「微量放射線ホルミシス」とは?

これから始まる健康づくりへの応用

ホロス松戸クリニック村上 信行院長

マイナスイオン・遠赤外線に次いで 微量放射線ホルミシスに人気が…

 根強く人気のあるラドン(ラジウム)温泉の良さは、微量放射線による、遺伝子の修復や活性化、また、フリーラジカルの消去パワーにあったということが次第に明らかになってきました。
 こういう微量放射線パワーを出す鉱石は、その多くが同時に、マイナスイオンや遠赤外線を豊富に出しています。従って、従来からのマイナスイオンブームや遠赤外線ブームの延長線上の、しかもそれをはるかにしのぐ大人気になる可能性が高いと予測されています。
 自然食ニュース社のe─健康ショップの人気商品、マイナスイオンコスモシートや、パワフル源泉バンドなどがこのカテゴリーに入ります。
 そこで今月号は、これらの話の学問的根拠をしっかりおさえておきたいと考えて、この方面の研究者ではパイオニアのお一人である村上信行先生にお話をお聞きしました。

「微量放射線 ホルミシス」とは

仙石 今日は学問的にみて、微量放射線ホルミシスはなぜ良いのかという話をお願いします。
村上 「微量放射線ホルミシス」という言葉は、アメリカのミズーリ大学の教授であった生化学者のトーマス・D・ラッキー博士がつくった新しい言葉で、米国保健物理学会誌1982年12月号で発表した論文で初めて使われました。
 「ホルミ」というのはギリシャ語で「刺激」という意味を表す言葉で、ホルモンと同じ語源です。ラッキー博士は、生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に刺激作用を示す場合があり、この生理的刺激作用を「ホルミシス」という言葉で表したのです。
 博士のこの論文は、微量な放射線の作用は、生体に対していろいろ劇的で有効な働きをするというさまざまな文献を集めてまとめたもので、博士は論文の中で、「微量の放射線は、それを当てられた動物の免疫機能向上などをもたらし、身体のさまざまな機能を活性化して、病気を治したり、病気にかからない強い身体にしたり、老化を抑え、若々しさを保つなど、あらゆる良いことをする」といっています(図)。
 この論文は、従来の「少しの放射線でも有害である」とする社会通念や、放射線から人を防護する既成概念とは全く異なる、非常に画期的なものでした。

従来の仮説を覆す ホルミシスという概念

村上 微量放射線ホルミシスの効果は、細菌など微生物に対する生物学的なデータはたくさんありますし、最近ではマウスを使った動物実験も結構されるようになってはきました。しかし、データとしてはまだ少なく、医療的応用、健康に関する応用は始まったばかりのところです。
 まだまだ微量放射線ホルミシスという考え方を知らない方が多いですし、ことに被爆国の日本では、行政をはじめ社会的な環境が、放射線に対する心理的抵抗を強く持っています。
 医学の分野でも多くの人々が放射線には潜在的に抵抗を持っていますし、私もその一人でした。その抵抗を解消するのはなかなか困難なのです。
 それは、放射線の「直線仮説(リニア仮説)」という考え方が幅をきかせ、放射線は微量でも悪い働きをするという誤った認識がいまだにあるからです。
 1950年代に国際放射線防護委員会が設立され、高レベルの放射線を動物に与えると、遺伝子の傷害が起きて、発がんなどいろんな問題になるという見解がまとまりました。そして、微量レベルの放射線の影響は研究されることなく、放射線は比例的、直線的に害作用が大きくなるという推定をしたのが、直線(リニア)仮説です。つまり、その直線を照射線量までのばして、生体に対してネガティブな影響を与えるだろうと推定したわけです。一定の閾値以内なら、全く違う作用をするとは考えなかったのですね。
 こういう間違った学説がいまだにまかり通っているのですが、それを覆したのが、ラッキー博士でした。

日本での研究の始まり
服部禎男先生と稲恭宏先生

村上 日本では電力中央研究所(関西電力、東北電力、東京電力などが出資設立した電力に関する基礎的な研究所)に服部禎男先生という方がおられましたが、服部先生も1987年頃までは国際放射線防護委員会の考え方に沿って放射線は危険なものというお考えでした。しかし、ラッキー博士と情報交換しているうちに、微量放射線ホルミシスの考え方に賛同されるようになりました。
 そこに若くて優秀な稲先生が入られて、服部禎男先生のもとで、放射線の医学への応用の研究を始めたのです。
 稲先生は東京大学医学部を卒業後、東大医科学研究所で研究医をされていたのですが、そこで毒性の強い抗ガン剤の研究に疑問を持たれるようになった時に、電力中央研究所から話があって、今では稲先生は微量放射線ホルミシスの応用研究で世界的に注目されています。

