死因のトップは血栓症!!

赤ミミズ「ルンブルクス・ルベルス」の酵素が血栓を溶かす

宮崎医科大学名誉教授 美原恒先生

心筋梗塞と脳梗塞を併せると、死因のトップは血栓症

 脳卒中には、脳出血と脳梗塞の2つのタイプがあります。
 医師になって間もない頃から、脳卒中の患者さんがあるとすぐに駆けつけ、血液を採って調べるという実証的研究をされてこられた宮崎医科大学名誉教授の美原恒先生は、ご自身が若い頃には脳卒中は脳出血の方が多かったのが、「医学の進歩で高血圧のコントロールがうまくいくようになって脳出血は減り、今は脳梗塞で倒れる患者さんが約7割を占める」とおっしゃっています。
 日本人の死亡原因は、第1位ががん、第2位が心筋梗塞、第3位が脳卒中であるのはよく知られていますが、第2位の心筋梗塞と第3位の脳卒中は、大事な血管の中に血栓が出来てしまい、血の流れが止まって、その先に酸素と栄養がいかなくなる結果、生命も落としかねない、重大な疾患です。
 その意味で、心筋梗塞と脳梗塞は血栓が引き金となる「血栓症」による共通のトラブルであり、そうであれば日本人の死因のトップは血栓症ということになります。
 この血栓症多発という難問に長年取り組んでこられた美原先生は、ミミズのある成分がたんぱく質をよく分解するという性質に注目され、ミミズ中に血栓を強力に溶かす酵素「ルンブロキナーゼ」を発見。血栓症は"凍結乾燥したミミズの粉末カプセルの常食”が解決の決め手になることを実証されました。これは実に大いなる業績ではないでしょうか。
 美原先生に、血栓症とミミズの凍結乾燥粉末の働きについてお話を伺いました。

血栓と血栓症
血栓が出来る仕組みと、溶かす仕組み(線溶系)。

──まず、血栓とは何か、また、血栓はどのようにして出来るかというところからお教えください。
美原 血栓とは血管内に出来る血の塊で、本来は血管が傷ついて出血した時に血を止める(止血)ために体の中で出来るものです。
 血栓が出来る仕組みはまず、血管が破れて出血が起こると、そこに血小板が集まって互いに張り付いて(血小板凝集)、血小板血栓が出来、とりあえず止血します(図1|・)。しかし、これだけでは止血は不十分で、続いてその場所では血液が固まる(凝固)過程が進み、その結果作られた「フィブリン」という線維素がさらに局所を止血し(図1|・)、最終的にはフィブリンを足場にして血管壁の細胞が分裂増殖して破れた血管の修復が行われ、止血が完了します(図1|・)。
 しかし、このままではフィブリンの塊によって、血液の流れは阻害される状態が続いてしまいます。そこで生体には、そのフィブリンの塊を溶かしてしまう「線溶系」というシステムが存在し、この線溶系が活性化すると、フィブリンの塊が溶かされ(図1|・)、血液が再びスムーズに流れるわけです(図1|・)。
 この線溶を活性化する仕組みは図2で示すように、血液の中にあるプラスミノーゲンという前駆物質が、血管内皮細胞などの組織から放出されるプラスミノーゲン活性物質‖プラスミノーゲン・アクチベーター(PA)によって、活性酵素のプラスミンに変換されると、出血箇所で固まっているフィブリンを分解して溶かしてくれるわけです。なお、PAには血管内皮細胞から出てくるt−PAと、尿の中から見つかったウロキナーゼ(u−PA)の2種類あります。また、フィブリンが分解されて血液中に流れていく物質をFDP(フィブリン分解産物
)と呼んでいます(図2)。
 線溶活性はフィブリンがすでに固まっている場所でのみ働き、まだ血栓が出来ていないうちは、血液の中にとけ込んでいるプラスミンやPAに対する阻害物質(α2|PI、PAII〜・。図2)が働いているので、線溶活性は働きません。ですから、血液中のこの阻害物質が足りなかったり、逆に線溶活性が異常に高まると、出血しやすい傾向になります。

