シンプルレッスンで心もからだも美しく

気功法を、もっとやさしく効果的に……

心とからだの研究会 ホリスティックヘルススクール「じゆう工房」代表 外山美恵子先生

外山美恵子先生のプロフィール
 「気功は、心もからだも美しく元気に生きていくための、自分磨きのレッスン≠ナす」といわれる外山美恵子先生は、実年齢にはとても見えない若さと美しさで、それを証明されています。
 外山先生はスピリチュアルな意識の成長をめざして、ヨーガ、食養、鍼灸、気功と、広く東洋の医学、哲学を学び、現在は、ボディ、マインド、スピリットが元気になる気功教室「じゆう工房」を中心に、幅広く活躍されています。
 今年3月には、学研よりDVD-BOOK『毎日の気功シンプルレッスン』を出され、難しい内容や専門用語をできるだけやさしい言葉に置き換え、動作もシンプルに工夫した気功「シンプルレッスン」の普及に努められています。
外山美恵子先生
1941年、神奈川県生まれ。
東京医療専門学校教員養成課程卒業。鍼灸師、柔道整復師、指圧・あん摩・マッサージ師、鍼灸教員資格取得。
NPO健身気功協会常任理事。日本養生学会(旧大学体育養生学研究会)理事。NPO日本ホリスティック医学協会会員。NPO気功協会会員。
北京中医薬大学で学んだ保健気功・医療気功をベースに、日本人に合った心理療法・運動療法・免疫療法として内気功を中心に臨床に応用、成果を上げている。
現在、神奈川県立藤沢高校、東京療術学院等、教育機関で気功講師を務める。テレビ・雑誌等でも紹介され、NHKプロモーション文化事業部講演講師など多忙な活動をしている。
(『毎日の気功シンプルレッスン』
学研刊より)

ヨーガから食養、 鍼灸、気功までの道のり
〜治療より予防が大切〜

──先生は30年近くヨーガを指導され、現在はインド生まれのヨーガと、中国育ちの気功の良いところを取り入れ、日本人に合った方法で、誰にでも簡単にでき、しかも高い効果を得られる気功法「シンプルレッスン」を編み出され、今年3月にはそのご本(10頁参照)も出版されました。自然食ニュースでもその普及にご協力できればということで、今回のインタビューとなりました。
外山 ヨーガも、食養も、鍼灸も、気功も、先手必勝、治療より予防、病む前に未病を治すところから、スタートしました。
 私はもともと体が弱く、小学校低学年までは小児喘息で、当時は安静重視でしたから、運動は苦手、運動会はいつもビリでした。成人になっても、冷え症、肩こり、腰痛、下痢と便秘を繰り返すなど、いわゆる自律神経失調症的な症状に悩まされ続けてきたのですが、どこに行っても治らない。
 1960年代後半に、日本でヨーガが流行り始め、ちょうどその頃私もヨーガに出合い、ヨーガを通して、「治してもらおうと思っているから、治らないのだ」と気付いたんです。
 それを契機に、食養の勉強も始め、当時は厳格な玄米菜食を守り、いつどこに行くにも玄米のおにぎりと、携帯ポットにはハトムギ、クコ、ハブ、ヨモギなど数種類の薬草を混ぜた薬草茶を入れて持ち歩いていました。
  当時職場では、大型コンピュータが導入され始め、周りには腱鞘炎や目を悪くしたり、冷房病などに苦しむ人が増え、私も30代を過ぎて喘息を再発したり、下痢と便秘を繰り返すなど、このままでは、機械に使われたまま使い捨てになってしまう。機械ではなく、人間相手の仕事がしたいと強く思うようになり、一念発起で会社を辞め、鍼灸学校に入ったんです。
 鍼灸学校に入ったのは、鍼灸師や柔道整復師になるのが目的ではなく、50歳を過ぎたら、自分と一緒に歳をとる人たちのお役に立ちたい。具体的には、生涯学習の場で、健康に生きていくにはどうしたら良いかを皆さんと一緒にやっていきたい、そのために、系統立てて東洋医学を修めたいと思ったからです。
 本科の3年間で指圧、按摩、マッサージ、鍼灸を学び、さらに柔道整復科に進み、柔道整復師、いわゆる骨接ぎの免許と柔道の黒帯を取得、その後も教員養成科を2年と、計7年間、43歳からスタートし、念願の50歳になるまで学び続けました。
 そして、それまで少しずつやってきた生きがいある人生の研究・実践の場として、ヨーガや食養を中心とした「心とからだの研究会」の活動に力を入れるようになりました。そこでは自分で自分を治すことを基本に、鍼灸などはヨーガや食養などでは治らない人の杖として補助的に用いて、かなりの成果を上げることができました。
 「心とからだの研究会」は今年で26年目になり、そして10年前には、気功を中心とした教室「じゆう工房」を立ち上げました。
 気功は、まだ日本に気功という言葉が入ってくる以前に、中国体育研究会で太極拳がブームになる前から太極拳や八段錦をヨーガと平行にしておりまして、本格的に気功法を始めたのは1988年頃です。
 北京中医薬大学で学んだ保健気功、医療気功の良いところを取り入れ、それをベースに、日本人に合った気功法を探求し、その結果が、「シンプルレッスン」の気功メニューとして結実したわけです。
 ヨーガと気功の両方を体験したことで、ヨーガをやると気功の良さが、気功をやるとヨーガの良さが見えてきます。気功は「動」の中で「静」を見出し、ヨーガは「静」の中で「動」を感じ、さらに「静」を深めるものといえます。
 現在「じゆう工房」では、主にヨーガはほぐしに使い、ヨーガで気の流れやすい体にしてから、気功法を行っています。