一般医師の意識

村上 私見ですが、医者というのは、大体90%以上は、いわゆる医学の教科書に則った物の見方、価値観、あるいは治療法に縛られていますから、それを越えて、違う次元で、人間の病気とか、健康とか治療とか考えてみようという人は非常に少ないのです。
 ことに、大学病院や大規模病院に勤務している医師は、その枠でしか物を見られないように教育訓練されているので、思い切って、食事療法とか、あるいはサプリメントを使った療法などを試みようなどすれば、周りから白い目で見られ、異端視されますので、関心の持ちようもないという状況におかれています。
 ですから、代替医療などに関心を持つ医者の多くは、開業医ということになります。自ら経営している開業医ですと、患者さんにいろんな薬をやっても治らないときは、患者さんの立場になって親身になっていろいろ試み、そうするうちに、自ら医学の常識を壊していくわけです。
 私も、患者さんからこういう方法で治ったといわれても、最初は耳を傾けませんでした。例えば、ビタミンなどの栄養療法なども初めはバカにしてましたけど、12〜13年前に分子整合医学を勉強して、目からうろこの思いで、もう一度、生化学の勉強からやり直したんです。
 自分で開業している医者でなければ、しかも、今までの自分の常識を壊すという勇気がないと、そういうことに関心を持てないんですね。
 ですから、稲先生のように微量放射線ホルミシスに関心を持って正しく評価できる医師は非常に少ないのです。

稲先生の画期的な実験

村上 稲先生が行った研究は、マウスを使ったいくつもの実験があります。
 それは、たった40日間で自己免疫疾患やあらゆる病気を併発して確実に死んでしまうという突然変異でできたモデルマウスに、放射線を当ててみたところ、なんと1年たっても死なない。毛並みはいいし、つやつやで、ころころ太ってて、これはなんだという話になったわけです。
 稲先生はその研究をオーストラリアで開かれた世界的規模の学会に単身乗り込んで、展示パネルの前で、聞きにきた研究者達に説明し、その場で注目を浴びたのです。
 これを機に、ラッキー博士をはじめ世界的に有名な放射線学者が彼に注目し、日本に戻ってきてからはリアルタイムでラッキー博士や世界中の放射線物理学者とメールでやり取りし、そのやり取りの中で、日本でも微量放射線ホルミシスに関する講演会を、稲先生やラッキー博士を中心に開こうという話になったのが一昨年です。東京品川のプリンスホテルで盛大に行われ、日本でもそれを機会に関心を持つ方が増えてきたのです。

ラジウム鉱泉・ ラジウム鉱石 によるラドン浴

村上 このように、微量放射線ホルミシス効果は、世界的にも日本でも評価されるようになってきまして、もはや否定のしようがないのです。ただ、今まではマウスでの実績が多く、それを人間に与えてみてどうなのかという実績が事例としてはまだ少ないのですね。
 しかし、世界的に見てもイタリアのイスキア、ドイツのバーデン・バーデン、オーストリアのバートガスタイン、アメリカのボウルダーなどのラドン温泉やラドン洞窟に、難病を癒したいと願っている人が集まっています。
 日本でも、秋田県の玉川温泉をはじめ、北海道の二股温泉、山梨県の増富温泉、岡山県の三朝温泉をはじめ、微量放射線ホルミシスのラジウム温泉は大人気です。ことに近年は、玉川温泉のラジウム鉱石である北投石などを使った治療家が出てきたり、また、似たような効果を期待して岩盤浴というのも全国的にずいぶん人気が出てきました。
 これらの温泉が昔から今に至るまで人気があるのは結局、人々が体験的に知っていた微量放射線ホルミシス効果によるものなのですね。
 オーストリアにはバートガスタインという非常に有名なラジウム鉱洞があります。もともと銀の鉱山だったのですが、掘っている人達がやたら元気になる。測ってみたところ、銀だけではなくラジウム鉱石もたくさんあり、そこから放射線が出ているということがわかりました。
 鉱泉も湧いているということで
治療施設がつくられ、1952年から試験的に坑道療法が始められ翌年になって実用化されるようになり、今では大温泉保養地としてホテル並みの病院が建っています。坑道療法では患者はトロッコに乗って坑道に下り、30分〜1時間くらい坑道にいると非常に体調が良くなるというもので、2日に1回とか3日に1回とか医者が判定して入れます。その治療法がとても良い効果を上げるので、日本でも我々の知り合いがバートガスタインに患者さんを連れて行ったりしているうちに、そのラジウム鉱石を日本に持ってきて、療法が行われるようになりまし
た。
 こうした流れの中で、ここ5〜6年、少数ながらホルミシスに関心を持ち始め、研究を始めた企業も出てきました。遠赤外線ブームは20年くらい前から、またマイナスイオンブームも10年くらい前をピークにあり、次に差別化できるものとして、微量放射線ホルミシスの効果を付加価値としてつける、いろいろな実験研究を重ねて商品化に漕ぎついたわけです。
 部屋に置いたり、湯船にも入れられる形態になって商品化されましたから、一般の方も手に入れることもできます。お風呂に入れておけば自家用ラジウム温泉になるわけですね。