血栓症とは

美原 問題なのは、血管が破れた時に血小板が働いて血液を凝固させ出血を止めてくれる仕組みが、何らかの事情で血管の内皮細胞が損傷した時にも、全く同様の過程が進んでしまい、血栓症が引き起こされることです。
 最近よくいわれる「死を招く4重奏」とは肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病の4つが同時に起きている状況ですが、そこまで行かなくても、食生活の欧米化が進んだり、食べ過ぎていると、まず、血液中の中性脂肪やコレステロールの値が高くなります。
 そのコレステロールが血液の中で酸化されると、血管の内皮細胞の細胞膜を酸化傷害することがあり、そこから、血管の中にもぐり込んだ白血球の一つであるマクロファージ(大食細胞)が酸化コレステロールを食べ続けると、血管壁が肥厚して血管が狭まる──という過程を辿ることが多いのです(図3|・〜・)。
 このように、血管が破れたわけではないのに、血管の内皮細胞が酸化障害などによって傷ついたりすると、血小板を含む凝固系は、止血の時と全く同様に働いてしまい、血栓が出来てしまいます(図3|・・図4)。
 そうなると、次第に血液を通す内腔が狭まり、狭いところを無理して血液を流そうとするので血圧は当然上がります。
 これが、「アテローム性(粥状)動脈硬化」で、これが心臓の筋肉に栄養と酸素を送る冠状動脈、あるいは脳の血管に起これば命取りにもなるわけです。
──食生活の欧米化がこれだけ普及した今、動脈硬化も当然多くなっているわけですね。
美原 そうです。
 今は50歳を過ぎると3人に1人は動脈硬化となる時代で、動脈硬化が元で亡くなる人は日本だけでも約1分間に1人といわれております。
──動脈硬化のところに出来た血栓が血液の流れに乗って流れていき、血管が細くなったところで詰まってしまうということもあるのでしょうね。
美原 当然、そういうことも起こります。
 心房細動などがある人は、心臓の中で血塊が出来、それが心臓から流れ出て次の瞬間、脳で詰まるということがあります。これを脳塞栓といいます。
 また、脳では「ラクナ梗塞」といいまして、脳の深いところの細い動脈が血栓で詰まってしまうことがあります。特に日本人には多く、日本人の脳梗塞の8割以上がラクナ梗塞といわれています。
──最近は「エコノミークラス症候群」といって、海外旅行などで飛行機で長時間座り続けると、足のふくらはぎのところで巨大というかすごく長い血栓が出来てしまい、目的地に到着して歩き出した途端、この血栓が流れ始め、心臓を通過して肺に流れ込んで肺塞栓を起こし、最悪の場合死ぬこともあるというので問題になっていますね。
美原 この血栓は静脈血栓といいまして、血栓は動脈だけでなく静脈でも出来るのです。飛行機に乗った時だけでなく、何らかの事情であまり運動が出来ない時にも起こります。こういう場合は、予めミミズの凍結乾燥粉末を水と一緒に飲んでおくと良いでしょう。さらに、こうした状態が長時間に及ぶ時は途中で追加してとるのが望ましいですね。
 血栓はこの他、微小循環系といいまして、内臓の中の血管網にも出来ることがあります。そうすると、その内臓の働きが悪くなったり、あるいはホルモン器官で出来るとホルモンの出方が少なくなってしまうなど、それが原因でいろいろな病気が起きるということがあります。脳の中で血栓が出来れば、ボケがくるわけです。
 しかし、血栓が出来る状況になったとしても、血中の線溶活性が強ければ、血栓は出来るそばから溶かしていけるのです。
 ですから、食事の後などにミミズの凍結乾燥粉末を食べる習慣をつけると、血液が流れている全てのところで血栓が出来にくくなりますし、すでに出来ている血栓も出来たての新しいものだけでなく、古いものも徐々に溶けていくことが期待出来るわけです。

