 1 教師の人間観・ 教育観の問題

 学校での第一の問題は、出来の悪い子ども、つまり学業不振児は人間としても劣等生である、という教師の人間観・教育観です。
 もう少し具体的に言えば、子どもたちに接する場合、教科の勉強のできる子は人間としても優秀であって、出来の悪い子は人間としても劣等であるという見方のもとに、そのレッテルを張ってはならないということです。
 本来、子どもたちはみんな天使(善)と悪魔(悪)との混血児であるという、恩師で教育哲学(実存哲学的人間学)の碩学の杉谷雅文博士から学んだ「現実的・具体的・全体的人間観に立って教育にあたるべきだ」ということです。
2 学校への不信
 第二の問題は、進学一辺倒の受験体制と偏差値によってのみ子どもたちの優劣を決めるという学校のあり方や教師の姿勢に対して、子どもや親たちに根深い不信感があるということです。
 また生徒指導について、校長・教頭の管理職と一般教職員との間に足並みの乱れがあったり、子どもたちに対する共通理解が不十分で、注意の仕方がまちまちであったり、子どもたちの心情を無視した態度があったりすると、しばしば子どもや親たちは学校や教師の姿勢に対して不信感をもつようになります。
3 学校や教職員の姿勢、
取り組みの問題
 第三は、学校における校長を中心とした教職員の姿勢や教育実践に取り組む態度に問題があるということです。

四 楽天的人間観や 自由即善の立場に立つ 子育ての教育の問題

1 放任教育のもたらすもの
 第一の問題は、「子どもは天使(善)である」との人間観に立って、甘やかす教育か、放任の教育をしてきたということです。
 続発する子どもたちの暴力・いじめ・殺傷事件等の発生原因を考える時、あまりにも楽天的な人間観に立った教育がなされてきたということを見過ごすことはできません。
2 「人間にとっての自由」の
正しい理解の欠如
 第二の問題は、「自由即善」の立場に立って子育ての教育をなし、「自由とは、最高の価値ではなく、中性であって、善ヘの自由と悪への自由がある」ということが忘れられていたということです。
3 「人間の運命と自由との
関係」の正しい指導の欠如
 第三の問題は、人間の運命(被投性=人間は運命的に投げ入れられ既定されている存在)と自由(企投性=運命の負い目を、自分の望む方向に、全力をあげて改め、なおす自由をもつ存在)との関係を子どもたちに正しく教えてこなかったということです。
 以上、四つの大きな問題の視点から「子どもの問題行動──暴力・いじめ・殺傷事件を起こす行動等の発生原因──」について、大切なポイントを項目的に述べてきました。

子どもの問題行動 ──暴力・いじめ・ 殺傷事件等の発生原因に 対する解決法──

 子どもの問題行動、ことに暴力・いじめ・殺傷事件などの発生原因を解消するためには、その発生要因をすべて除去する努力が必要であることはもちろんのことですが、次に家庭教育はどうあるべきなのでしょうか。