気功とは 「気」は生命エネルギー
全てが、「気」でできている

──「気功とは何か」というお話の前に、まず「気」とは何でしょうか。
外山 「気」はこの宇宙万物の構成要素といわれています。中国の医学や哲学では、この宇宙に存在する全てのものは「気」でできている、ということになっています。森羅万象すべてということですから事象も含まれます。
 エレメントであると同時に、生命エネルギーであるともいえます。形がなく目には見えないのですが働きがあるものです。
 光のように粒子であり波動であって、伝わっていく性質があります。科学ではまだ解明されていないのですが、「気」は何らかの情報を持ったエネルギーだということになっています。
 私たちのからだの60兆個の細胞も「気」でできており、細胞の中のミトコンドリアもDNAも、皆「気」でできていて、情報のやり取りをしているのです。筋肉も骨も神経も内臓も、脳も心も、心の作用も、当然、血液もリンパ液も、白血球も赤血球も皆、「気」でできているということになります。
 さらにいえば、例えば、私たちが今こうして話していることも「気」で成り立っています。このテーブルも、この水の入っているグラスも、グラスの中の水も「気」でできているのです。
 実はこの時空とか、虚空といわれるもの、つまりこの時間も空間も「気」でできていて、無限に気が満ちています。今、流れている音楽も、コーヒーの香りも、皆「気」でできているのです。太陽も月も、窓から差し込む光も、光の影も「気」でできています。そしてそれらは全て、「陰の気」と「陽の気」の「二気」に分類されています。

「功」は積み重ね

──では、「功」とは何ですか。
外山 「功」は積み重ねる、時間的な積み重ねを表しています。
 人体における生命エネルギーとしての「気」の働きは、外部環境がどうであれ、ストレスがどんな形で存在しても、そのストレスに抗して内部環境を調える力、パワーのような働きということができます。
 「功」とは、そこにアプローチする時間の積み重ねや、熟達の度合いというような意味合いで、「功」を積めば、それだけ自然治癒力や免疫力が上がり、さわやかで元気になれます。

「気功」とは

──それでは、いよいよ「気功」とは何かということですが。
外山 「気功」とは、陰陽二気のバランスを取る方法といわれ、そのことを「気を調える」といいます。気を調える時間を積み重ねていくことが「気功」で、その方法が「気功法」なのです。
 気を調える方法には、気功法の他に、薬膳や鍼灸、指圧・あんま・マッサージ、それに風水などいろいろあります。自分の内部環境と外部環境の気が調えば、誰でも自然に元気になれるのです。
 気功の基礎理論には古代中国の哲学や中国医学の考えがその中心になっていますので、先ほど少し触れました「陰陽論」の他に、「五行論」であるとか、「天人合一説」などがあります。
 鍼灸や漢方、薬膳の考え方が中心になる場合もあり、臨床的には、「経穴・経絡理論」や「臓腑弁証論」など、さまざまな理論を活用します。
 いずれにしても、気を調えるわけですが、具体的には気の流れる道である経絡や、気の出入りする場所であるツボ(経穴)を使って臓腑の気を調えていきます(図)。

気功の歴史的流れと、分類

外山 気功を歴史的に見ると、大きく5つの潮流、@仏教の気功、A儒教の気功、B道教の気功、C医道の気功、D武術の気功に分けられます。
 仏教の気功は悟りを開く、儒教の気功はこの世をどうして治めていくか、医道の気功は病気をしない、病気を治すなど、それぞれ目的が違い、それぞれ目的を達成するためにどうしたら良いかを探求していったところに、全てに共通項がありました。それをやっているとそれぞれの道が開けるというのが、今までの歴史的な気功の流れです。
 その中で、特に医療の気功では、内気功と外気功に分類できます。内気功は自分で自分の気をコントロールする方法で、形をとる動功、瞑想法などによる静功があります。外気功は、気功師が自ら発する気を相手の身体に巡らせることで、体のエネルギーの流れを改善したり、病気治しなどにも使います。外気功は中国では医療として認められ、気功師は国家資格が必要とされます。
 また、別の分類では、硬気功と軟気功に分けられます。硬気功は武術の気功で、武術などの鍛錬や訓練に用いられます。それ以外は全部軟気功です。