ミミズ凍結乾燥粉末の強力な、血栓溶解作用
画期的なミミズの研究

──そのミミズの凍結乾燥粉末ですが、先生が血栓症の予防と改善にミミズに注目されたのはどういうことからですか。
美原 日本では1970年代より、脳梗塞や心筋梗塞で倒れた時の薬として、尿から得られるウロキナーゼ(u|PA)が線溶活性物質として用いられてきました。
 しかし、ウロキナーゼは価格が非常に高く、血栓溶解が十分に可能な程用いることが困難でした。また、もう一つのt|PAも、遺伝子操作で合成が出来るようになって、薬として使われるようになりましたが依然、価格は高いのです。
 しかも、これらの血栓溶解剤はいずれも静脈注射による投与が必要な上に、血液中でのフィブリン分解はなかなか難しいこともあり、大きい血栓を溶かそうとすると、かなり大量のPAが必要になります。ところが、大量に使用すると出血傾向が出てくる危険性も出てくるのです。
 そこで、何とか、安価で、また口から摂取するという簡単かつ安全な方法で、血栓を予防・改善出来ないものかと研究している中で注目したのが、ミミズです。
 ミミズのある成分がたんぱく質の分解に優れているところから、血栓もたんぱく質で出来るので、そこから、ミミズで血栓を溶かす私の研究が開始されました。

ミミズに見つかった新たな線溶活性物質「ルンブロキナーゼ」

美原 実験に用いたミミズは、欧米に棲息するルンブルクス・ルベルスという種類です。
 このミミズをまずぶつ切りにして、フィブリンの平板の上に置いて線溶活性を測定したところ、この写真のように明らかに線溶活性があることがわかりました。体腔液や消化管には線溶活性があり、皮には線溶活性阻害物質が存在することもわかりました。
 そこで、皮の部分を出来るだけ外し、かつ、線溶活性阻害物質が働けなくなるような工夫をして、さらに、ミミズをきれいにして糞土を十分に排出させてから、凍結乾燥し、さまざまな実験を試みました。
 その結果、ミミズの凍結乾燥粉末は、血栓を溶かす力が非常に強いことがわかりました。そして、この働きは酵素によるものであることもわかりました。
 この酵素の分子量は2万〜3万と計算されたところから、このミミズの酵素の正体は、現在、線溶活性が知られているいずれの線溶酵素(セリンプロテアーゼ)とも異なる、新しいタイプの線溶酵素であることがわかりました。
 さらに、この酵素のアミノ酸組成を調べてみると、アスパラギンやアスパラギン酸をたくさん含んでいました。これが、この酵素が酸やアルカリに強く、熱にも安定な理由だと考えられます。逆に、プロリンやリジンは非常に少なく、こうしたことからも、ミミズの線溶酵素は今まで知られていた他の線溶系酵素とは全く違う特徴を持っていることもわかりました。
 そこで私は、このルンブルクス・ルベルスから抽出された非プラスミン系の線溶酵素を、新たに「ルンブロキナーゼ」と命名したのです。