1 家庭教育における 両親のあり方 ──家庭の親に望むもの──

 家庭における両親の心すべき重要なポイント10点を述べてみましょう。
1 子どもが
心からくつろげる家庭を…
 まず第一に、親は、子どもにとって家庭が憩いの場であると同時に団らんの場であることを忘れずに、そのような家庭づくりに努めるべきでしょう。
 子どもは家庭における温かい人間関係の中で豊かな人間性を身につけるものです。家庭が心からくつろげる安らぎの場であれば、問題行動の発生率はきわめて低いものとなるでしょう。
2 子どもは善と悪との
混血児である
 子どもを健全に育てるためには、両親が「子どもはつねに天使(善)と悪魔(悪)との混血児である」という具体的・現実的・全体的人間観に立って、優しさと厳しさの両面、つまり「愛しつつ叱り、励ましつつ諭す」教育を適切に行わなければなりません。
 生きている人間は、だれでも「人と仲良くしたい」(集団欲)という心と、「人に負けたくない」「人を征服したい」「他を否定し、相手を抹殺したいという殺し屋の血潮が流れている」(征服欲)という心が、大脳の構造のなかにあることが分かっています(参考文献:大脳生理学者・時実利彦著『人間であること』(岩波新書)。そうなると、「子どもの悪い面は抑えて、善い面は伸ばす」という立場で教育にあたることになります。そのような子育ての教育が、家庭でも学校でも行われなければなりません。そうなると、親、先生、社会の大人達も・br> A子どもを勝手気ままにさせて放っておくことはできないということになります。
 そして、家庭では、体と心をつくる基本となる飲食物を毎日の食事で正しく摂取するようにしていかなければなりませんね。今日では、たいてい、それらが正しく実行されていないことが多いように思います。それらのことを私は、若い頃から食養をしながら考えてきました。『自然食ニュース』に毎号掲載されている「食事指針」はとても良いですね。今日では私もサプリメント(健康補助食品)は上手に使った方が良いと考えて実行しています。
3 親は子どもの鏡である
 両親の日常使っていることばや動作は、そのまま子どもの手本となります。
 本来、父とは、むち、あるいは杖を持って家族を統率し自然や社会から守る「保護者」であり、また家長として家族に対する指導性(リーダーシップ)をもった統率者ということです。
 したがって一家の家計維持のために働くと同時に、子どもが善い行動をした時にはほめ、間違った考え方や行動をとった時には厳しく叱るといった、毅然とした態度のとれる存在なのです。
 また母親は、子どもを温かく抱きしめ、母乳を与えて育てることを通じて、肉体的栄養を与えると同時に、温かい肌と肌とのふれ合い(スキンシップ)を通じて精神的栄養をも与える。そうすることによって子どもの心情も育ち、情緒も安定し、心身ともに健康な子どもが成育していくということです。
 この両者の「厳しさと優しさ」とが、家庭の中で適切に実践されていってこそ、子どもは健全に育成されていくということができるのです。
 以上、「父」・「母」の語源から話しましたが、今日は「父子家庭」・「母子家庭」も増えていますので、この本来的意味をよく理解して、実生活に活用していただきたいですね。
4 正しい食生活の実行と
生活リズムの確立を
 子どもを養育する場合、食生活や生活リズムの乱れが、暴力・いじめ・殺傷事件などの非行の誘発剤となるのだから、そうさせないための第一歩は、なんといっても子どもに正しい食生活をさせ、生活リズムを確立させることです。
 正しい食生活の基本としては、できる限り食品添加物や人工香料の入っていない食べ物や飲み物を摂取するよう心がけることです。また白砂糖を多量に使った食べ物や飲み物、有害な農薬に汚染された食べ物や飲み物などの摂取をやめて、可能な限り無農薬か有機肥料で栽培した穀物類や新鮮な野菜類、根菜類、豆類、さらに汚染されていない新鮮な魚介類や海藻類などを手に入れて料理することです。
 問題行動の発生原因で述べた「H─LD病」は、食品添加物や人工香料、白砂糖などをとり過ぎた結果として起こります。
 子どもが少しでもこのような症状を示したならば、親としては、まず正しい食生活をさせるように努めなければなりません。
 また、暴力・非行・いじめ・殺傷事件を起こす子どもたちには、この食生活を少なくとも二〜三週間続けさせてみて、どのように体と心に変化があるかを観察した上で、よい傾向にあるならば、さらに続行することです。
 知能検査の結果、知能は高いけれど学力が伸びず、集中できず、多動症の子どもであったら、まずH─LD病にかかっているのではないかと考えて、飲食物の正しい摂取の仕方を指導することです。
 さらに心がけたいことは、感謝の心で食事を楽しくいただくとともに、きちんとしたマナーで食べるよう指導することです。もう一つ大事なことは、よく噛んで食べるようにすることです。
 正しい食生活とともに大切な生活のリズムの確立については、われわれが子どもだった頃の生活リズムを参考に、見直しを検討したいものです。
