育毛・美肌・更年期障害・メタボ予防等々

抗老化の鍵「IGF−1」を増やす生活習慣!!

名古屋Kクリニック院長 岡嶋研二先生

名古屋Kクリニック院長岡嶋研二先生血液学の研究からわかった ━━中でもすごい「唐辛子(カプサイシン)」と大豆食品(イソフラボン)」の組み合わせ━━

「IGF─1」を増やす画期的な育毛・アンチエイジング法 IGF─1(インスリン様成長因子─1)はその名の通り、心身の成長に欠くことのできない物質として、思春期をピークに分泌する成長ホルモンの主要な作用を担っているといわれます。
 IGF─1は成長に必要なだけではなく、細胞の新陳代謝を活発にし、自然治癒力や免疫力を高め、病気や老化予防に重要な働きをし、アンチエイジングの鍵を握る物質としても知られています。
 しかし、これまでIGF─1は成長ホルモンを介してでしか増えないと考えられており、IGF─1を育毛などのアンチエイジング治療に安全に用いる方法は見つかっていませんでした。
 岡嶋研二先生は20年にわたる血液凝固学の研究過程で偶然、「知覚神経を刺激するとIGF─1が増える」ことを世界で初めて発見。そこからさらに、知覚神経を刺激してIGF─1を増やす食品成分の研究をスタート、「カプサイシンとイソフラボン」という最強の組み合わせを見出しました。
 これらの研究成果により、食生活を中心に生活習慣によって安全にIGF─1を増やすことで、育毛をはじめ生活習慣病の予防や改善、さらに美容面でのアンチエイジング治療への応用が可能になったのです。
 岡嶋先生は現在「毛髪内科」を立ち上げ、IGF─1を増やす内科的アプローチによる薄毛治療で、薄毛だけではなく、メタボリックシンドロームや更年期障害などさまざまな生活習慣病や老化現象の改善に、大きな成果をあげられています。

 「IGF─1」は   育毛をはじめ   アンチエイジングの鍵
  成長因子「IGF─1」と         成長ホルモン

──岡嶋先生は、アンチエイジング(抗老化)の鍵ともなる物質「IGF─1」を、体内で安全に増やす方法を世界で初めて発見され、育毛をはじめ治療に応用されて大きな成果をあげておられます。すなわち、唐辛子(カプサイシン)と豆腐(イソフラボン)というごく身近な食べ物で、アンチエイジング効果が得られるというのは大変な朗報ですね。
岡嶋 IGF─1に、健康維持や老化に伴う症状を改善する多くの重要な作用があることは、以前からわかっていました(図1)。しかし、IGF─1は成長ホルモンを介して増えると考えられており、IGF─1を体内で安全に増やす方法は見つかっていなかったのです。
 IGF─1を育毛などアンチエイジング治療に応用する試みは、成長ホルモンの注射で試みられましたが、さまざまな副作用が出るなど、普及はしませんでした。
 私たちは、約20年間にわたる血液凝固学の研究過程でIGF─1を安全に増やす方法、すなわち“知覚神経を刺激すると体内のIGF─1が増加する”ことを世界で初めて見出したのです。
 そこから、知覚神経を刺激する食品成分の研究をスタートし、「カプサイシン」と「イソフラボン」の併用摂取によってIGF─1が体内で安定的に増えることを見出し、それを応用した治療で育毛や美肌、メタボの改善等の臨床成果をあげています。
──昨今、成長ホルモンのアンチエイジング作用が注目され、成長ホルモンの出る夜10時から深夜2時は“睡眠のゴールデンタイム”などと推奨されたりしていますが、成長ホルモンのアンチエイジング作用はIGF─1によると考えて良いのですか。
岡嶋 成長ホルモンのほとんどの作用はIGF─1が発現させていると考えられています。
 IGF─1(インスリン様成長因子─1)はその名の通り、成長を促す因子で、全身の細胞で作られます。思春期になると心身が急に成長し、免疫力や治癒力が高まってくるのは、成長ホルモンの分泌が増え、それによってIGF─1が増えるからです。
 しかし、13〜16歳の思春期をピークに成長ホルモンの分泌は少なくなり、それに伴ってIGF─1の量も減少し、50歳を過ぎるとかなり減ってしまいます(図2)。
 中高年になってくると、代謝や免疫力の低下、ホルモンバランスの崩れなどから、メタボに代表されるいろいろな生活習慣病、がん、認知症、うつ、更年期障害、骨粗鬆症、薄毛、筋肉や皮膚の衰え──等々、心身にさまざまな不調、異常、衰えが起きてきます。これら全ては基本的には「老化」によるものであり、老化現象の多くは、加齢によるIGF─1の減少が深く関わっています(図1参照)。
 「老化は仕方ない」と思われがちですが、年齢よりはるかに若く元気な人もいれば、年齢以上に老けて健康度の低い人もいます。この差は、体内のIGF─1量の差と考えられます。IGF─1量は、生まれつきの体質だけではなく、私たちの研究から、食事など生活習慣が大きく影響し、その違いによって体内のIGF─1量に大きな差が出てきて、健康度や見た目の若さにも反映されるのです。