「気」は血液から造られる
「気は血の師、血は気の母」

外山 中医学では「気血」という言葉をよく使います。気と血を分けて考える人も多いのですが、実は「血」も「気」でできていますので、これは一体のようなものです。
 気が動けば血が動き、血液循環が良くなれば全ての病に有効に働くことになります。そのことを、中医学では「気は血の帥、血は気の母」という言葉で表現しています。「気」は血液から造られるので「気の母」なのですが、一方で、「気」は血液を統帥するエネルギーということなのです。
 漢方や薬膳などの理論を駆使して、日常的に「気・血・水」の状態を調えておくことは気功を行なっていく上でも大切なことです。
 「気・血・水」の中で、気虚、気滞などと呼ばれる、気の過不足や気の流れが悪くなった状態を改善する食べ物や、血虚、血滞(血)など血液の状態を改善する食べ物や、水滞など水液の流れを改善する食べ物などを活用することも、気を調える重要な要素だからです(表1)。

日本人にあった、 簡単で効果的な気功法
「シンプルレッスン」 元気な若者からお年寄りまで

──先生の編み出されたシンプルレッスンでは、難しい内容や専門用語をできるだけやさしい言葉に置き換え、動作もシンプルにし、元気な若者から、生活習慣病が心配な中高年、お年寄りまで、誰でも簡単に「自分磨きのレッスン」ができるように工夫されているそうですね。
外山 はい。その通りです。
 シンプルレッスンを朝・昼・晩、毎日の暮らしの中で修練し続けていけば、自ずと「ボディ・マインド・スピリット」が磨かれ、この宇宙に遍満する「気」という創造的なエネルギーをいただけるようになり、上達すればするほど、毎日を創造的に楽しく生きられるようになります。

基本は調身・調息・調心

外山 気功の基本は三調といって調身・調息・調心です。
 最初のレッスンを紹介してみましょう。
〈レッスン1〉
 姿勢を調える立ち方
外山 まず、正しい立ち方から良い気が生まれます(写真1)。ただ両足を揃えて自然に立つだけですが、これを「無極で立つ」などといいます。最初は、静かにこの姿で立ち、そのとき、すがすがしい気持ちで立つことが大切です。気功のエッセンスがギュッと濃縮して詰まっている、最も大切な最初のレッスンです。
〈レッスン2〉
呼吸法について
外山 そして呼吸をそえていきます。
 呼吸は、心の在りようで変化をします。怒っているとき、泣いているとき、笑っているときでは、全く呼吸が違います。逆に、呼吸を変化させると、怒ったり、泣いたりする必要もなくなって、笑ってことを収める力(気=智慧)が、身に付いていきます。呼吸法はこんな気の力(智慧)を開発する大切なレッスンです。
 また、呼吸法は、心と体の両面からアプローチできる優れた健康法でもあります。五臓の中では唯一、呼吸器官の肺だけが、特殊な二重支配になっています。他の臓器と同じように自律的に働く一方で、意識によってもコントロールできるようになっています。
 呼吸と呼吸法の違いは、この二重支配のしくみを使って、スピリッツ(いのち)を磨く作用にまで、自らを高めることができるか否かの違いです。
 そして、「元気をつくる神経」といわれるセロトニン神経は、呼吸のリズムで活性化します。シンプルレッスンの気功は全て、セロトニン神経を活性化しています。
〈レッスン3〉
イメージ法を大切に
いつも微笑んでいる
イメージを!!
外山 意念によるイメージ法も、気功ですね。いつも微笑んでいるイメージで! 「笑う気功」は、元気になるとっておきのレッスンです(写真2)。

『毎日の気功 シンプルレッスン』が めざすもの

──確かにとてもシンプルで、難しく聞こえる気功も取り組みやすいように思えてきました。
外山 「こんなにシンプルなレッスンで気功の効果が上がるのですか?」とよく聞かれるほど簡単ですが、簡単だからこそよく効くのです(表2)。
 肩こり、腰痛、膝痛、冷え性、さまざまな病名の付いた病でお困りの方は、どうぞ試してみて下さい。
 総合的なサプリメントを私はよく「飲む気功」とか「食べる気功」といっています。実は微量栄養素も「気」でできています。微量栄養素のみならず、全ての栄養素も「気」でできているということを理解して、感謝していただけば、食べものも、サプリメントも体にとってさらに良いものになってくれるはずです。
 必要な人に、必要に応じて本当に良いものを紹介できるよう学んでおくことも気功研究家の役割だと思っています。大げさにいえば、人類の幸せのために、古人の智恵と現代の科学が統合され全人的に働きかける健康法としての「シンプルレッスンの活動の輪」を拡げていきたいと思います。