安全の範囲と 放射線量率

村上 実績のないものに対しては、医学界の多数派は叩く方向にいくのではないかと思います。自分の知らないことは否定する医者が多いからです。
 しかし、劇的に快方に向かったという実例がどんどん出てくると否定のしようがありません。そうすると、代替医学とか、統合医学ということに関心がある医師の中に、微量放射線ホルミシス療法に対しても、好意的な関心を抱いてくる人達が出てくると思います。
 その時に初めて本格的に、具体的にはどのくらいの強さの鉱石で何グラムくらいのものを、どのくらいの時間使えば良いか、あるいは放射線量率がこのくらいであればこのくらい効くとかいう評価の研究がおそらく始まるのではないかと思います。
仙石 安全な範囲内の放射線を決めようという時、放射線量率という考え方が大事だと稲先生はおっしゃっていますね。
村上 放射線の測定をする時は、シーベルトパーアワーという単位を使います。シーベルトパーアワーとは1時間内に何シーベルトの放射線が貫通するかを指します。
 例えば、1年間かけて被曝している量を、1分とか1秒とかで当てたらそれは危ないわけです。逆にいうと、1年間で自然に浴びている放射線の量を、1年間かけて被曝させるのは問題にならないわけです。そういう意味で、時間単位の放射線量率を考えた表現の仕方が正しいと思います。
 稲先生は、マウスの実験では自然界の1万倍くらいの線量率なら全く平気で、1番効果が続くとしています。そして、人間に対してはそんなに高単位でなくても、十分な臨床効果があると話されています。自然界から受ける放射線の30倍とか、40倍でも十分だそうです。
仙石 村上先生は千葉県の松戸で開業しておられるんですね。
村上 はい。心療内科ですが、微量放射線ホルミシスの他に、アロマテラピーとか、ヨガとか、いろんなものを取り入れています。
 実際に今、私が治療で用いている放射線量は自然界の大体5〜6倍、強くて10倍くらいです。放射線を出す鉱石の上や、線量率の低いマットの上に患者さんに寝てもらいますが、線量率が高いと30分くらいでふらふらになって効き過ぎる感じの人もいるし、全く大丈夫という人もいます。
 一方で、少ない線量でも生理的な反応を起こす人もいます。睡眠が深くなったという方が多いですね。
仙石 放射線をどのくらいまでなら浴びても大丈夫かというのは、普通の人で1年間1ミリシーベルト、それから放射線の産業に従事している人が5ミリシーベルトとかいわれていますね。
村上 原子力基本法にそう書かれていますが、医学的根拠は全くない話です。三朝温泉なんて自然界の800倍ありますし、バートガスタインなんて3000倍です。
 もし、医学的根拠があるなら、三朝温泉も立入禁止にしなくてはいけないという話になります。行政は確たる根拠がないので縛れないのです。行政が私達のところにどうしたら良いですかと聞きに来る始末です。
 とにかく、微量放射線ホルミシスを科学的に考えなくてはいけない時期がきていると思います。