 知覚神経を刺激すると   「IGF─1」が増える ━━カプサイシンと   イソフラボンの組み合わせ

岡嶋 研究の結果、IGF─1量を増やすのに最も効果的なのは、「唐辛子(カプサイシン)と大豆(イソフラボン)」の組み合わせであることがわかりました。
 知覚神経を刺激する代表的な食物成分が唐辛子に含まれるカプサイシンです。唐辛子を食べると口の中が熱くなったり、青唐辛子など非常に辛いものでは痛くなったりするのは、知覚神経を刺激するからですね。
 知覚神経は、痛みや熱さなどの刺激を脳に伝える末梢神経で、全身に張り巡らされています。私たちが感じることができない内臓や血管に与えられる刺激情報も、それぞれの知覚神経によって感知されて脳に届けられます。
 さて、血管内で血液が固まらずに循環するのはアンチトロンビンという凝固阻止因子があるからです。私たちは、このアンチトロンビンの作用が、従来考えられていた直接血管に作用して起こるのではなく、血管周囲の知覚神経への刺激を介してIGF─1を増やし、その結果、血液循環を促進していたことを突き止めたのです。
 カプサイシンなどの刺激を受けた知覚神経が、周囲の未分化細胞にIGF─1を作らせるのは直接的には、知覚神経の末端から放出される「CGRP」(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質です(図3)。
 そのため、カプサイシンなどで知覚神経を刺激するばかりですと、CGRPは放出され続けてしまうので、結果的に不足してきます。肝心のCGRPが知覚神経の中で不足してしまえば、いくら知覚神経を刺激してもCGRPが放出されることはなく、従ってIGF─1も増えなくなります。
 カプサイシンで知覚神経を刺激するのと同時に、CGRPを増やす成分を同時に摂取しなければ、安定的にIGF─1を増やすことはできないのです。
 CGRPを増やす物質は今のところ女性ホルモンのエストロゲン、そして食品成分ではイソフラボンしか発見されていません。知覚神経を直接刺激する食品だけでは十分ではなく、イソフラボンを同時に摂取することで、育毛効果やその他のアンチエイジング効果が期待できるのです。
 ちなみに、イソフラボンの多様な健康効果は、実はイソフラボンの摂取によって増加したIGF─1による効果の可能性が考えられます。
 女性は50歳前後でエストロゲンの産生が低下すると更年期障害が起きてきますが、それはIGF─1の減少によると考えられます。更年期障害や女性特有の老化現象に対しては、直接エストロゲンを投与するよりも、毎日大豆からイソフラボンを摂ってCGRPを増やしてIGF─1を増やす方がはるかに安全です。日本人の乳がん罹患率が低いのも、味噌汁をはじめ多くの大豆製品を摂ることによると考えられています。

IGF─1を増やし   健康と若さを取り戻す          生活習慣
 生活習慣で    知覚神経を剌激し     IGF─1を増やす

岡嶋 IGF─1の量をコントロールする代表的なものは成長ホルモンですが、これまで述べたように、成長ホルモンは加齢につれて減少します。
 私たちは、血液学の研究から、知覚神経が密に分布する胃や皮膚での温痛覚の刺激は、知覚神経を刺激してIGF─1を増やすことを見出しました。
 食事を中心に、知覚神経を適度に刺激する生活習慣は、健康と若さを維持する鍵ともなるのです。