ウロキナーゼよりも強い血栓溶解力
──凍結乾燥粉末の犬と人での実験研究──

美原 今まで述べてきたように、ミミズの凍結乾燥粉末が、線溶酵素を持っていることを確認した上で、次にこれが血栓症を解決する素材として利用可能かどうかを検討してみました。
 まず、血小板を凝集することがあるのかどうか調べてみました。すると、血小板を凝集促進することはなく、逆に凝集を抑制することがわかりました。
 このようにいろいろ実験してみた結果、ミミズの凍結乾燥粉末には線溶活性の他にも、血小板凝集抑制、さらに血管収縮抑制作用と、いずれも血栓症解決に効果的な働きを持っていることが明らかになりました。
 そこで次に、このミミズの凍結乾燥粉末を、口からとってみる実験を考えました。
〈犬に食べさせてみたら…〉
 まず、動物実験として9匹のビーグル犬を3群に分け、静脈に実験的に血栓を作らせ、
・群の3匹にはミミズの凍結乾燥粉末1gを5m・の生理的食塩水に溶かして口からとらせ、
・群の3匹にはウロキナーゼ20万単位(現在医師が通常使うのは5万単位程度)を5m・の生理的食塩水に溶かし静脈注射で入れ、
・群は対照として5m・の生理的食塩水のみを静脈に注射して、時間を追ってレントゲンで血管造影し調べてみました(写真)。
 その結果、表に示すように、ミミズを与えた・群は明らかに、ウロキナーゼを与えた・群よりも血栓溶解の程度が高く、ミミズを食べさせることにより血栓溶解が起こることがわかりました。
〈人が食べてみたら…〉
 そこで今度はいよいよ人間での実験、つまり、人間にミミズの凍結乾燥粉末を与えてみようというわけです。
 その前にまず、安全性を確認するために、私を含めて関係者の間で、カプセルに詰めたミミズの凍結乾燥粉末を3年間、毎日300〜450mg程度とってみました。その結果、特に副作用らしい症状も出ず、安全であろうと思われました。
 そこで、28〜39歳の研究員6人と、私自身が食べて、血栓が溶けるかどうかを確かめることにしました。
 実験は、ミミズ凍結乾燥粉末を200mg入れたカプセルを毎日、食後に1カプセルを1日3回、17日間食べ、食べ始める前と、食べ始めた後1日、2日、4日、8日、11日、17日目に採血し、血液線溶活性の変動を見ました。
 その結果、すでに3年にわたって食べ続けていた私自身の測定結果を除いて他の6人は図5のごとく、食べ始めた後1〜2日目までは溶解時間が短縮、4日目には食べ始める前の値に戻り、その後次第に溶解時間が短くなっていき、17日目にはかなり線溶活性が高まったことが観察されました。
 この結果から、ミミズの凍結乾燥粉末を人に食べさせた場合、安全である上に、食べた人の血液中の線溶活性が上昇することは事実であることが認められました。
 さらに、ミミズの凍結乾燥粉末を口からとった後のt−PA量を測定したところ、図6のごとく、食べた後は明らかにt−PAが上昇し、しかも、その上昇は実験最後の日まで続きました。この結果はミミズの凍結乾燥粉末を食べたことによって、体の中でt−PAが遊離されたことを示しているものと考えられます。
 これは、大変重要な意味を持っています。
 なぜならば、今まで血栓症の治療は、ウロキナーゼあるいはt−PAなどの線溶活性物質の注射が主な治療法だったわけですが、実際に脳血栓症の発作を起こした時点で血中線溶活性が低くなっている人でも、その人が亡くなった後で解剖し血管壁を切り取り、t|PAを抽出してみると十分あるケースが多いのです。
 ということは、血栓症が起こる原因として、t−PAはあっても、それがうまく放出されていないことが考えられるわけです。
 したがって、血管壁などから、PAを出させる解決法こそが最も効果的な血栓溶解法であると考えられるわけです。
 今までは、自分が本来持っているPAを十分放出させるような治療法というのはありませんでした。ところが、このミミズの凍結乾燥粉末を食べることによって、線溶活性は著しく良くなり、その上、t−PAも十分放出されるわけです。
 この実験を通じて最も興味深い結果は、図7のごとく、凍結乾燥粉末のミミズを食べた後のFDP(フィブリン分解産物)の変化でした。食べる前に比較して、24時間後のどの例においてもFDPの急激な上昇が見られ、翌日からFDPは減少し始め、17日目にはほとんど食べ始める前の値に戻りました。
 この事実は、ミミズの凍結乾燥粉末を食べることによって、線溶活性の亢進とともに線溶が実際に起こり、その分解産物であるFDPが血液の中に溶け出してきたということを意味しているのです。
 この実験で、1人だけ時々偏頭痛があると言っていましたが、あとの5人は全く健康でした。
 しかし、ミミズの凍結乾燥粉末の摂取でフィブリン分解産物が血液の中に増えたということは、全く健康に見えたとしても、循環系のどこかにフィブリンが存在していたことが考えられます。
 その後、どの年齢でこのFDPの上昇が起こるかを調べてみたところ、20歳前後の健康な人ではFDPの上昇は見られませんでした。「25歳を過ぎると、血管の老化が始まる」と昔からいわれていますが、実際、この頃から循環系の中ではフィブリンの沈着が、その人なりに始まるのではないかと思われました。
 さらに面白いデータは、図8に示した私自身の結果です。
 本来なら、実験参加者の中で最も高齢でもあり、循環系に存在するフィブリン塊は1番多いはずなのに、他の若い研究員たちとの結果とは異なり、実験開始後、FDPの上昇はほとんど見られませんでした。
 この結果は、私自身が実験開始の3年前から、ミミズの凍結乾燥粉末を服用していたことで、すでにt−PAが十分あり、線溶活性も高く、循環系のフィブリンがほとんど除去されていたと考えざるをえなかったのです。