 朝の決まった時刻に起床し、朝のあいさつを交わし、洗面、歯磨きをしたのち家事を手伝い、朝食をとり、排便などをしてから登校する。日中は太陽の下で活動し、帰宅後は勉強と遊びと家事労働をする。定時の夕食の後は、居間で家族との団らんをもち、定まった時間が来たら寝床につく。そして睡眠を十分にとり、翌朝ふたたびさわやかに起床する。
 私たちは家庭においてこうした生活をしつけられ、それを当然のこととして育ちました。子どもたちの生活のリズムの乱れが大きな問題となっている今日こそ、いちど見直すべき、価値あるものといえましょう。
5 子どもの成長・発達に
応じた、適切にして
的確な指導を
 まず青年男女が愛と健康とを基盤として結婚し家庭をもち、やがて「心から祝福される妊娠」をしたら、まず第一に胎教に心がけます。その後、誕生した新生児には、何よりも母乳、特に初乳を与え、母乳だけ最低二年間は与え続け飲ませます。
 赤ん坊時代は、母乳を与えることと肌と肌とのふれ合う保育を行い、情緒の安定した子どもに育てていくことを考えましょう。
 三歳から五歳頃の幼児期には、自分のことは自分でする、例えば洗面や歯磨き、衣服の着脱、排尿・排便、食事などを自分でするという、自立性を育てつつ保育をします。
 六歳から十五歳頃の小・中学生の時は、友達との交流を増やし、学習と遊びによるタテとヨコとの人間関係を通じて社会的ルールを学びとらせ、社会生活への適応力を身につけさせます。
 十六歳頃から二十二歳頃までの期間は、心身ともに成熟していく時期であり、自己を見つめ、反省し、自己の不完全さに気づき、自分が何に向いているかなど、自己の特性を知るべき時期です。したがって、いろいろな機会を通じて思索し、先人たちの諸体験や思想を学びとり、豊かな、広い人生の生き方を探りつつ、自分の将来の生き方を把握するように導いていくことです。
 こうした子どもの一人ひとりの「成長」・「発達」の状況に応じて、その状況に最もふさわしい教育を施していくことが、何より大切だと思います。
6 適切なしつけ
 子どもが大人になってから行為の善悪の区別と選択ができるように、善悪の区別や物事のけじめのある生活を幼少時代からしっかりとしつけなければなりません。そして、それが常に一貫した姿勢のもとになされることが望ましいわけです。
7 成長・発達に応じた
家事労働を
 子どもには家族の一員として役割を与え、子どもの成長・発達に応じた家事労働をさせます。大いに身体、特に手と足を使い、ともに汗を流すような生活体験を味わわせ、働くことの辛さと喜びの価値を知らせ、親子のふれ合いをより深くするよう努めることも大切です。
8 思いやりのある心の教育
 親と子との共汗共働、共学共遊、共楽共想の生活を通して、相手の身になり、相手の立場に立って考えるような思いやりの心を育てることです。
9 テレビ視聴の際は
番組選定と時間の設定を
 家庭におけるテレビ視聴については、できる限り親子の話し合いを通して、見る番組を選定し、視聴時間を設定し、テレビが子どもの人格形成において役立つものとなるように配慮すべきです。
10 子どもの評価を正しく
 最後に、近年特に注意すべきこととして、学校における学業成績だけで子どもの全人格的な価値を決めてしまってはなりません。すなわち、彼らの個性・能力・適性に合った道を見い出し、彼らが社会的自己実現の可能性に向かって励むように、彼らの特性を生かして伸ばしてやるようにすることが大事です。
 そのためには世界の各分野における学問的価値(真)・道徳的価値(善)・芸術的価値(美)・宗教的価値(聖)・生命的価値(健)・経済的価値(富)などについて正しい知識を得、その中から自分の個性・能力・適性に合った道を見い出し、それに全力投球する姿勢を身につけさせなければなりません。そして、自分にとって何が一番価値があるかを究明し、その最も価値があると思うものに、限りある体力と時間を集中して、それ以外の欲望を抑えることの意味も知らせてやらなければなりません。
 頭でっかちの断片的知識のみを詰め込んだ、いわば偏った人間に育てるのではなく、子ども一人ひとりの評価を正しく行うことによって、知と情・意・体とが調和的に統一した人間に育つよう考えてやりましょう。

心豊かに・たくましく・ よく生きる子ども育成への 十段階

 この十段階について、私が考案した、第一段階の「人間としての基礎・土台づくり」から、第十段階の「人格の完成」までの教育を図解してみます。
@ 第一段階…正食正養(正しい飲食物の摂取)
A 第二段階…生活リズムの確立
B 第三段階…情緒の安定
C 第四段階…自分のことは自分でする(自立性・独立性を身につけさせること)
D 第五段階…友人との遊び・運動・学習・労働(社会適応性)
E 第六段階…よき仲間づくり(よき人間関係・社会性の形成)
F 第七段階…体と心がすこやか
G 第八段階…自己完成への勉強や仕事に打ち込む
H 第九段階…社会的自己実現(生きがいある人生)
I 第十段階…人格の完成へ
 以上、第一段階からの基盤を忘れず、第十段階へ進むよう、日々、努力したいものです。