 「豆腐トウガラシ」で   育毛・美肌から メタボやうつの予防・改善も ━━1日豆腐半丁・唐辛子小2

岡嶋 IGF─1の重要な作用の一つが、毛母細胞の増殖の促進による「育毛・発毛」効果です。年をとると誰でも、髪が減ってきたり、肌に張りがなくなり、タルミやシワができたりしますが、それは年齢とともに体内のIGF─1が減少するからです。
 動物実験で効果を確認後、モニターによる育毛効果を見てみました。1日あたりカプサイシン6mg(一味唐辛子で小さじ2杯)、イソフラボン75mg(豆腐半丁。約200g)の摂取で約65%の人に効果が現れました(表1)。効果の発現は、@まず抜け毛が減り、A髪の質がよくなり、B新しい毛が生えてくる──という順番です。
 モニターの結果から、カプサイシンとイソフラボンで安全にIGF─1を効率よく毛根で増やし、毛母細胞の増殖を促進するこの方法は、男女の区別なく、また、男性型脱毛症でも円形脱毛症でも有効と考えられます。
 また、髪は皮膚の変形したものですから、イソフラボンとカプサイシンの摂取は美肌や肌の衰えにも有効です。IGF─1が増えると、皮膚の血流量が増え、皮脂やコラーゲンも増えてくるからです。
 薄毛で悩んでいる人は、肥満で血圧が高い人も少なくなく、実際、カプサイシンとイソフラボンの摂取で高血圧が改善した方、また、薄毛とともに、うつ病の改善もした方もおります(図4・5)。動物実験では、脳の神経細胞の再生も認められました。
 逆に、知覚神経への刺激が足りない人は、年齢とともにIGF─1の不足から薄毛への道をたどりやすく、またメタボリックシンドロームも起こしやすくなると考えられます。
 過食でも、IGF─1が増えにくくなり、高血圧、高血糖、動脈硬化などのメタボが起こりやすくなりますが、カプサイシンなどの胃の知覚神経への刺激物質は、過食を抑える働きもあります。薄毛とともに心臓疾患なども増えてくると考えられます。
 1日トータルで、カプサイシン
6mg(一味唐辛子で小さじ2杯)、イソフラボン75mg(豆腐半丁。200g)という量は、1日3食の中で十分摂取可能な量です(表2・3参照)。
 「麻婆豆腐」ならそれだけで必要量が摂れそうですし、納豆や奴豆腐、豆腐の味噌汁にちょっとずつ一味唐辛子をふりかければ良いわけです。「マイ唐辛子」を携帯し、外食にも大豆製品にはもちろん、大豆製品がなくても料理に少量加えると体内のIGF─1は確実に増えるはずです。なお、豆腐や唐辛子が苦手という人は、サプリメントや他の食材でも有効です。
 なお、 胃炎や胃潰瘍に「刺激物は良くない」といわれますが、シンガポールの研究者は、唐辛子の治療効果を重視し、36人の健常者に解熱・鎮痛薬(アスピリン)を飲んでもらって人為的に胃炎状態にし、唐辛子の摂取効果を見たところ、内視鏡検査の結果、唐辛子摂取群の方が胃炎が改善していました。炎症を起こしていた胃粘膜でIGF─1が増加し、治癒力がアップしたためと思われます。
 空腹時に唐辛子を多く摂ると、お腹が痛くなったりすることはあります。胃腸の弱い人などは空腹時は避けて摂るとよいでしょう。