微小循環系の改善
──糖尿病・肝臓ホルモン器官への好影響──

美原 以上、人での実験結果から、ミミズの凍結乾燥粉末を相当期間食べ続けることにより、血栓症の悩みは、予防も含めて、解決可能と確信するようになったのです。
 その中で、興味あるいくつかのエピソードがあります。
 この実験結果が韓国でも興味がもたれ、韓国との共同研究が始まり、その過程で、糖尿病の人にミミズ凍結乾燥粉末を食べさせると血糖値が下がる傾向にあると聞きました。
 この話をある席で披露したところ、同席していた医学部のある教授から、「私も糖尿病で食事制限をしているので、先生のミミズのカプセルをいただけませんか」と要望されました。
 私自身は糖尿病に関しては専門でなく半信半疑でしたが、これまでの経験から特に副作用もなく、相手が医師でもあることから、ミミズのカプセルをお渡ししたところ、半年くらいして「お蔭で食事制限は厳しくしなくても大丈夫になりました」とお礼に見えられました。
 その後、知り合いが軽い糖尿病があるというので食べさせてみたところ、しばらくしてから知人は、主治医から「血糖値が下がってきたけれど、何か特別なことをしているのですか」と聞かれ、ミミズのカプセルの話をしたところ、その主治医も糖尿病なので是非それを食べたいと申し出てきたということもありました。
 こうしたミミズによる糖尿病の効果については今後の研究が待たれますが、現在私が可能性として考えているのは、2型の成人型糖尿病では、膵臓の微小循環系にフィブリンの沈着が起き、その微小循環障害により、インスリンをつくる場が障害されていたところ、ミミズの摂取で線溶が活性されたことで微小循環の障害が改善され、それでインスリンの産生が復活したためではないかと考えています。
 このミミズの摂取による、内分泌臓器の微小循環の改善を思わせるもう一つのエピソードとして、55歳を少し過ぎた私の姉に与えて食べさせたところ、しばらくして「あれはホルモンか」という問い合わせがありました。
 聞いてみると、数年前に閉経していたのが、ミミズを食べ出してから、また月経があるようになったとのことでした。
 これについても私は、年齢とともにホルモン分泌が低下する原因として内分泌臓器の微小循環障害は十分に考えられることであり、ミミズの摂取でそれらが改善されたのではないかと考えています。
 この他にも、他の治療法では全く効果がなかった肝機能障害が、ミミズの投与で改善したという例もありました。

"医食・薬食同源” 健康長寿は食生活から

美原 これまで述べてきたように、我々のミミズの研究は、口からとって、全身の血栓の溶解がされるという素材の開発というところまでに至りました。
 近代的医療といわれる治療法が行われるようになって、まだ100年にもなりません。欧米で高度に発達していたと考えられる外科療法ですら、虫垂炎の手術が確立したのは今世紀になってからです。しかし、癒しというのは、おそらく人類始まって以来、行われているものであり、多くの人たちの経験を積み重ね、それを伝承しながら組み立てられてきたと考えられます。
 中国の有名な古典医学書には、現在では失われてしまったある書物に「ミミズが中風に良い」と書かれていると記載されています。
 現在の知識で考えると、中風はおそらく、脳血管障害を意味していると考えられ、その半数は脳血栓症であったでしょうから、中風に対してミミズが効果があったというのは、我々の研究からも十分納得出来ます。
 中国には「医食同源」とか、「薬食同源」という言葉があり、日常の食生活の中で、健康や長寿に必要なものをとることがすすめられています。
 我々の教室でも、ミミズだけではなく、線溶活性を起こす他の食品についての研究もしており、例えば、焼酎を適量飲むと血中のu−PAが増加することや、また、納豆からは線溶活性を持つナットウキナーゼを抽出し報告しています。
 その中でもミミズは、線溶活性の強さ、またその特性を発揮するスピードからいって、抜群のパワーがあるのは確かなことです。
 今後も、日本人の死因1位となっている血栓症を克服する上で、いろいろの食品について研究を続け、食品でこれを予防・改善出来る発見が出来ればと期待しています。