放射線と遺伝子

仙石 従来の常識では、強い放射線は遺伝子を傷つけるといいますが、ラッキー博士の発表では、微量な放射線は傷ついた遺伝子を修復するといっているように聞こえますが、どうなんでしょうか。
村上 博士は、傷ついた遺伝子の修復能力が高まる≠ニいういい方をしています。
 一定以上強い放射線を浴びると遺伝子は確かに傷つけられますが、遺伝子を修復する遺伝子がありまして、それが活性化するのです。それが微量放射線ホルミシス効果の一つです。
 放射線は宇宙からも地面からもきますから、我々は常時被曝しています。
 地面からくるものでは場所によっては線量が高い地域もあるわけです。周辺地域に比べて、数倍もの自然放射線を浴びている地域が世界にいくつもありますけれど、そこでは実際にがんの発病率が高いかというと、逆なんです。
仙石 台湾で、マンションの鉄筋に原子力施設の廃鉄材を使ってしまって、住民が自然放射線の数倍の放射線を浴び続けているというニュースが流れたことがありましたね。しかし、実際にはそのマンションではがんになる人が断然少ないんだそうですね。
村上 そうです。疫学調査では、がんの発生率がとても少ないという結果が出ていますね。
 逆に、放射線を完全に遮断したらヒトや生物はどうなるかという研究もされています。自然界の放射線を鉛板の囲みなどで遮断したら、中で暮らしている動物の寿命がものすごく縮み、いろんな病気が発生します。
 これは稲先生も研究されていて、動物実験で放射線を完全に遮断したら、もうぼろぼろになって死んでいくそうです。

微量放射線ホルミシスの 還元力

村上 私のところには血中のフリーラジカルによる障害程度と、フリーラジカルを抑える力、還元力を測定する機械があります。
 それで調べると、フリーラジカル消去能力、抗酸化力が上がった、あるいは生体のフリーラジカルによる障害の量が減ったということがわかります。
 マイナスイオンとか微量放射線ホルミシスというのは、実際にこういう効果があるから、そういう理屈やデータがなかった昔から経験的に体の調子が良くなるということで根強い人気があるのですね。

微量放射線グッズの使用と 注意書きの根拠

仙石 足首や手首、首などに微量放射線ホルミシスのバンドやブレスレット、ネックレスをつけるとか、ベストを着るというのは、あれもこれもつけて強過ぎるということはないですか。
村上 それは全然問題ないです。
 さっきの稲先生の話を思い出してください。放射線量率からいえば、いくつ身にまとっても全く心配にならないレベルです。
 ただ、人によって感受性が違うので、ご自分の体の調子で判断してください。
仙石 微量放射線ホルミシス製品の注意書きに、心臓に不安のある方、それから目に不安のある方は短時間から使用してくださいとありますが、あれは何故ですか。
村上 はっきりとした明確な根拠はないと思います。
 ただ、冷え症も良くなるほど末梢血行が良くなる効果があるので、心臓疾患とか、なんらかの重大な疾患を持った人が使った場合、血行が促進されることで起こる反応が出た場合、責任を感じるということがあると思います。つまり、リスキーな疾患を持っている人は慎重に扱うという意図があるのではないかと思います。心臓疾患があるからやってはいけないわけではないのです。
 非常に敏感に反応する人が中にはいますので、心疾患とか、脳血管疾患とか命に直接関わるような病気を持たれている方については慎重に、例えば最初は1日30分間からスタートして様子を見ながら時間を延長していくのが望ましいと思います。
 目に対しての注意書きについてはよくわかりませんが、眼底出血の不安のある方では、目に当てれば目の血液の循環が良くなりますから、やはり徐々にされるのが望ましいのだと思います。

放射線ホルミシスによる 治療にあたって

仙石 微量放射線ホルミシスによる治療への応用では、こういう病気には特にいいという適応症というのはありますか。
村上 非常にレンジが広いと思います。しかし基本的には予防的に使うべきだと思います。
 現代はいろんな環境汚染、食物汚染とか、水の汚染や大気の汚染などで、がんになる人が凄い勢いで増えていますね。ですから、微量放射線ホルミシスのグッズとか、良質なサプリメントを、意図的に自らとって、体内のフリーラジカルを消去し、健康になる工夫をしていかないと駄目なのが今の時代だと思います。
 自然食、玄米菜食は良いかも知れないけど、今はそれだけでは追いつかない時代だと私は認識しています。
 私の役目は、私がたまたま微量放射線ホルミシスをいち早く知ってしまって、研究もしている、そういう先に知ってしまった者の責任というのがあると思います。
 本当にいいものだと知っているのに、それを知らない顔して、人にすすめないのは、救われる者も救われないことになりかねない。そういう責任というのも感じていますので、微量放射線ホルミシスの研究に対する、引き金とまではいかないにしても、何か取っかかりになるようなことで、皆さんのお役に立てればと思っています。