 和食は、最高の育毛・    アンチエイジング食

岡嶋 私が見つけた育毛メカニズムは、皮膚の知覚神経を直接刺激する以外にも、知覚神経を刺激する食物成分で胃や腸の知覚神経を刺激すると、その刺激が脳幹の自律神経中枢に作用して、毛根を含めた全身の組織に伝わり、IGF─1を増やすというものです。
 基本食は、唐辛子(カプサイシン)とイソフラボン(大豆食品)ですが、知覚神経刺激作用を持つ食べ物は他にもあります。IGF─1効果とともに健康効果を高めるには、多種類の知覚神経を刺激する食材を食べることです。いろいろな栄養素をバランス良くとる上からもすすめられます。そういう意味で、和食は最高の育毛食であり、アンチエイジング食といえます(表4)。
〈玄米〉
 お米は無精白の玄米。米糠成分のγ─オリザノール、ビタミンB1、ギャバのすべてが、知覚神経刺激作用を持っていました。
 私自身は玄米がいくら健康に良いといわれても食べようとは思いませんでしたが、データを見て、これは食べないわけにはいかないと実感し、今では玄米党です。
〈大豆食品・発酵食品〉
 味噌・納豆・豆腐など多彩な大豆製品は、IGF─1産生に必須のイソフラボン源であり、中でも糖が外れたアグリコン型イソフラボンはカプサイシンと同様、知覚神経を直接刺激する作用があります。大豆麹で長期に熟成させた八丁味噌は、このアグリコン型イソフラボンの宝庫です。
 味噌や納豆、漬物、ヨーグルトなど、発酵食品もIGF─1を増やします。キムチ納豆などはカプサイシン、イソフラボン、乳酸発酵の3つのパワーで育毛効果が期待できます。
〈魚介・海藻〉
 魚介類では、サケを筆頭にエビやカニにも含まれる、抗酸化作用の強い赤色色素のアスタキサンチンは、マウスの実験でも、人でも、育毛・増毛が認められました。
 イカやタコに多いタウリンも、IGF─1を増やします。
 食べ物から摂取して消化されたコラーゲンやヒアルロン酸も知覚神経刺激作用があり、関節などのコラーゲンを増やしてくれます。コラーゲンがたっぷりのナマコやフカヒレ、魚のアラなどは関節症にも効果が期待できます。
 海藻類は、髪に良いといわれますが、そのメカニズムは不明でした。実は昆布やワカメに含まれるフコイダンは知覚神経を刺激します。海苔が消化されてできる海苔ペプチドにも、IGF─1を増やす作用があります。
〈植物性生理活性物質〉
 ゴボウなどのイヌリンなどの難消化性食物繊維、オリーブ油のオレイン酸、赤ワイン(葡萄の果皮)のレスベラトロール、わさびや生姜やニンニクなどの辛み成分や揮発成分、茶のカテキン、カカオポリフェノール、コーヒーのクロロゲン酸など、抗酸化作用の強いこれら植物性生理活性物質(ファイトケミカル)には、知覚神経を刺激してIGF─1を増やす作用が認められました。
 なお、オリーブ油と魚介類、赤ワインがつきものの地中海料理も、和食同様、知覚神経刺激物質を多く摂取できます。

 温熱・運動など、その他の  知覚神経を刺激する生活習慣

岡嶋 知覚神経は全身に分布し、中でも胃や皮膚など外界と接した部位に密に分布しています。食べ物の他にも、適度な温熱や痛みの刺激は皮膚の知覚神経を刺激して、IGF─1を増やします(表5)。
 やや熱めの温泉(風呂)やサウナによる健康効果や、鍼灸治療の効果も、IGF─1の増加が深く関連しているはずです。
 心の刺激となる適度なストレスや、体の刺激となる適度な運動もとても大切です。生き甲斐や張り合いを持って、かつ、生活の中で歩く、掃除をする、ちょっとストレッチをするという機会を増やすことです。
 気圧、重力、光(太陽光の中でも特に青色光)の刺激もIGF─1を増やします。加圧トレーニングや高気圧療法、海洋深層水の飲用や青色LEDの照射、低周波、磁力などもIGF─1を増やし、育毛や美肌効果を高めます。
 「刺激がなくなれば死に向かう」というのは生命の原則です。家に閉じこもりテレビ相手の生活では老け込むのは当たり前です。
 IGF─1の産生を妨げる生活習慣はこの他にも、過剰な塩分・甘い物の摂取、冷えた飲食物、飽食・偏食・高カロリー食、唾液の分泌が少ない早食い、痛み止めやかゆみ止めなどの薬剤の長期服用があります(表6)。
 IGF─1を増やす生活習慣を身につけることは、たとえいくつになって始めても、その人なりの若さと健康を維持し、取り戻すことができると思います。意欲と希望をもって、取り組んでいただきたいと思います。